塩化銅電気分解の仕組みと実験方法

塩化銅水溶液を電気分解すると、銅と塩素がどのように発生するのでしょうか。陰極と陽極での反応の違いや、実験で注意すべきポイント、さらには実生活での応用まで、化学反応の基礎から詳しく解説します。この実験の仕組みを理解できれば、イオンの動きもすっきり理解できるはずです。

塩化銅電気分解の仕組み

この記事のポイント
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塩化銅の電気分解とは

塩化銅水溶液に電流を流すと、銅と塩素に分解される化学反応です

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陰極と陽極での反応

陰極には赤褐色の銅が析出し、陽極からは黄緑色の塩素ガスが発生します

イオンの動き

銅イオンは陰極へ、塩化物イオンは陽極へと移動して電子をやり取りします

塩化銅電気分解の基本反応

塩化銅水溶液の電気分解は、化学式CuCl₂で表される塩化銅を銅(Cu)と塩素(Cl₂)に分解する反応です。この反応は化学反応式で「CuCl₂ → Cu + Cl₂」と表され、電気エネルギーを用いて化合物を単体に分ける典型的な電気分解の例となっています。塩化銅水溶液は青色をしており、これは銅イオン(Cu²⁺)が水溶液中に存在するためです。
参考)塩化銅水溶液の電気分解

 

電気分解の際、塩化銅は水溶液中で銅イオン(Cu²⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に電離しています。電離式は「CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻」と表され、1つの銅イオンに対して2つの塩化物イオンが1:2の割合で存在します。電流を流すと、これらのイオンがそれぞれの電極に引き寄せられ、電子の授受によって原子へと変化していきます。
参考)【中3理科】塩化銅水溶液の電気分解をわかりやすく解説!反応の…

 

塩化銅電気分解における陰極の反応

陰極は電源装置の負極(-極)につながっている電極で、ここには正の電荷を持つ銅イオン(Cu²⁺)が引き寄せられます。陰極に到達した銅イオンは、電極から電子を2個受け取り、銅原子(Cu)になります。この反応は「Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu」という式で表されます。
参考)【中3理科】「塩化銅水溶液の電気分解2(しくみ)」

 

陰極に析出した銅は赤褐色(赤色)の固体として観察できます。この銅は金属の性質を持ち、磨くと金属光沢が現れ、展性・延性があり、熱や電気をよく通します。電気分解が進むにつれて、水溶液中の銅イオンが減少するため、青色の水溶液の色が徐々に薄くなっていくのが観察されます。
参考)中3化学【塩化銅水溶液の電気分解】

 

塩化銅電気分解における陽極の変化

陽極は電源装置の正極(+極)につながっている電極で、負の電荷を持つ塩化物イオン(Cl⁻)がこちらに移動します。陽極に到達した塩化物イオンは、電極に電子を1個渡して塩素原子(Cl)になります。この反応は「Cl⁻ → Cl + e⁻」と表されます。
参考)https://service.zkai.co.jp/ad/mihon/u3r.pdf

 

塩素原子は不安定なため、2個結びついて塩素分子(Cl₂)となって気体として発生します。発生した塩素は黄緑色で刺激臭(プールのような臭い)があり、赤インクを染み込ませたろ紙を近づけると色が抜けて白くなる脱色作用を示します。塩素は水に溶けやすいため、発生した泡がすぐに水溶液に溶け込む場合もあります。
参考)https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-scie/kyokasho/pdf/ikousochi/201003b.pdf

 

塩化銅電気分解の実験手順と注意点

実験装置はビーカーに塩化銅水溶液を入れ、炭素棒や白金などの反応しにくい材質の電極を2本差し込んで電源装置につなぎます。電圧は通常5~6Vを使用し、1~2分間電流を流します。電極の材質として炭素や白金を用いるのは、他の物質と反応しにくく実験結果に影響を与えないためです。
参考)https://sch.kamisato.ed.jp/kamichu/file/1262

 

実験の注意点として、発生する塩素ガスの臭いを確認する際は、直接吸い込まずに手であおいで確認する必要があります。塩素には刺激性があるため、深く吸い込むと危険です。また、実験時には保護めがねや実験用手袋を着用し、目や皮膚を保護することが推奨されます。電気分解を続けると水溶液中のイオンが減少するため、豆電球をつないだ回路では徐々に電流が流れにくくなります。
参考)http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/ion4.html

 

塩化銅電気分解の工業的応用

電気分解の原理は工業分野で幅広く活用されており、特に金属の製錬や精錬に重要な役割を果たしています。銅の電気精錬では、粗銅を陽極とし純銅を陰極として電気分解を行うことで、不純物を除去して高純度の銅を得ることができます。この技術により99.99%以上の純度を持つ銅を効率的に生産できるようになっています。
参考)循環型社会を支える要素技術となりうる電気分解 その仕組みと可…

 

電気めっき技術も電気分解の応用例です。金、銀、ニッケル、クロム、銅、亜鉛などの金属を電気分解によって薄膜として形成し、防錆、耐摩耗性、耐熱性、表面硬度の向上、電磁波シールド性、装飾などの目的で工業製品に利用されています。また、電着塗装という手法では、樹脂成分を水中で電気分解により析出させることで、複雑な形状の被塗物にも均一に薄膜を形成できる技術として自動車の防錆塗料などに約50年の実績があります。
参考)環境に配慮した金属調フィルムの加飾展開

 

塩化銅電気分解とイオンの移動原理

電気分解では、イオンが磁石のように電極に引き寄せられる現象が起こります。陽イオン(+)は陰極(-極)に、陰イオン(-)は陽極(+極)に向かって移動するのは、異なる電荷同士が引き合う性質によるものです。この原理は磁石のN極とS極が引き合うのと同様の仕組みです。
参考)塾講師が教える【銅は陽極?陰極?】塩化銅水溶液の電気分解・ダ…

 

電気分解の本質は、溶液中の電子を動かすことでイオンに無理やり電子を受け渡しさせて原子に戻す反応です。陽極では塩化物イオンが電子を失い、陰極では銅イオンが電子を得るという電子の授受が同時に起こります。この電子のやり取りこそが電気分解における酸化還元反応の核心であり、化学エネルギーと電気エネルギーの変換を可能にしています。実際の工業プロセスでは、この原理を応用して様々な金属の製造や表面処理が行われており、現代の製造業を支える基盤技術となっています。
参考)http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/yamadayo/pdf/65-2-2-yamada.pdf