バイオマス発電は、動植物から得られる有機性資源を燃料として電力を生み出す火力発電の一種です。発電方式は大きく3つの種類に分類されます。
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直接燃焼方式は、木質チップや廃材などの燃料を直接ボイラーで燃やし、発生した高温高圧の蒸気でタービンを回転させる最もシンプルな仕組みです。単純な構造で導入しやすい反面、ボイラー内を高温に維持しにくいという難点があります。
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熱分解ガス化方式では、バイオマス燃料を高温で加熱処理してガス化し、生成された可燃性ガスでタービンを回す方式です。木炭製造プロセスと似た原理を持ち、効率的な発電が可能です。
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生物化学的ガス化方式は、家畜の排泄物や生ごみなどを微生物の働きで発酵させ、メタンガスを発生させて発電する方式です。メタンガスを主体に使用するのが特徴で、廃棄物の有効活用につながります。
木質バイオマス燃料は、薪、木質チップ、木質ペレットの3種類が主流で、燃料製造コストはこの順に高くなります。これらは林業や製材工場、建設現場から発生する間伐材や廃材が原料となっています。
参考)木質バイオマス燃料について
木質チップは最も一般的な燃料で、国内の間伐材や未利用材だけでなく、海外から輸入される木質ペレットやパーム核殻も大量に使用されています。2023年度には木質ペレット581万トン、パーム核殻587万トンが輸入されました。
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廃棄物系バイオマスとして、建設廃材、生ごみ、家畜排泄物、パルプの搾りかすなども燃料になります。同じ種類でも形状や水分量が異なるため、品質や成分にばらつきがあることが木質バイオマス燃料の大きな特徴です。
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燃料の収集場所が広範囲に分散しているため、発電所までの運搬や品質管理にコストがかかる点が課題となっています。
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バイオマス発電の最大のメリットは、カーボンニュートラルな発電方式である点です。木材などの植物は成長過程で光合成により大気中のCO2を吸収しており、これを燃焼させても元々吸収していた炭素が大気に戻るだけなので、大気中のCO2濃度に影響を与えません。
参考)カーボンニュートラル
実際に、川崎バイオマス発電所では年間約12万トンのCO2削減を実現しており、カーボンニュートラル達成に大きく貢献しています。パリ協定で定められたCO2排出削減目標に対応できる有効な手段として注目されています。
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天候に左右されず24時間安定した電力供給ができる点も大きな利点です。太陽光発電や風力発電と異なり、燃料さえあれば継続的に発電できるため、ベースロード電源としての役割が期待されています。
廃棄物を燃料として有効活用できるため、ゴミの発生量削減にもつながります。林地残材として放置されていた間伐材が燃料として取引されるようになり、森林資源の有効活用と地域経済の活性化を同時に実現できます。
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バイオマス発電の最大の課題は発電コストの高さです。木質バイオマス発電所の原価構成では燃料費が約7割を占めており、他の再生可能エネルギーと比べて経済的な導入ハードルが高くなっています。
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燃料の収集・運搬・管理に多大なコストがかかる点も問題です。バイオマス資源は小規模で分散して存在するため、効率的に収集する仕組み作りが必要です。木材を燃料とする場合は、木材チップ生成のための追加コストも発生します。
エネルギー変換効率の低さもデメリットの一つです。木質バイオマス発電の発電効率は20~30%程度とされており、風力発電の約30%や水力発電の80%と比べると低い水準にあります。
参考)バイオマス発電の将来性を徹底解説:発電の仕組みから海外事例ま…
国内での原料安定確保にも課題があります。現時点では間伐材や未利用材の量を十分に確保できず、海外から輸入する木質ペレットやパーム核殻に多くを依存している状況です。輸入燃料への依存が続けば、輸送過程での環境負荷や森林破壊のリスクも懸念されます。
日本のバイオマス発電は順調に成長しています。2016年には全発電電力量の1.9%でしたが、2022年には4.6%まで増加し、太陽光・水力に次ぐ第3位の再生可能エネルギー源となりました。2023年度には4.1%を占めています。
参考)日本における発電割合は?再生可能エネルギー発電の現状や今後と…
政府は2030年度のバイオマス発電比率目標を3.7~4.6%程度に設定しており、導入見込み量は602~728万kWです。地熱発電や風力発電が横ばいの状況に対し、バイオマス発電は着実に普及が進んでいます。
参考)バイオマス発電における現状と課題とは
地域活性化の観点からも高い将来性があります。福島県会津若松市では木質バイオマス発電を通じてエネルギーの地産地消を実現し、それまで林野に残置されていた間伐材が燃料として活用されるようになりました。
参考)https://www.jt-tsushin.jp/article/casestudy_biomass-power_case
FIT制度の見直しにより、2026年度以降の新規認定では輸入木質バイオマスが支援対象から外れることが決定しました。これは国内資源の循環利用を促進する動きであり、持続可能なバイオマス発電の実現に向けた重要な政策転換です。既存認定案件は130件660万kWに上り、2030年目標の82%に達しているため、今後は国内資源活用型の小規模分散型発電が中心になると予想されます。
参考)2025年、バイオマス発電が苦境に?FIT制度見直しで輸入燃…
バイオマス発電のコスト課題を解決する鍵は、地産地消型のエネルギーシステム構築にあります。バイオマス資源が豊富な地域に発電所を設置することで、輸送距離を短縮し燃料コストを大幅に削減できます。
参考)バイオマス発電とは?仕組みや課題・日本国内の取り組みを紹介
農業や畜産業が盛んな地域では、家畜の糞尿を燃料とする場合に牛舎近くに発電設備を作ることでコスト削減を図れます。木材を燃料とする場合も、他の木材産業と設備を共有する方法が有効です。
発電で生じた排熱を農業用ハウスの熱源として活用するなど、他のエネルギー利用と併用してトータルでのエネルギー効率を向上させる取り組みも実施されています。温水や蒸気を製造するバイオマス熱利用では、年間800万円相当の重油削減費が見込める事例もあります。
参考)国内における小規模木質バイオマス発電の動向
中部地域の自治体では、専門家支援チームの派遣制度や普及啓発フォーラムの開催により、市町村や事業者のバイオマス発電導入を支援しています。地域の雇用創出と森林資源整備につながる事業として、エネルギー地産地消の先進的取組事例が蓄積されています。
参考)https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/040153.pdf
世界的に見ると、デンマークやオーストリアなど日本より国土が狭い国々でバイオマス発電の割合がはるかに大きく、日本の自然エネルギー比率は先進国最低レベルです。これは逆に、日本にはまだ大きな成長余地があることを示しており、技術革新と政策支援により持続可能なバイオマスエネルギー社会の実現が期待されます。