絶縁抵抗基準値高圧ケーブル測定方法判定

高圧電路における絶縁抵抗の基準値や測定方法、判定基準を詳しく解説します。5000Vや10000Vでの測定時の注意点から劣化診断まで、安全な測定を実現するための重要な情報が満載です。あなたの設備は本当に安全ですか?

絶縁抵抗基準値高圧測定判定

高圧電路の絶縁抵抗測定の重要ポイント
測定電圧の選定

高圧ケーブルには5000Vまたは10000Vの測定電圧を使用し、対象設備の電圧系統に応じた適切な判定基準を適用します

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判定基準値の理解

5000V測定時は5000MΩ以上で良好、500MΩ未満で不良と判定され、定期的な測定で劣化傾向を把握することが重要です

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測定方法の選択

E端子接地法とG端子接地法の二つの測定方式があり、目的に応じて使い分けることで正確な絶縁診断が可能になります

高圧電路における絶縁抵抗測定は、電気設備の安全性を確保するための最も基本的な点検項目です。低圧回路とは異なり、高圧では絶縁耐力試験が原則ですが、実務上は絶縁抵抗測定による診断が広く活用されています。電気設備技術基準の解釈第15条では、高圧または特別高圧の電路は規定の絶縁性能を有することが求められており、適切な測定と判定が不可欠です。本記事では、高圧電路における絶縁抵抗の基準値、測定方法、判定基準について、実務に即した形で詳しく解説します。

 

参考)絶縁抵抗測定とは?実施方法と基準値・抵抗測定計の種類も解説

絶縁抵抗基準値高圧ケーブル測定電圧

 

高圧ケーブルの絶縁抵抗測定には、専用の高圧絶縁抵抗計(メガー)を使用します。測定電圧は一般的に5000Vまたは10000Vが推奨されており、これらの電圧は高圧電路の絶縁性能を正確に評価するために必要です。低圧用の絶縁抵抗計は1000Vまでの測定に対応していますが、高圧用は1000Vを超える電圧に対応しており、測定対象の電圧系統に合わせた使い分けが重要です。

 

参考)高圧絶縁抵抗計による高圧ケーブル絶縁劣化診断方法|用語|共立…

測定電圧の選定基準として、5000Vでの測定は年次点検などの絶縁診断を目的とする場合に適しており、10000Vでの測定はより詳細な劣化診断が必要な場合に実施されます。一方、工事完了後の施工ミス確認では1000V~2000Vでの測定も行われますが、これは簡易的なチェックであり、本格的な絶縁診断には高電圧での測定が不可欠です。

 

参考)高圧電路における絶縁抵抗測定値の判定基準値、許容値について解…

測定時の重要な注意点として、対象設備を必ず停電状態にし、検電器で全ての相で停電を確認してから測定を開始する必要があります。活電状態での測定は異常電圧の発生や感電事故につながる危険性があるため、安全確認は絶対に省略できません。また、測定プローブには高電圧が発生するため、測定中は接触しないよう十分な注意が必要です。

 

参考)絶縁抵抗計ガイドブック|共立電気計器株式会社

高圧絶縁抵抗計の測定電圧と用途

測定電圧 主な用途 対象設備
1000V~2000V 施工確認 新設工事後の配線チェック
5000V 定期点検・絶縁診断 高圧ケーブル、受電設備
10000V 詳細劣化診断 長期使用ケーブル、要注意線路

絶縁抵抗測定高圧判定基準値

高圧ケーブルの絶縁抵抗測定における判定基準は、高圧受電設備規程の資料1-3-2に詳細が記載されています。5000Vで測定した場合、絶縁体の絶縁抵抗値が5000MΩ以上であれば「良」と判定され、500MΩ以上5000MΩ未満は「要注意」、500MΩ未満は「不良」となります。10000Vでの測定では、判定基準値も比例して高くなり、10000MΩ以上が「良」、1000MΩ以上10000MΩ未満が「要注意」、1000MΩ未満が「不良」です。

 

参考)MODEL 3123|高圧絶縁抵抗計|製品情報|共立電気計器…

この判定基準は低圧回路の基準値(0.1MΩ~0.4MΩ)と比較して非常に高い値となっています。これは高圧電路では絶縁レベルがより厳しく要求されるためであり、漏れ電流値の判定目安では線路亘長1km以上で1μA以下が良好とされるほど、高い絶縁性能が必要です。

 

参考)【電気設備技術基準】絶縁抵抗、漏洩電流(1mA以下) 、低圧…

シース(外装)の絶縁抵抗については、CVケーブルで500Vまたは250Vの測定電圧を使用し、1MΩ以上であれば「良」と判定されます。1MΩ未満の場合は「不良」となり、外部からの水分侵入や物理的損傷の可能性が疑われます。測定値が基準値を下回る場合は、絶縁耐力試験による詳細な診断や、必要に応じてケーブルの更新を検討する必要があります。

 

参考)高圧ケーブルの絶縁抵抗測定方法(G・E測定)

判定の際には単一の測定値だけでなく、過去の測定データとの比較による経年変化の把握が重要です。前回、前々回の測定結果と比較して低下傾向が見られる場合は、基準値を満たしていても早めの対策が推奨されます。また、測定時の温度や湿度などの環境条件も記録し、正確な判断ができるようにすることが望ましいです。

 

参考)絶縁抵抗計 - 電気主任技術者のナレッジノート

高圧絶縁抵抗測定方法E端子G端子

高圧ケーブルの絶縁抵抗測定には、E端子接地法とG端子接地法という二つの主要な測定方式があります。E端子接地法は、アースコードを接地極に接続し、ラインプローブを導体に当てて測定する基本的な方法です。この方式では、高圧ケーブル全体の絶縁抵抗に加えて、PAS二次側、VCT、DS一次側、関係する碍子の絶縁抵抗を含んだ総合的な値が得られます。

 

参考)https://hanasaka.life.coocan.jp/denki/kouatusokutei.pdf

G端子接地法は、より精密な測定を行う方法で、遮蔽胴テープの接地線を切り離し、アースコード(E)を切り離した接地線の遮蔽胴テープ側に、ガードコード(G)を接地極側に接続して測定します。この方式の利点は、ビニルシースを流れる電流を無視できるほど小さくし、ケーブル絶縁体に流れる電流のみを測定できることです。ケーブル単体の絶縁性能を正確に評価したい場合には、G端子接地法が推奨されます。

 

参考)https://www.musashi-in.co.jp/manual/DI-05N_13.pdf

測定手順としては、まず5000Vでの測定を実施し、測定値が5000MΩ以上であればその値を高圧電路全体の絶縁抵抗値とします。5000MΩ未満の場合は、高圧ケーブルの金属遮蔽層の接地線を外し、G端子接地方式により再測定を行います。この手順により、問題箇所を特定しやすくなり、効率的な保守が可能になります。

E端子法とG端子法の比較

項目 E端子接地法 G端子接地法
測定範囲 電路全体(碍子等含む) ケーブル絶縁体のみ
精度 総合的評価 高精度・局所的評価
作業性 簡単・迅速 やや複雑・正確
用途 初期スクリーニング 詳細診断・原因特定


測定前の準備として、PASとDSを開放し、関係する全ての機器を停電状態にすることが必須です。高所作業車が必要な場合もあるため、事前準備を十分に行う必要があります。また、測定後は残留電荷を放電させる操作も忘れずに実施し、次の作業者の安全を確保することが重要です。

高圧電路絶縁抵抗劣化診断保守

高圧ケーブルの絶縁劣化は、長期使用による経年変化や環境要因によって進行します。主な劣化原因としては、紫外線による経年劣化、温度・湿度による劣化、機械的要因による物理的損傷、過電圧や雷サージなどの電気的要因、埃・油による汚染、掘削工事などによる物理的被害が挙げられます。これらの要因が複合的に作用することで、絶縁性能が徐々に低下していきます。

 

参考)https://www.fa.omron.co.jp/product/special/maintenance-solution/column/column09/

定期点検の周期は、ケーブルの使用年数によって変わります。10年未満のケーブルでは1~2年に1回の点検が標準的ですが、10年以上経過したケーブルについては年1回の点検が推奨されます。重負荷線路や絶縁試験結果が三相不平衡を示すような要注意線路では、状況に応じて点検回数を増やすことが望ましいです。特に10年以上使用しているケーブルは、劣化が急速に進行する可能性があるため、より慎重な監視が必要です。

 

参考)地中電線路(電力ケーブル)保守管理の要点

絶縁抵抗測定値の経年変化を追跡することで、劣化傾向を早期に発見できます。測定値が10MΩを切るような場合は絶縁抵抗値の低下に注意が必要で、前回・前々回の測定結果と比較して低下傾向が見られる場合は、基準値を満たしていても予防保全的な対策を検討すべきです。絶縁監視装置を導入し、常時監視によってトレンドを管理することで、劣化の具合を漏電値で継続的に把握し、劣化傾向が見えた段階で予防保全を実施することも有効です。

 

参考)漏電原因がわからないときの対処法と予防策|絶縁不良・点検手順…

近年では、活線状態でのシース絶縁抵抗測定や遮蔽層抵抗測定が可能な診断装置も開発されており、停電を伴わない定期診断が実現できるようになっています。水トリー劣化や遮蔽層破断などの劣化現象を事故が発生する前に検出できるため、計画的なケーブル更新が可能になります。特に老化・老朽化したケーブルについては、波及事故を防ぐために早めの更新が必要であり、絶縁抵抗測定による定期的な状態把握が極めて重要です。

 

参考)https://toukou-sangyo.jp/wp-content/uploads/2021/10/587574b8312c3292418b034f3880ac89-1.pdf

絶縁抵抗基準値と電気設備技術基準の関係

電気設備技術基準では、電路の使用電圧に応じた絶縁抵抗値が明確に規定されています。低圧電路の場合、300V以下で対地電圧150V以下(100/200V)では0.1MΩ以上、対地電圧150V超過(三相200V)では0.2MΩ以上、300V超過(三相400V)では0.4MΩ以上の絶縁抵抗が必要です。これらの基準値は、漏洩電流を1mA以下に抑えることを目的として設定されており、オームの法則に基づいて計算されています。

 

参考)電気設備技術基準・解釈の解説〔その2〕電路の絶縁と接地

高圧または特別高圧の電路については、電気設備技術基準の解釈第15条において、絶縁耐力試験による絶縁性能の確認が基本とされています。試験電圧は使用電圧に応じて定められており、7000V以下の高圧電路では最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間連続して印加することが規定されています。ただし、実務上は停電が困難な場合や、定期的な状態監視を目的として、絶縁抵抗測定が広く活用されています。

 

参考)高圧受電設備で使用される電力ケーブルや器具等の絶縁耐力試験器…

絶縁抵抗の測定が困難な場合には、電気設備技術基準・解釈の第14条第1項により、漏えい電流が1mA以下であれば絶縁性能が保たれているとみなすことができます。これは停電できない設備や、活線状態での点検が必要な場合に適用される代替手段です。絶縁抵抗値と漏えい電流の関係を理解することで、より柔軟な保守計画が可能になります。

電気設備技術基準を遵守することは、電気事故の防止と電力供給の安定性確保に直結します。基準値を下回る設備を放置すると、感電事故や火災の原因となるだけでなく、波及事故によって他の需要家にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、定期的な測定と適切な判定、基準値を満たすための改修工事が重要です。測定記録には、測定電圧、天候、気温、湿度なども併記し、後日の判断に役立てることが推奨されます。

 

参考)https://www.yokogawa.com/jp-yes/use-info/column/68/

絶縁耐力試験と絶縁抵抗測定の使い分け

高圧電路の絶縁性能確認において、絶縁耐力試験と絶縁抵抗測定はそれぞれ異なる役割を持っています。絶縁耐力試験は、規定の高電圧を一定時間印加して絶縁破壊が発生しないことを確認する試験で、設備の絶縁レベルを直接的に評価できる最も信頼性の高い方法です。一方、絶縁抵抗測定は絶縁抵抗計による簡易的な測定で、初期の絶縁レベルを必ずしも正確に評価できないものの、日常的な保守点検には十分実用的です。

絶縁耐力試験の実施には、大容量の試験電源設備が必要であり、特に長距離の高圧ケーブルでは静電容量が大きくなるため、交流試験の実施が困難な場合があります。このような場合には、直流試験を用いることが認められており、直流試験電圧は交流試験電圧の2倍の値が適用されます。例えば、使用電圧6kVの高圧電路では、交流試験電圧が10350Vとなり、直流試験電圧は20700Vとなります。

 

参考)【電験3種・法規】絶縁耐力試験の試験電圧や対地充電電流の計算…

試験電圧の印加時間は10分間連続とされており、この間に絶縁破壊が発生しないことが求められます。また、試験時には対地充電電流が流れるため、試験設備の容量計算には対地静電容量を考慮する必要があります。絶縁耐力試験は新設時や大規模改修後の完成検査で実施されることが多く、日常的な保守点検では絶縁抵抗測定が主体となります。

絶縁抵抗測定の利点は、比較的簡単な測定器で実施でき、停電時間も短くて済むことです。ただし、測定値の解釈には注意が必要で、絶縁抵抗値が高くても、電圧依存性のある絶縁劣化が進行している場合があります。そのため、複数の電圧レベルで測定を行い、電圧と絶縁抵抗値の関係をグラフ化することで、より詳細な劣化診断が可能になります。両方の試験方法を適切に組み合わせることで、設備の絶縁性能を総合的に管理できます。

絶縁抵抗測定の基本的な実施方法と基準値について
高圧電路の判定基準値と許容値の詳細解説
高圧絶縁抵抗計の仕様と判定基準の参考資料

 

 


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