第59回セントラル硝子国際建築設計競技は、2024年9月3日に1次審査が行われ、2024年12月7日に学士会館で公開2次審査が実施されました。今回のテーマは「トイレ(Toilet)」という身近ながら建築設計の根本に関わる課題でした。この一見シンプルなテーマから、応募者たちの創意工夫と空間デザイン能力を引き出すことが競技の狙いでした。
1次審査を通過した7組の作品は、ポスターセッション形式でプレゼンテーションが行われた後、公開2次審査で最終判定されました。日本の大学院生チームが複数組通過するなど、次世代建築家の高い水準が示されました。特に、東京工業大学大学院からは須藤寛天、大山亮、結城健仁の3名が1次通過作品に名を連ねており、大学研究室レベルでのデザイン教育の質の高さが窺えます。
最優秀賞を受賞したのはクロアチアのフリーランス建築家、カレーシミル・ダミアーノビッチ氏でした。彼の受賞作品は、トイレという限定的な空間の中に、人間の尊厳と快適性を追求する独創的なコンセプトが込められていたと評価されています。優秀賞2組には、オーストラリアのアトリエ・ソレールのユージン・ソレール氏と、東京科学大学大学院の須藤寛天・大山亮チームが選出されました。
セントラル硝子 コンペの審査では、単なる美的表現だけでなく、実現可能性、社会への貢献、新規性といった多角的な視点が重視されます。過去の受賞作品を分析すると、既存建築の再利用(コンバージョン)、都市と農村の関係性、空間と人間関係の相互作用など、時代ごとのテーマが建築デザインの課題として設定されていることがわかります。
第57回のテーマ「都市と農村を繋ぐ建築」では、審査委員長の隈研吾が掲げるサステナビリティと地域性に関する設計思想が反映されていました。このように審査委員の個性と思想がテーマ設定に大きく影響するため、応募者たちは単に技術的に優れたデザインだけでなく、審査委員のデザイン哲学を読み解く必要があります。
セントラル硝子 コンペが重視する評価軸は、表現力、実現性、オリジナリティ、そして社会的意義の四つです。特に新しさ(オリジナリティ)については、既存の建築理論や設計手法の延長線上ではなく、まったく新しい視点から問題に取り組むことが期待されています。同時に、その新しさが実現可能な技術や施工方法に支えられているかどうかも厳しく問われます。
セントラル硝子 コンペの歴史は、近代から現代にかけての建築デザインのトレンド変化を映す鏡となっています。1970年代から1980年代のテーマは「美しいガラスの建築」「自然環境に建つ現代美術館」など、建築の造形性と環境との関係を問う内容が主流でした。当時のセントラル硝子は建材企業として、素材(ガラス)を活かした建築表現に関心を寄せていました。
1990年代から2000年代初頭では、「コンバージョン」「住まいの再生」といった既存資源の活用が重視されるようになりました。2006年の第41回では「既存建築をコンバージョンして都市に住む」がテーマとなり、都市スプロール問題への建築的応答が求められました。審査委員長は建築家の伊東豊雄が務め、審査委員には隈研吾、長谷川逸子、山本理顕など当時の第一線建築家が参加しました。
近年のセントラル硝子 コンペでは、社会的課題への応答がより明確になっています。2020年の第55回「ボディ・カルチャー・クラブ」では健康と文化の関係、2021年の第56回「交感する空間」では人間関係の質、2022年の第57回「都市と農村を繋ぐ建築」では地方創生と持続可能性がテーマとなっており、時代の要請に応える建築実践が求められるようになったことが明らかです。
セントラル硝子 コンペへの応募を検討している設計者や学生にとって、審査委員の構成とその専門領域を事前に調査することは極めて重要です。過去のコンペ結果から、審査委員長となる建築家の設計思想が受賞作品の特質に強い影響を与えていることが明らかになっています。例えば、隈研吾が審査委員長を務めた場合、素材の活用や地域性、自然との関係といったテーマが重視される傾向が見られます。
提出図面の作成では、技術的な正確性と表現力のバランスが重要です。セントラル硝子 コンペでは、配置図、平面図、断面図などの基本図面に加えて、透視図やプレゼンテーションモデルの写真を含めることが推奨されています。注目すべき点として、提出図面には説明文を最大200字以内で加えることが許可されており、この説明文でコンセプトの本質を簡潔に伝えることが、審査員の理解を深める上で効果的です。
1次審査を突破するための戦略として、他の応募作品と差別化されたコンセプトの開発が不可欠です。セントラル硝子 コンペは応募総数が数百点に達するため、既存の建築理論の範囲内に収まるデザインでは審査員の目に留まりにくいのが現実です。テーマに対する独自の解釈、新しい技術の導入、社会的課題への応答といった複数の要素を組み合わせることで、初見で「これは興味深い」と感じさせる提案の開発が求められます。
セントラル硝子 コンペの受賞作品が『新建築』と『a+u』に掲載されることの意味は、単なる雑誌掲載にとどまりません。これらの雑誌は国内外の建築家、クライアント、メディアから高い信頼性を持つ媒体として認識されており、受賞作品は国際的なネットワークの中での信用構築に直結します。実際、過去の受賞者の多くが、この受賞経歴をきっかけに国内外での設計依頼や研究職への就職機会を得ています。
現在進行中の第60回セントラル硝子国際建築設計競技は、2025年2月28日に応募受付を開始し、2025年8月27日が作品応募締切となっています。1次審査は2025年9月上旬に予定されており、1次審査結果は2025年10月上旬に発表される予定です。2次審査は2025年12月9日に東京の如水会館で開催され、最終結果は『新建築』2026年2月号と『a+u』2026年3月号で発表されることになっています。
第60回のテーマはまだ今回の取材時点で未公開ですが、近年の傾向から推測すると、環境問題、都市再生、社会包摂、あるいはテクノロジーと建築の関係など、現代社会が直面する課題に取り組むものになる可能性が高いと考えられます。セントラル硝子という素材企業がスポンサーとなっているため、ガラスやその他先端材料を活用した建築表現への関心も引き続き高いと推測されます。
セントラル硝子 コンペの今後の展望として、国際化のさらなる進展が予想されます。過去数年の応募データから見ると、海外からの応募比率が増加傾向にあり、特にアジア太平洋地域からの参加が増えています。これに伴い、審査委員にも海外の著名建築家が参加する傾向が強まっており、より多元的な建築価値観が導入されていくと考えられます。同時に、デジタル技術の進展により、1次審査の審査方法や2次審査でのプレゼンテーション形式も変化していく可能性があります。
参考リンク:過去の受賞作品と詳細な審査委員情報はセントラル硝子の公式ウェブサイトで確認できます。
https://www.cgco.co.jp/kyougi
建築業界の登竜門としてのセントラル硝子 コンペの役割と、その時代ごとのテーマ設定については『新建築』の過去記事でも詳しく解説されています。

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