酸化タングステン(WO3)は、優れた光触媒材料として注目を集めています。バンドギャップエネルギーは約2.5~2.8eVであり、吸収端波長が460nm~488nm付近に存在することが特徴です。これに対して従来の酸化チタン(TiO2)はバンドギャップが3.2eVと大きく、紫外線が必要でした。酸化タングステン光触媒は小さなバンドギャップにより、可視光領域(特に青色光)での光応答が可能になり、室内環境での活用が実現しました。
酸化タングステンの価電子帯の上端位置も低く、酸化力が大きいという利点があります。この特性により、難分解性の揮発性有機化合物(VOC)も効率的に分解できるようになりました。産業技術総合研究所の研究では、酸化タングステンが安定性に優れ、元素としての有害性もないことが確認されています。さらに混練法などの簡単な合成法で大量製造が可能であり、実用レベルに近い性能を備えた半導体光触媒として評価されています。
酸化タングステン光触媒に光が照射されると、半導体表面の価電子帯の電子が光エネルギーを吸収して伝導帯に励起されます。この結果、伝導帯に負電荷を持つ電子(e-)が生成され、還元性を示します。一方、価電子帯には正に帯電した正孔(h+)が残ります。これらの光生成キャリアが溶液中に溶解した酸素と水と相互作用することで、化学的に活性なヒドロキシルラジカル(・OH)と過酸化水素(H2O2)が生成されます。
この反応は特に可視光条件下で効率的です。室内の蛍光灯やLED照明の光で酸化タングステン光触媒の電子正孔対が生成されるため、紫外線ランプを必要としません。実際の分解試験では、可視光下でのアセトアルデヒド分解について、酸化チタン系光触媒と比べてパラジウム助触媒を添加したWO3系光触媒は7倍以上の大きな酸化分解活性を示したと報告されています。この優れた可視光応答性により、屋内環境での光触媒応用が現実的になりました。
VOC(揮発性有機化合物)はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ギ酸、酢酸などの物質で、塗料や接着剤、建材から室内に放出されます。特にトルエンなどの難分解性の芳香族化合物は従来の酸化チタン光触媒では効果的に分解できませんでした。しかし酸化タングステン光触媒は、これらの難分解性物質をCO2と水に完全酸化分解するのに十分な活性を有しています。
完全酸化分解とは、有機物を完全に酸化して二酸化炭素と水に分解し、無害化する過程です。酸化タングステンにパラジウム(Pd)または銅(Cu)化合物を助触媒として添加することで、光触媒の活性が飛躍的に向上します。助触媒微粒子粉末をWO3粉末と単に混練するだけで活性が大幅に改善され、シックハウス症候群の原因物質や室内の悪臭物質の分解が効果的に行われます。さらに、この光触媒は室内の蛍光灯照明条件下でも高い活性を保つため、空気清浄機や車内環境浄化への応用が期待されています。
参考リンク(酸化タングステン光触媒の産総研における開発背景と実用化への道):
産業技術総合研究所 - 可視光応答性酸化タングステン光触媒の開発成果
酸化タングステン単独では光触媒活性が十分ではありませんが、助触媒の添加により劇的に活性が向上することが研究で明らかになっています。特に銅系化合物を酸化タングステン表面に修飾することで、可視光への感度が格段に向上します。独立行政法人産業技術総合研究所の研究グループは、この銅系化合物修飾酸化タングステンが最初の実用的な可視光応答型光触媒材料となることを見出しました。
パラジウムおよび銅化合物の助触媒が機能する理由は、これらの金属がスポッティング効果を発揮し、光生成電子正孔対の分離効率を向上させるためです。助触媒上には電子が集積され、水や酸素との反応が促進されます。また、この複合化材料は高い安定性を持ち、繰り返し使用しても活性の低下がほとんど見られません。混練法による簡単な製造プロセスは大量生産を容易にし、実用レベルに近い特性を実現しています。
参考リンク(銅系助触媒の効果についての詳細情報):
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) - 室内でも使える可視光応答型光触媒
酸化タングステン光触媒の表面形態を制御することで、さらに高い光触媒活性が得られることが最近の研究で明らかになっています。ナノロッド構造やナノプレート構造など、異なる形態を持つ酸化タングステンの光触媒活性を比較した研究では、ナノロッド薄膜が優れた性能を発揮することが報告されています。タングステン金属基板上に直接合成された酸化タングステンナノロッド薄膜は、酸化チタンナノロッド薄膜よりも高い光触媒性能を示しました。
さらに注目すべきは、光触媒反応を繰り返し行っても活性の低下がほとんど確認されないという優れた安定性です。白金を担持した酸化タングステン薄膜の再利用性試験では、同じ実験を5回連続で行っても5時間後のローダミンB(色素)をすべて脱色できる高い活性を維持しました。この優れた耐久性は、室内照明環境での長期使用を想定した応用製品の開発を可能にします。ナノ構造化された酸化タングステンは、表面積の増加と光学吸収率の向上により、従来のバルク材料では実現不可能な高い光触媒性能を発揮しており、今後の実用化が大きく期待される領域です。
参考リンク(ナノ構造化光触媒の合成と特性評価に関する学術情報):
科学研究費助成事業(KAKENHI)データベース - タングステン基板上のナノロッド薄膜合成研究
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