アーク溶接に関わる資格は、大きく分けて国家資格と民間資格があります。最も基本的な資格は「アーク溶接等の業務に係る特別教育」で、18歳以上であれば誰でも受講可能です。この特別教育を修了することで、法律上アーク溶接作業に従事できるようになります。
参考)【溶接の資格一覧】取り方や費用、難易度を解説 - アーク溶接…
特別教育の上位資格として、「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」があります。これは2024年1月から新設された資格で、金属をアーク溶接する作業などに従事する作業主任者を目指す方向けの講習です。受講料は16,500円(テキスト代・消費税込)で、1日で修了できます。
参考)アーク溶接等作業主任者限定技能講習が新設されました
さらに専門性を高めたい方には、JIS溶接技能者評価試験があります。この試験は基本級と専門級に分かれており、基本級は下向姿勢の溶接、専門級は立向・横向・上向などの難易度の高い姿勢の溶接技術が求められます。合格率は基本級で約80%、専門級は姿勢により異なりますが難易度が高くなります。
参考)【2025年版】溶接資格の種類一覧|難易度・取得方法・費用を…
アーク溶接等の業務に係る特別教育は、学科教育11時間と実技教育10時間の合計21時間のカリキュラムで構成されています。ただし、多くの講習会場では実技教育を4時間に短縮し、残り6時間以上は事業場で実施するよう求められています。
参考)アーク溶接特別教育 href="https://roukiren-oota.org/2022/01/05/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%BA%B6%E6%8E%A5%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%95%99%E8%82%B2/" target="_blank">https://roukiren-oota.org/2022/01/05/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%BA%B6%E6%8E%A5%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%95%99%E8%82%B2/amp;#8211; 一般社団法人 太田労働基…
学科教育の内容は以下の4科目です。アーク溶接等に関する知識(1時間)では、溶接の基本原理や金属の性質について学びます。アーク溶接装置に関する基礎知識(3時間)では、溶接機の構造や電気に関する知識を習得します。アーク溶接等の作業の方法に関する知識(6時間)は最も時間をかける科目で、実際の作業手順や注意点を詳しく学びます。関係法令(1時間)では、労働安全衛生法などの法律知識を学びます。
参考)アーク溶接等特別教育
実技教育では、溶接機の取扱い、基本的な溶接作業、保護具の取扱いなど安全な作業方法を実践的に学びます。アークの発生と維持、ビードの形成、継手溶接などの基本技術を習得し、溶接品質の良否判定と改善方法も学びます。
参考)アーク溶接などの業務に係る特別教育とは?|教育内容・費用・受…
受講費用は実施機関によって異なりますが、テキスト代と消費税込みで10,000円~25,000円が一般的です。会員・非会員で料金が異なる場合もあり、例えば太田労働基準協会では会員13,200円、非会員はそれ以上の料金設定となっています。
参考)https://www.sat-co.info/blog/arcwelding200001/
講習は通常3日間(学科2日、実技1日)で実施され、受講後に確認テストがありますが、遅刻や早退をせず真面目に受講すればほぼ100%合格できます。
参考)【溶接の資格難易度】種類一覧!費用と取り方&難易度別!プロの…
アーク溶接関連の資格は、難易度によって段階的に分かれています。初心者向けから上級者向けまで、自分のレベルに合った資格を選ぶことが重要です。
最も難易度が低いのは「アーク溶接等の業務に係る特別教育」で、難易度は★(5段階評価)です。これは講習修了型の資格で、確認テスト程度しかないため、ほぼ100%の合格率を誇ります。真面目に受講すれば落ちることはないため、溶接未経験者が最初に取得すべき資格といえます。
参考)溶接の資格の種類と取得方法・費用や活かせる仕事も分かりやすく…
「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」も比較的易しく、難易度は★★程度です。1日の講習で修了試験がありますが、講習内容をしっかり理解していれば問題なく合格できます。
参考)金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習
JIS溶接技能者評価試験になると難易度が上がります。基本級は難易度★★で、合格率は約80%です。下向き姿勢限定のため比較的取得しやすいですが、1ヶ月以上の溶接経験が必要です。専門級は難易度★★★となり、特に上向きや全姿勢の試験は難関となります。3ヶ月以上の経験と基本級の取得が必須条件です。
最も難易度が高いのは「溶接管理技術者」で、1級・特別級は難易度★★★★★の最難関資格です。1級の合格率は約24%、特別級は約28%と非常に低く、長期的な計画と十分な実務経験が必要となります。
| 資格名 | 難易度 | 合格率 | 必要経験 |
|---|---|---|---|
| 特別教育 | ★ | ほぼ100% | 不要 |
| 作業主任者限定 | ★★ | 高い | 不要 |
| JIS基本級 | ★★ | 約80% | 1ヶ月以上 |
| JIS専門級 | ★★★ | 姿勢により変動 | 3ヶ月以上+基本級 |
| 溶接管理技術者1級 | ★★★★★ | 約24% | 長期実務経験 |
アーク溶接資格を取得することで、就職・転職が圧倒的に有利になります。建設業や製造業では溶接技術者の需要が高く、資格保有者は優遇される傾向にあります。特に、自動車工場や自動車修理工場、鉄工所、建設業などで活躍の場が広がります。
参考)溶接資格を取るべき理由とその方法
資格手当による収入アップも大きなメリットです。会社によっては資格取得に対して手当が支給され、努力が報酬という形で評価されます。溶接工の年収は経験とスキルによって大きく変動し、未経験者は年収300万円程度からスタートしますが、熟練クラスになると年収750万円~1,000万円以上を稼ぐことも可能です。中には年収1,500万円程度を稼ぐベテラン溶接工もおり、資格や経験の有無が年収に大きく影響します。
参考)アーク溶接作業者になるには?仕事内容ややりがい、平均年収や資…
キャリアアップの道筋としては、まず特別教育を取得して基礎を固め、実務経験を積みながらJIS溶接技能者評価試験の基本級に挑戦します。その後、専門級や溶接管理技術者などの上級資格を取得することで、より高度な作業を任されるようになり、昇給やキャリアアップにつながります。
専門性を高めることで、一般的な溶接作業だけでなく、特殊な材料(ステンレス、アルミニウム)の溶接や、難易度の高い姿勢での溶接作業も可能になります。また、溶接管理技術者の資格を取得すれば、現場管理や品質管理の業務にも携わることができ、さらなるキャリアの幅が広がります。
参考)https://skill.job-con.jp/article/detail/9
独立開業も視野に入れることができます。熟練クラスになると親方として独立できるレベルに達し、自分の技術で事業を立ち上げることも可能です。
参考)溶接工の年収はいくら?1000万円以上稼ぐために必要な資格も…
アーク溶接技術は、鉱石から精製された金属材料を加工・接合する上で欠かせない技術です。鉄鉱石から製鉄された鋼材、銅鉱石から精製された銅、ボーキサイトから作られたアルミニウムなど、様々な鉱物資源が溶接技術によって製品へと形を変えていきます。
近年では、水素を利用した環境に優しい製鉄技術(HyDR)が注目されており、従来のCO2を大量に排出する製鉄方法から、水素ベースの直接還元法への転換が進んでいます。この新しい製鉄技術で作られた鋼材も、最終的には溶接技術によって自動車や建築物などの製品に加工されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11393130/
特殊な金属材料の溶接では、材料特性を深く理解する必要があります。例えば、ステンレス鋼やアルミニウムの溶接は、炭素鋼とは異なる技術が必要で、JIS溶接技能者評価試験でも別の種目として設定されています。アルミニウム溶接は特に難易度が高く、専門級の取得には相当な技術習得が求められます。
高窒素鋼などの特殊鋼材の溶接では、気孔(ポロシティ)の発生を抑える技術が重要です。レーザー・アーク複合溶接などの最新技術により、高品質な溶接が可能になっています。このような先端技術は、自動車産業や航空宇宙産業などで需要が高まっており、高度な溶接資格を持つ技術者の価値がますます高まっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11923062/
鉱石に興味がある方にとって、採掘された鉱物がどのように加工され、最終製品になるかを理解する上で、溶接技術の知識は非常に有用です。アーク溶接資格を取得することで、鉱物資源から製品までの一連の流れを実践的に学ぶことができます。
厚生労働省:金属アーク溶接等作業に従事する皆様へ(作業主任者制度の詳細)
一般社団法人日本溶接協会:tion/archive.html">一般社団法人日本溶接協会:溶接技能者認証実績(合格率の推移データ)