日本のユネスコ無形文化遺産に登録された祭りは、2024年時点で22件を数え、世界第7位の登録数を誇っています。その中でも特に注目されるのが「山・鉾・屋台行事」と「風流踊」です。これらの祭りは単なる娯楽行事ではなく、日本の歴史や風土、人々の生活文化を伝える重要な文化的所産となっています。
参考)山・鉾・屋台行事 - Wikipedia
山・鉾・屋台行事は、山車が巡行する日本の祭り33件からなる無形文化遺産で、2016年11月30日に登録が決定しました。これらの祭りは青森県から大分県に至る18府県に分布しており、すべて国の重要無形民俗文化財に指定されています。代表的な祭りとしては、京都の「京都祇園祭の山鉾行事」、秋田の「角館祭りのやま行事」、岐阜の「高山祭の屋台行事」、愛知の「犬山祭の車山行事」などがあります。
参考)ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」月別リスト全33祭
これらの山車は神様が降りてくる依り代であり、地域ごとに形状や装飾が異なり、その土地の伝統文化の粋を凝らした芸術作品でもあります。全国山・鉾・屋台保存連合会には、2025年の追加申請が決定された「大津祭の曳山行事」「村上まつりのしゃぎり行事」など4件も加盟しており、早ければ2025年11月ごろに追加登録の結論が出る見込みです。
参考)ユネスコ無形文化遺産 山・鉾・屋台行事|株式会社オマツリジャ…
風流踊は日本各地の盆踊りや念仏踊りなど41件の伝統芸能を包括する無形文化遺産で、2022年にユネスコに登録されました。岩手県の「永井の大念仏剣舞」「鬼剣舞」、秋田県の「西馬音内の盆踊」、岐阜県の「郡上踊」「寒水の掛踊」、長崎県の「対馬の盆踊」「平戸のジャンガラ」など、北は岩手県から南は宮崎県まで全国に分布しています。
参考)ユネスコ無形文化遺産に登録!風流踊「郡上踊」と「寒水の掛踊」…
これらの踊りは地域社会の絆を深め、世代を超えて受け継がれてきた文化的伝統です。2009年に単独で登録されていた「チャッキラコ」に40件を追加する形で拡張登録され、計41件の伝統芸能として認定されています。各踊りは地域固有の歴史や風習を反映しており、祭礼の中で重要な役割を果たしています。
参考)日本の「風流踊」がユネスコ無形文化遺産へ…伝統的な盆踊りや念…
日本のユネスコ無形文化遺産には、祭りだけでなく「和食」も含まれており、2013年に登録されました。和食文化は陶器や食器と切り離すことができない関係にあります。日本の陶芸の歴史は縄文時代まで遡り、各地の風土を生かした独自の焼き物文化が発展してきました。
安土桃山時代には千利休による茶の湯文化が広まり、高級な茶碗を作る窯元が全国に誕生しました。現在でも有田焼、美濃焼、信楽焼、備前焼など、地域の名を冠した陶磁器が数多く存在します。日本の陶器は「もったいない」「わび・さび」といった自然との共生という精神性を体現しており、割れた器を金継ぎで修復する文化も独自のものです。
参考)伝統工芸から近代工芸へ
茨城県陶芸美術館では「和食と現代陶芸 -和食 世界無形文化遺産登録記念-」という展覧会も開催されており、和食と器との関わりをテーマに県内作家を中心とした現代陶芸作品が展示されました。このように、無形文化遺産としての祭りや和食文化は、陶器や食器という有形の文化財と密接に結びついているのです。
参考)和食と現代陶芸 -和食 世界無形文化遺産登録記念-
陶器文化は祭りという形でも継承されており、全国各地で陶器市や陶器祭りが開催されています。日本三大陶器祭りといわれるのは、佐賀県の「有田陶器市」、岐阜県の「土岐美濃焼まつり」、愛知県の「せともの祭」です。有田陶器市は1915年に始まり、毎年4月29日から5月5日まで開催され、約500を超える店が並び、全国から100万人を超える人出で賑わいます。
参考)日本三大陶器(有田陶器市・土岐美濃焼まつり・せともの祭)
これらの陶器祭りは、陶器の生産地で行われることが多く、地域の窯元や作陶家が多数出店するイベントです。個性的な作品から伝統的な器まで、様々な陶器や焼き物が並び、作家から直接作品について話を聞ける機会があることも魅力の一つです。栃木県の「益子春・秋の陶器市」や長崎県の「波佐見陶器まつり」なども人気が高く、春や秋のおだやかな季節に多くの陶器ファンが訪れます。
参考)陶器まつり|旬のもの|暦生活
陶芸技術そのものも無形文化財として保護されています。重要無形文化財保持者、通称「人間国宝」に認定された陶芸家たちは、歴史上または芸術上、特に価値の高い技を継承しています。この制度は1954年に確立され、日本の伝統的な技の保持者に対して認定措置が取られるようになりました。
参考)陶芸の人間国宝のわざ紹介 - 重要無形文化財等伝承事業「わざ…
陶芸とは土や石の粉から器を作り、約1250度という高温で焼き上げる土の芸術です。日本各地には鎌倉時代から続く「六古窯」(信楽窯、備前窯など)と呼ばれる優れた窯があり、それぞれの地域の風土と時代の流れに沿って発展してきました。人間国宝の陶芸家による作品は、その技術の高さから高額で取引される場合が多いですが、美術館や展示会などで実際の作品に触れることができます。
参考)陶芸について / (公社)日本工芸会東日本支部
石川県の九谷焼は1975年に通商産業省より伝統工芸品に認定され、翌1976年には石川県無形文化財に指定されました。こうした指定により、国や地方自治体は伝統的な技の継承を支援しており、日本の陶器文化は次世代へと受け継がれているのです。
参考)九谷焼とは - 漆陶舗あらき
文化庁の無形文化遺産ページ
無形文化遺産の制度や登録案件について詳しく解説されており、日本の無形文化遺産全22件の詳細情報を確認できます。
文化遺産オンライン 山・鉾・屋台行事
山・鉾・屋台行事を構成する全33件の祭りについて、各地域の特色や開催時期などの詳細情報が掲載されています。
ユネスコ無形文化遺産【風流踊】公式サイト
風流踊41件の一覧や各地域の踊りの特徴、開催情報などが網羅的にまとめられており、風流踊の魅力を知るための参考になります。