第一鉄と第二鉄の副作用は何が違う

鉄剤の第一鉄と第二鉄、それぞれの副作用や吸収率の違いを理解していますか。貧血治療に使われる鉄剤の選び方から、安全な摂取方法まで詳しく解説します。あなたに最適な鉄剤はどちらでしょうか。

第一鉄と第二鉄の副作用

この記事のポイント
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第一鉄と第二鉄の違い

第一鉄は2価の鉄、第二鉄は3価の鉄化合物で、吸収率や副作用に大きな差があります

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主な副作用

第一鉄は悪心・嘔吐などの消化器症状が出やすく、第二鉄は比較的胃腸への負担が少ない特徴があります

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吸収率の比較

第一鉄の吸収率は30~40%、第二鉄は1~3%と大きな差がありますが、製剤の工夫で改善されています

第一鉄の副作用と消化器症状

第一鉄(Fe2+)は鉄欠乏性貧血の治療に広く使われていますが、消化器症状の副作用が比較的多く報告されています。代表的な第一鉄製剤であるクエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア)や硫酸鉄(フェログラデュメット)では、悪心、嘔吐、下痢、便秘などの胃腸障害が出やすいことが知られています。これらの副作用は胃腸粘膜への直接刺激が原因とされており、服用した患者の約20%に嘔気や嘔吐が見られると報告されています。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/kurumi/2913

 

第一鉄製剤の中でも、無機鉄である硫酸鉄はpH上昇に伴い吸収が悪くなるため、食後に服用すると効果が低下する特徴があります。一方、有機鉄であるクエン酸第一鉄ナトリウムは、クエン酸との錯体構造により酸性から塩基性まで広いpH域で溶解するため、胃酸分泌が低下している高齢者や胃切除患者でも吸収が良好です。空腹時の方が吸収されやすいものの、その分副作用も出やすくなってしまうため、服用タイミングの調整が重要となります。
参考)https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20210811

 

第二鉄の副作用と特徴

第二鉄(Fe3+)は第一鉄と比較して胃腸障害を起こしにくいという大きなメリットがあります。従来、第二鉄の保険適用は小児用のインクレミンシロップのみでしたが、近年ではクエン酸第二鉄水和物(リオナ錠)が成人の鉄欠乏性貧血治療に使用できるようになりました。リオナ錠による副作用発生率は、悪心13.0%、嘔吐3.2%と、フェロ・グラデュメットの悪心32.7%、嘔吐15.2%と比べて大幅に低くなっています。
参考)鉄欠乏性貧血:鉄剤の内服薬で副作用のある方に、有用な注射薬(…

 

第二鉄製剤は胃酸がないと効果が出にくい製剤とは異なり、胃切除を受けた人にも使用できる利点があります。また、第二鉄は本来吸収率が1~3%と第一鉄の30~40%に比べて低いですが、リオナ錠では鉄含有量を1錠あたり60mgと高めに設定し、通常2錠から最高4錠(1000mg)まで投与できるため、鉄摂取量は最大240mgと他剤の約2倍となり、貧血改善効果はクエン酸第一鉄ナトリウム錠と同程度とされています。
参考)https://www.ohori-pc.jp/posts/%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E9%89%84%E3%81%AF%E5%90%90%E3%81%8D%E6%B0%97%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%8F%E8%B2%A7%E8%A1%80%E3%81%AB%E6%9C%89%E5%8A%B9

 

第一鉄と第二鉄の吸収率の違い

鉄剤の吸収率は、その化学形態によって大きく異なります。消化管から吸収されるのはFe2+(第一鉄)のみであるため、第一鉄と第二鉄では体内への取り込み過程が根本的に違います。吸収率はさまざまな条件により変動しますが、一般的にFe2+が30~40%、Fe3+が1~3%と言われています。
参考)https://omaezaki-hospital.jp/-/wp-content/uploads/2022/09/2f3734e3a02c5809a9078b19c755d436.pdf

 

しかし、サプリメントや医薬品では、非ヘム鉄(第二鉄を含む)でも小腸からスムーズに吸収されるよう加工されているものが多く、実際の吸収率の差はそれほど大きくない場合もあります。鉄は腸管から2価の形で吸収されるため、経口鉄剤には酸化されて3価にならないような工夫がされており、製剤技術の進歩により第二鉄製剤でも十分な貧血改善効果が得られるようになってきています。
参考)【血液専門医が解説】インクレミンシロップ(一般名:溶性ピロリ…

 

第一鉄と第二鉄の選び方と注意点

鉄欠乏性貧血の治療では、原則として経口鉄剤から開始することが推奨されており、患者の状態や副作用の出方によって第一鉄と第二鉄を使い分けることが重要です。第一鉄製剤は吸収率が高く即効性がある一方、消化器症状が出やすいため、副作用が強い場合は第二鉄製剤への変更が検討されます。
参考)鉄欠乏性貧血を知る

 

また、鉄剤には黒色便という特徴的な副作用があり、便の色が黒くなることを患者にあらかじめ伝えておくことが重要です。鉄剤の内服薬で副作用が出て継続できない患者には、静脈内投与する鉄剤(デルイソマルトース第二鉄やカルボキシマルトース第二鉄など)が選択肢となり、これらは速やかに貧血を改善し、3~6か月程度は再投与が不要な場合が多いとされています。
参考)【特集】鉄欠乏性貧血を知る

 

第一鉄と第二鉄の過剰摂取リスク

鉄剤の過剰摂取には注意が必要で、高用量の鉄分サプリメント(45mg/日以上)は悪心や便秘などの胃腸の副作用を引き起こす可能性があります。腸の機能が正常な成人であれば、食事から摂取する鉄分による過負荷のリスクはほとんどありませんが、鉄分を25mg以上含むサプリメントは亜鉛の吸収を低下させる可能性があることが報告されています。
参考)厚生労働省eJIM

 

急性の鉄中毒では、症状が段階的に発生します。第1期(過剰摂取後6時間以内)には嘔吐、吐血、下痢、腹痛、易刺激性、眠気などの症状が現れ、第2期(過剰摂取後6~48時間)には一時的に状態が改善したようにみえることがあります。重篤な症例では、鉄分の過剰摂取により多臓器不全、昏睡、痙攣、さらには死に至る可能性があるため、医師の指示に従った適切な用量を守ることが極めて重要です。
参考)鉄中毒 - 25. 外傷と中毒 - MSDマニュアル家庭版

 

鉄剤の種類と副作用の詳細について - 薬剤師向け専門情報
鉄中毒の症状と対処法 - MSDマニュアル家庭版