化合物半導体メーカーと種類や用途・将来性

化合物半導体は次世代のパワー半導体や光デバイスとして注目を集めており、GaNやSiCなど多様な種類が存在します。日本企業を含む主要メーカーの動向や市場規模、製造技術について詳しく解説していますが、あなたはこれらの情報をご存知ですか?

化合物半導体メーカーと市場動向

化合物半導体の主要トピック
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主要メーカー

Wolfspeed、Skyworks、Qorvo、三菱電機、ロームなど国内外の化合物半導体メーカーが市場をリード

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市場規模と成長性

2024年の4兆4584億円から2031年には7兆9920億円規模へ拡大予測

応用分野

パワー半導体、LED、高周波デバイスなど多様な用途で活用

化合物半導体メーカーの世界的企業と国内主要企業

化合物半導体市場において、世界をリードする企業群が存在しています。グローバル市場では、Wolfspeed Inc.、Skyworks Solutions Inc.、Qorvo Inc.といった米国企業がトップクラスのシェアを占めています。これらの企業は、高周波デバイスやパワー半導体の分野で高い技術力を誇り、5G通信やデータセンター向けの製品開発を積極的に進めています。

 

参考)化合物半導体 企業 - トップ企業一覧

欧州勢では、Infineon Technologies AGやSTMicroelectronics N.V.が重要なプレイヤーとして位置づけられており、特に自動車向けのパワー半導体市場で強みを発揮しています。また、ams-OSRAM AG(旧OSRAM GmbH)は光デバイス分野で高いシェアを維持しており、LEDやレーザーダイオードの製造で知られています。

日本企業においては、三菱電機とロームがパワー半導体分野で世界トップ10に入る実力を持っています。三菱電機は産業機械や自動車向けのSiC(炭化ケイ素)パワー半導体で競争力を保持し、ロームは車載および産業機器向けの高性能パワー半導体に強みを持ちます。さらに、日本勢はパワー半導体において世界シェアの20%以上を占めており、日本の半導体産業における重要な牙城となっています。

 

参考)三菱電機、ロームが世界で競り合うパワー半導体 覇権を握るカギ…

その他の注目企業としては、GaN Systems Inc.やTransphorm Inc.がGaN(窒化ガリウム)パワー半導体の専業メーカーとして存在感を示しており、次世代パワーデバイスの開発を牽引しています。WIN Semiconductors Corp.やEpistar Corporationは台湾を拠点とし、高周波デバイスやLEDチップの製造で高いシェアを持っています。

化合物半導体の種類別特性とメーカーの注力分野

化合物半導体は、その構成元素によってさまざまな種類に分類され、それぞれ異なる特性と応用分野を持っています。代表的な化合物半導体には、GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化ケイ素)、GaAs(ヒ化ガリウム)などがあり、これらは単体のシリコン半導体では実現できない高性能を発揮します。

 

参考)https://jp.rs-online.com/web/content/discovery/ideas-and-advice/compound-semiconductor-guide

GaNは、バンドギャップが3.4eVと広く、高周波特性と高速動作に優れているため、5G通信基地局や衛星通信の高周波デバイスに広く採用されています。また、GaNパワー半導体は高耐圧・低損失という特性を持ち、データセンターの電源装置や電気自動車(EV)の充電器などで活用が進んでいます。主要メーカーとしては、GaN Systems Inc.やTransphorm Inc.がGaN専業として製品開発を進めており、三菱ケミカルグループはGaN基板の製造に注力しています。

 

参考)https://www.oki.com/jp/showroom/virtual/column/c-20.html

SiCは、バンドギャップが3.3eVであり、特に高温環境や高電圧・大電流下での動作に優れています。このため、EVのインバーターや産業用モーターの制御装置など、パワー半導体として幅広く使用されています。TeslaやLucid MotorsといったEVメーカーは、すでにSiCパワーMOSトランジスタを採用しており、今後の市場拡大が期待されています。日本企業では、ローム(6963)がSiCパワー半導体の開発と量産化で先行しており、車載および産業機器向けに製品を供給しています。

 

参考)化合物半導体 SiC、GaNとは |サンケン電気

GaAsは、高速動作と高周波特性に優れているため、スマートフォンの高周波デバイスや光通信用のレーザーダイオード、受光素子などに使用されています。WIN Semiconductors Corp.やEpistar Corporationなどの台湾メーカーがGaAs基板やデバイスの製造で高いシェアを誇ります。

 

参考)化合物半導体【SiC】とは?

その他の化合物半導体としては、InP(インジウムリン)が高速光通信デバイスに、AlInGaP(アルミニウムインジウムガリウムリン)が赤色LEDに使用されるなど、用途に応じた多様な材料が開発されています。さらに、次世代材料としてダイヤモンド基板が注目されており、Beyond 5Gや量子分野での応用が期待されています。

 

参考)https://www.samco.co.jp/whatsnew/uploads/marusan_report.pdf

化合物半導体メーカーの市場規模と成長予測

化合物半導体市場は、AI需要の拡大、5G通信の普及、電気自動車(EV)の増加などを背景に急速な成長を続けています。富士キメラ総研の調査によると、2024年の化合物半導体世界市場は前年比10.6%増の4兆4584億円と見込まれており、2031年には7兆9920億円規模に達すると予測されています。この成長を牽引する主要分野は、LEDチップとパワー半導体であり、特にMini LED・Micro LEDやSiC on SiC基板の需要増加が期待されています。

 

参考)https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2502/20/news099.html

RF(高周波)半導体市場は、2028年以降に第6世代移動通信(6G)向けの投資が活発化することで、さらなる成長が見込まれています。また、データセンター向けのAI関連半導体需要も化合物半導体の採用を加速させており、GaN基板やVCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)の需要増加が注目されています。

グローバル市場の観点では、2025年の化合物半導体市場規模は423億6000万ドルで、2032年までに728億9000万ドルへ成長し、年平均成長率(CAGR)8.1%で拡大すると予測されています。この成長は、5Gネットワークの継続的な進化と民生用電子機器におけるLED需要の増加によって牽引されると見られています。

 

参考)https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E5%8C%96%E5%90%88%E7%89%A9%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93%E5%B8%82%E5%A0%B4-110152

化合物半導体チップ市場においても、2024年の約903百万米ドルから2031年には1297百万米ドル規模へと成長する見込みで、年平均成長率(CAGR)5.60%で拡大すると予測されています。この成長は、技術革新や需要の高まり、産業構造の変化といった要因に支えられています。

 

参考)化合物半導体チップの成長予測:2031年には1297百万米ド…

一方で、化合物半導体は製造コストが高く、シリコン半導体と比較して価格面での課題が存在します。しかし、先端パッケージ技術や異なるチップの組み合わせ技術の進化により、新たな展開が期待されており、将来的には市場規模がさらに拡大すると見られています。

化合物半導体メーカーの製造技術とMOCVD装置

化合物半導体の製造には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、有機金属気相成長)法が広く用いられています。MOCVD法は、有機金属化合物と水素化物を原料とし、熱分解反応によって半導体薄膜を基板上に堆積させる手法です。この方法は、大面積にわたって膜厚や組成の均一性を保ち、急峻なヘテロ界面を形成できるという特徴があります。

 

参考)情報通信を支える化合物半導体と計測技術 - HORIBA

MOCVD装置は、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、InP(インジウムリン)などのIII-V族化合物半導体や、SiC(炭化ケイ素)、ZnO(酸化亜鉛)、Ga2O3(酸化ガリウム)といったII-VI族および酸化物半導体の製造に使用されます。原料ガスの流量を精密に制御することで、半導体薄膜の成長速度や組成を細かく調整でき、単一原子層レベルでの制御も可能です。

 

参考)MOCVD装置(有機金属気相成長) - 研究開発~量産装置 …

この製造技術は、高真空を必要としないため、大面積かつ高い生産性を実現でき、LED、高周波デバイス、パワー半導体などの量産に適しています。また、MOCVD装置には研究開発用の小型チャンバから量産用の大型チャンバまで対応可能な機種が存在し、高精度な温度制御やメンテナンス性に優れた設計が採用されています。

日本国内では、大陽日酸がMOCVD装置の開発と製造を手がけており、化合物半導体製造の前工程において重要な役割を果たしています。Agnitron社などの海外メーカーも、先端化合物半導体向けに高性能・高スループットのMOCVD装置を提供しており、各種アプリケーションに対応した製品ラインナップを展開しています。

 

参考)大陽日酸 安定同位体・金属3Dプリンター・MOCVDなど先端…

MOCVD法以外の製造技術としては、マルチワイヤソーによるウエハのスライシング、CMPによる精密研磨、プラズマダイシングによる切断加工などがあり、これらの工程技術を組み合わせることで、高品質な化合物半導体デバイスが実現されています。特に、SiC、GaN、ダイヤモンドといった超難加工材の加工プロセスには、固定砥粒方式マルチワイヤソーや延性モード加工などの先進技術が必要とされており、次世代3次元異種混載デバイスの実現に向けた技術開発が進められています。

 

参考)https://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=9440

化合物半導体メーカーが直面する鉱石資源と供給網の課題

化合物半導体の製造には、ガリウム、インジウム、ヒ素、リン、窒素、炭素といった特定の元素が必要であり、これらの鉱石資源の安定供給が業界の重要な課題となっています。特に、ガリウムはアルミニウム精錬の副産物として得られるレアメタルであり、その生産量は限られています。また、インジウムは亜鉛精錬の副産物として得られるため、資源の希少性とコストの高騰が懸念されています。

 

参考)化合物半導体とは? 特性・単体半導体との違いを解説

ヒ素やリンといったV族元素も、化合物半導体の製造に欠かせない原料ですが、これらの物質は毒性が高く、取り扱いや廃棄に関して厳格な環境規制が適用されています。このため、メーカーは安全な製造プロセスの確立と環境負荷の低減に向けた技術開発を進めており、原料のリサイクルや代替材料の研究も行われています。

SiC(炭化ケイ素)の原料である炭素とケイ素は比較的豊富に存在しますが、高品質な単結晶SiC基板の製造には高度な結晶成長技術が必要であり、製造コストが高いという問題があります。このため、大口径化や製造プロセスの効率化が業界全体の課題となっており、日本企業を含む主要メーカーが技術開発と設備投資を進めています。

GaN(窒化ガリウム)の製造においても、ガリウムの安定供給が重要な要素となります。三菱ケミカルグループは、長年培ってきた結晶成長技術と化合物半導体の加工技術を用いて高品質なGaN基板を製造しており、国内での供給体制を整えています。しかし、グローバルな供給網の観点では、特定の国や地域に原料供給が集中していることがリスク要因となっており、地政学的な不安定性が市場に影響を与える可能性があります。

 

参考)【日本株】AI時代の次世代材料、日本が先行するGaNパワー半…

さらに、化合物半導体の製造には、原料となる有機金属化合物や特殊ガスも必要であり、これらの化学物質の供給網も複雑です。MOCVD装置で使用される原料ガスの流量制御や品質管理は、最終製品の性能に直接影響するため、高精度な計測装置と管理システムが求められています。このように、化合物半導体メーカーは鉱石資源の調達から製造プロセスの最適化まで、幅広い課題に取り組んでいます。

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