炻器(せっき)は、陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物で、「半磁器」や英語で「ストーンウェア」とも呼ばれます。鉄分が多い粘土を主原料とし、1200~1300℃の高温で長時間焼き締められることで、素地が非常に緻密になります。陶器のような温かみのある質感を持ちながら、磁器のように吸水性がほとんどないという両者の長所を併せ持っているのが特徴です。
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炻器の代表的な産地には、信楽焼、備前焼、常滑焼、萬古焼などがあり、日本の伝統的な焼き物として古くから親しまれてきました。特に萬古焼は耐熱性に優れており、国内の土鍋シェアの7~8割を占めるほど実用性が高い焼き物として知られています。
炻器は釉薬を使わず素材の質感を活かしたマットな仕上がりのものが多く、叩くと陶器よりもやや高めの音がするという特徴があります。耐熱性があるため電子レンジやオーブンに対応できるものが多く、食器洗浄機も使用可能で、日常使いに適した実用的な食器として人気を集めています。
参考)https://favorric.com/blogs/column/art-ceramics
炻器が電子レンジで使用できる最大の理由は、高温で焼き締められることによって素地が緻密になり、吸水性がほとんどない構造になっているためです。陶器の場合、素地に多くの気泡があり多孔質で水分を吸収しやすいため、電子レンジで加熱すると気泡内の水分が急激に膨張して割れる危険性があります。一方、炻器は磁器と同様に吸水性がなく、素地が堅牢に焼き締められているため、電子レンジの電磁波で食品を加熱しても器自体が破損しにくいのです。
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電子レンジは食材の中の水分を振動させて加熱する仕組みですが、陶器と磁器では電磁波に対する反応が異なります。磁器はガラス質を多く含み高温で焼き締められているため電子レンジに対応できますが、粘土でできた陶器は急激な温度変化に弱く割れやすい性質があります。炻器は陶器と磁器の中間に位置し、陶器よりも素地が緻密で耐熱性に優れているため、電子レンジでの使用に適しているのです。
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また、炻器は耐熱性が高く、電子レンジだけでなくオーブン(260℃まで)や食器洗浄機にも対応できるものが多く、実用性に優れています。冷蔵庫や冷凍庫での保冷(耐冷温度-20℃)も可能で、調理から保存、温め直しまで一つの器で完結できる利便性が魅力となっています。
参考)炻器 bowl(L 白)の通販 / マスターウォール
炻器、陶器、磁器は原料や焼成温度、性質が異なります。陶器は主に土を原料とし、1000~1300℃で焼成され、粒子が粗く吸水性が高いのが特徴です。磁器は石を主原料とし、1300~1400℃の高温で焼成され、粒子が細かく吸水性がほとんどありません。炻器はその中間で、土と石を混ぜた素材を1200~1300℃で焼成し、陶器よりも吸水性が低く、磁器よりも温かみのある質感を持ちます。
見分け方としては、いくつかのポイントがあります。素地の色では、陶器は茶色や黒など有色が多く、磁器は白色が基本です。炻器は陶器に近い有色の場合が多くなっています。質感では、陶器は柔らかくザラッとした風合いがあり、磁器は硬質で滑らかです。炻器は陶器のような温かみがありながら表面は比較的滑らかです。
光を透かしてみると、磁器は半透明で光を通しますが、陶器と炻器は不透明で光を通しません。叩いたときの音も違いがあり、陶器は低く鈍い音、磁器は金属的な高く澄んだ音がします。炻器は陶器よりやや高めの音がしますが、磁器ほど澄んではいません。電子レンジ対応については、陶器は基本的に非対応ですが、炻器と磁器は対応可能なものが多いという違いがあります。
炻器の最大の強みは、陶器の温かみと磁器の実用性を兼ね備えている点にあります。陶器は風合いが美しいものの電子レンジでの使用に制限があり、磁器は機能的ですが冷たい印象を与えることがあります。炻器は両者の良いところを取り入れた素材として、日常使いの食器に最適な選択肢となっています。特に、高温で焼き締められた炻器は素地が緻密で汚れが染み込みにくく、お手入れが簡単という点も大きなメリットです。
炻器は食洗機や乾燥機にも対応できる丈夫さを持ち、忙しい現代の生活スタイルに合った食器と言えます。陶器の場合は目止めという使い始めの下処理が必要な場合が多いですが、炻器は吸水性がほとんどないため目止めの必要がなく、購入後すぐに使い始められるという手軽さもあります。
参考)SyuRoの炻器(せっき) おしゃれなプレート・ボウル
また、炻器は耐熱性が高いため、オーブン料理をそのまま食卓に出すこともできます。グラタン皿や耐熱皿として炻器製品が多く作られているのは、この優れた耐熱性によるものです。冷凍庫での保存も可能なため、作り置き料理を炻器の器に入れて冷凍し、そのまま電子レンジやオーブンで温めて食卓に出すという使い方もでき、調理器具と食器の役割を兼ねた多機能性が魅力となっています。
参考)https://otonayaki.com/products/k02422
炻器を電子レンジで使用する際には、いくつかの重要な注意点があります。最も気をつけるべきは急激な温度変化です。炻器は耐熱性に優れていますが、冷蔵庫から出したばかりの冷たい器をすぐに電子レンジで加熱すると、温度差によって割れてしまう可能性があります。冷蔵庫から出した後は、しばらく常温に戻してから電子レンジを使用するようにしましょう。
参考)https://www.lecreuset.co.jp/products-stoneware.html
また、炻器に金銀の絵付けが施されている場合は、電子レンジでの使用は厳禁です。金属は電磁波を反射するため、電子レンジで使うと火花が散り、火災の危険性があります。金銀彩の器は電子レンジで使うと変色や剥がれの原因にもなるため、装飾のある炻器は必ず使用前に確認が必要です。
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電子レンジで加熱した後の器は非常に熱くなっている場合があるため、取り出す際にはミトンや布巾を使用して火傷に注意しましょう。特に、油分の多い料理や加熱時間が長い場合は器自体が高温になりやすいため、慎重に扱う必要があります。また、ヒビや欠けがある炻器を電子レンジで使用すると、そこから破損が広がる可能性があるため、使用前に器の状態を確認することも大切です。
炻器を電子レンジで温める際の基本手順は、まず器の状態を確認することから始まります。ヒビや欠けがないか、金銀の装飾がないかをチェックし、問題がなければ使用できます。冷蔵庫から出した器の場合は、常温に戻るまで10~15分程度待ってから使用するのが安全です。急激な温度変化は炻器であっても破損の原因になるため、この待ち時間は重要なポイントとなります。
参考)備前焼使い込みの極意!特徴の説明から使い始めの手入れ・洗い方…
食材を器に盛り付ける際は、電子レンジの加熱効率を考慮して、丸く平らな炻器の皿を選ぶと効果的です。電磁波は角に集まりやすい性質があるため、四角い器よりも丸い器のほうがまんべんなく温まります。深さのある器は立ち上がりが邪魔になって食品に電磁波が届きにくいため、温めには平らな器が適しています。
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加熱時間は、最初は短めに設定して様子を見ながら調整するのが基本です。冷凍や冷蔵の食材を温める場合は、まず1~2分程度で加熱し、その後食材の温まり具合を確認しながら時間を延ばしていきます。厚みのある炻器の場合は熱が器にも伝わるため、食材の水分量や量に応じて加熱時間を調整することが大切です。加熱後は器が熱くなっている可能性があるため、ミトンや布巾を使って慎重に取り出しましょう。
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炻器を電子レンジで使用する際の加熱時間は、食材の種類や量、器の厚み、電子レンジの出力によって異なります。一般的な目安として、冷蔵庫から出したご飯やおかずを温める場合は、500~600Wで2~3分程度が標準的です。冷凍した食材の場合は、解凍モードを使うか、200~300Wの低出力で5~7分程度かけてゆっくり温めると、器への負担を減らすことができます。
スープや汁物など水分が多い料理は、炻器の器で温める場合、1~2分程度の短時間加熱を繰り返す方法が安全です。水分が多いと蒸気が発生しやすく、器の表面温度が急激に上がる可能性があるため、こまめに様子を見ながら温めることが重要です。一度に長時間加熱するよりも、短時間の加熱を複数回行う方が、炻器にとっても食材にとっても優しい方法となります。
厚手の炻器と薄手の炻器では熱の伝わり方が異なるため、加熱時間の調整が必要です。厚手の炻器は熱が器に蓄積されやすく、取り出した後も器が熱い状態が続きます。一方、薄手の炻器は比較的早く温まりますが、熱が逃げるのも早いため、食材が冷めやすい傾向があります。自宅の炻器の特性を理解して、何度か試しながら最適な加熱時間を見つけることをおすすめします。
炻器を電子レンジで使用する際、最も注意すべきは温度差による破損です。耐熱性がある炻器でも、急激な温度変化には弱いという性質があります。冷蔵庫や冷凍庫から出した炻器をすぐに電子レンジで加熱すると、素地と釉薬の熱膨張率の違いから割れやヒビが入る可能性があります。そのため、冷たい器は必ず常温に戻してから使用することが鉄則です。
参考)301 Moved Permanently
特に冷蔵庫で冷やしたビアタンブラーなどの炻器に、常温の飲み物を入れる際も注意が必要です。冷えた器に温かい飲み物を注ぐと温度差で割れることがあるため、器と飲み物の温度をできるだけ近づけることが大切です。逆に、温かい飲み物を注いだ直後の器を冷水で洗うことも、急激な温度変化となり破損の原因になります。
JIS規格では、陶磁器に対する熱衝撃試験として120℃や140℃などの温度差に耐えられるかを確認する基準があります。炻器の耐熱温度差は一般的に180℃程度とされていますが、これは理論上の数値であり、実際の使用では余裕を持って扱うべきです。電子レンジで加熱した後は、器が冷めるまで待ってから洗う、冷蔵保存する場合は加熱直後ではなく常温まで冷ましてから冷蔵庫に入れるなど、温度変化を緩やかにする工夫が長持ちの秘訣です。
炻器を電子レンジで安全に使用するためには、使用前のチェックが欠かせません。まず、器にヒビや欠けがないかを確認します。小さなヒビでも電子レンジで加熱すると破損が広がる可能性があるため、損傷のある器は使用を避けるべきです。次に、金銀の装飾や上絵付けがないかをチェックします。装飾がある場合は電子レンジ対応かどうか説明書や購入時の情報を確認し、不明な場合は使用しない方が安全です。
参考)【陶芸入門】陶磁器の特徴~お手入れと使うときの注意点
器の温度状態も重要なチェックポイントです。冷蔵庫から出したばかりの器、または高温のオーブンから出したばかりの器は、必ず常温に戻してから電子レンジを使用します。器に水分が付着している場合は、軽く拭き取ってから使用することで、蒸気による急激な温度上昇を防ぐことができます。
加熱中と加熱後の注意事項として、次の点を確認しましょう。
定期的なメンテナンスも安全使用のポイントです。長期間使用している炻器は、目に見えない微細なダメージが蓄積している可能性があります。数年使用した器は、電子レンジでの使用頻度を減らすか、特に重要な器は電子レンジを避けて大切に使うことをおすすめします。
炻器を電子レンジで使用する際、食材の選び方にも注意が必要です。水分が極端に少ない食材は、電子レンジで加熱すると焦げやすく、器の一部が過度に加熱されて破損の原因になる可能性があります。乾燥した食材を温める場合は、少量の水を加えるか、ラップをかけて蒸気を閉じ込めることで、器への負担を軽減できます。
油分が非常に多い料理も注意が必要です。油は水よりも高温になりやすく、炻器の一部が局所的に高温になると熱が均一に伝わらず、温度差による破損リスクが高まります。油分の多い料理を温める場合は、短時間ずつ加熱して様子を見ながら温めることが大切です。
また、炻器を空の状態で電子レンジにかける「空焚き」は絶対に避けるべきです。食材や水分がない状態で加熱すると、器自体が過度に加熱されて割れる危険性が高まります。電子レンジは食材の水分を振動させて加熱する仕組みのため、必ず食材や液体が入った状態で使用しましょう。
参考)中に何も入っていないお皿だけを電子レンジで温めても大丈夫なの…
殻付きの卵や密閉容器に入った食材など、蒸気が逃げられない状態のものも炻器に入れて電子レンジで加熱するのは危険です。内部圧力が高まって破裂する可能性があり、器の破損だけでなく電子レンジ内部の損傷や怪我につながる恐れがあります。このような食材は、必ず穴を開けるか蓋を外した状態で加熱する必要があります。
炻器を購入する際、電子レンジ対応かどうかを見極めることは重要です。まず、商品の説明書やタグに「電子レンジ可」「電子レンジ対応」などの表示があるかを確認しましょう。多くの炻器製品には使用可能な調理器具が明記されており、電子レンジ、オーブン、食器洗浄機などの対応状況が記載されています。この表示がない場合は、販売店や作家に直接問い合わせることをおすすめします。
参考)https://syuro.shop/?pid=108463174
炻器であっても、すべてが電子レンジ対応というわけではありません。装飾や釉薬の種類、焼成方法によっては電子レンジに適さないものもあります。特に金銀の絵付けがある器、上絵付けが施されている器は電子レンジで使用できないため注意が必要です。購入前に器をよく観察し、装飾の有無を確認することが大切です。
参考)【うつわの取扱い】作家のうつわとの上手な付き合い方~電子レン…
信頼できるメーカーや産地の炻器を選ぶことも見極めのポイントです。萬古焼、信楽焼、備前焼、常滑焼などの伝統的な産地の炻器は、品質管理がしっかりしており、使用方法も明確に示されています。SyuRoやLE CREUSETなど、炻器製品で実績のあるブランドの商品は、電子レンジ対応の明記があり、安心して使用できます。
日本の主要な炻器の産地には、それぞれ特徴があります。信楽焼(滋賀県)は、鉄分を多く含んだ粘土を使用し、素朴で温かみのある質感が特徴です。釉薬を使わない焼き締めの技法が多く、耐熱性に優れているため電子レンジやオーブンに対応できる製品が多くあります。
参考)無印良品の土鍋を買いました(2010年) - RouxRil…
備前焼(岡山県)は、釉薬を一切使わず1200~1300℃の高温で焼き締められる炻器の代表格です。吸水性がほとんどなく丈夫な作りですが、電子レンジやガスコンロ、IH、直火での使用は推奨されていない場合が多いため、購入時の確認が必要です。備前焼は急激な温度差に弱い性質があるため、電子レンジ使用の際は特に注意が求められます。
萬古焼(三重県)は、耐熱性に非常に優れた炻器で、国内の土鍋シェアの7~8割を占めています。オーブン、電子レンジ、食器洗浄機に対応できる製品が多く、実用性の高さが魅力です。グラタン皿やパスタ皿など、調理から食卓まで一貫して使える器が豊富に揃っています。
参考)https://otonayaki.com/products/k00429a
常滑焼(愛知県)は、急須で有名な産地ですが、食器類も生産されています。炻器としての特性を活かした製品が多く、電子レンジには対応できる場合とできない場合があるため、購入時に確認が必要です。急須については、洗剤を使わず水やお湯で洗うことが推奨されており、吸着性があるため電子レンジの使用には注意が必要です。
参考)https://kitsusako-media.com/how-to-wash-kyusu-by-material/
SyuRoの炻器シリーズは、電子レンジ、オーブン(260℃まで)、食洗機(乾燥機)に対応しており、冷蔵庫・冷凍庫での保冷(耐冷温度-20℃)も可能です。プレートやボウルなど日常使いしやすいシンプルなデザインで、におい移りや汚れに強く、お手入れが簡単な点が人気の理由です。白と黒のカラー展開があり、和食にも洋食にも合わせやすいデザインが魅力となっています。
LE CREUSET(ル・クルーゼ)のストーンウェアは、耐熱性に優れ、電子レンジ、オーブン(260℃まで)でご使用できます。冷蔵庫、冷凍庫で保冷(耐冷温度-23℃)でき、耐熱温度差は180℃です。汚れや臭いが付きにくく、美しい発色と耐久性の高さで世界中で愛されています。豊富なカラーバリエーションがあり、食卓を華やかに彩る器として人気があります。
萬古焼の藍窯シリーズは、オーブン、電子レンジ、食器洗い洗浄機に対応した実用的な炻器です。グラタン皿やパスタ皿など、調理器具としても食器としても使える多機能性が特徴で、日本の伝統技術と現代の実用性を融合させた製品です。手作りのため一つ一つ表情が異なり、使い込むほどに味わいが増していきます。
ANCIENT POTTERYは、アンティークのようなディテールを持ちながら実用性の高い炻器です。電子レンジで温められるポットなど、デザイン性と機能性を両立した製品が揃っています。リーズナブルな価格帯でありながら品質が高く、初めて炻器を購入する方にもおすすめのブランドです。
参考)https://item.rakuten.co.jp/sixem-shop/601205/
炻器を選ぶ際は、形状とサイズが使い勝手に大きく影響します。電子レンジでの使用を考えると、丸い形状の器が最も効率的です。電磁波は角に集まりやすい性質があるため、四角い器よりも丸い器の方が食材が均一に温まります。また、深さのある器は立ち上がりが邪魔になって電磁波が届きにくいため、温める目的であれば平らな皿が適しています。
サイズ選びでは、電子レンジの庫内に収まるサイズであることが前提です。回転皿式の電子レンジの場合、器が大きすぎると回転の妨げになり、加熱ムラの原因になります。一般的な家庭用電子レンジでは、直径25cm以下の器が使いやすいサイズです。複数の料理を同時に温める場合は、小さめの器を複数用意する方が効率的です。
和食器と洋食器のどちらにも合うデザイン、料理を引き立ててくれるシンプルなカラー、重ねて収納しやすい形と大きさという3つのポイントを考慮すると、日常使いしやすい炻器を選ぶことができます。炻器は比較的重量があるため、持ちやすさも重要な選択基準です。縁が持ちやすい形状になっているか、重すぎないかを実際に手に取って確認することをおすすめします。
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炻器とプラスチック食器を比較すると、耐熱性と耐久性において炻器が優れています。プラスチック食器は軽量で割れにくいというメリットがありますが、電子レンジで繰り返し使用すると変形したり、臭いや色が移りやすいという欠点があります。炻器は吸水性がほとんどないため臭い移りに強く、高温にも耐えられるため、長期的に見ると衛生的で経済的です。
ガラス食器との比較では、炻器は保温性に優れているという利点があります。ガラスは熱伝導率が高く、温めた料理がすぐに冷めやすい傾向がありますが、炻器は素地が熱を蓄えるため、料理が冷めにくく温かい状態を保ちやすいです。また、炻器は落としても割れにくい丈夫さがあり、ガラス食器よりも日常使いに適しています。
参考)ココット皿のおすすめ人気ランキング【2025年】
金属製の器は電子レンジで使用できませんが、炻器は電子レンジ対応なので調理から食卓までシームレスに使えます。また、金属は急激な温度変化に対して酸や塩分に弱く錆びやすいですが、炻器は錆びることがなく、適切に扱えば長期間使用できます。
陶器と比較した場合、炻器は吸水性がほとんどないため目止めが不要で、電子レンジや食器洗浄機が使えるという実用性の高さが大きな違いです。陶器は風合いが美しいものの、シミや割れのリスクが高く扱いに気を遣いますが、炻器は陶器の温かみを持ちながら磁器のような丈夫さを兼ね備えているため、実用的な食器として優れた選択肢となります。
参考)繊細な絵付けと温かみのある色合いの精炻器のうつわ【ふくべ窯(…
炻器の日常的なお手入れは、使用後すぐに洗うことが基本です。炻器は吸水性がほとんどないため陶器ほど神経質になる必要はありませんが、色の濃い料理や油分の多い食材を盛り付けた後は、できるだけ早く洗うことで汚れの付着を防げます。中性洗剤と柔らかいスポンジを使って優しく洗い、研磨剤入りのスポンジやたわしは表面を傷つける可能性があるため避けましょう。
炻器は食器洗浄機や乾燥機に対応できるものが多く、日常的な洗浄が楽にできます。ただし、食器洗浄機を使用する際は、他の食器とぶつかって欠ける可能性があるため、配置に注意が必要です。特に繊細な装飾がある炻器や高価な器は、手洗いすることで長く美しい状態を保つことができます。
洗った後は、しっかりと乾燥させることが重要です。炻器は吸水性が低いとはいえ、完全に水を通さないわけではないため、濡れたまま長時間放置するとカビが生えたり臭いの原因になります。洗い終わったら布巾で水分を拭き取り、風通しの良い場所で自然乾燥させてから収納するのがベストです。梅雨時期など湿度の高い季節は、食器棚にしまわず表に出しておくか、乾燥材とともに保管すると良いでしょう。
炻器に茶渋やコーヒーの汚れが付いた場合、通常の洗剤で落ちないときは重曹を使った洗浄が効果的です。鍋に炻器が浸かる程度のお湯を入れ、重曹を1Lにつき大さじ2程度入れて沸騰させます。その中に炻器を入れて20分程度放置した後、しっかりとすすいでブラシなどで汚れを落とします。重曹は天然成分のため、器に洗剤成分が残る心配がなく、安心して使用できます。
頑固なシミには、ごく薄めたハイターなどの漂白剤を使用する方法もあります。ただし、漂白剤は強力な化学薬品のため、使用する際は必ず薄めて短時間だけ浸け置きし、その後十分にすすぐことが重要です。漂白剤を使った後は、念のため一晩水に浸けておくと、残留成分を完全に除去できます。
油汚れがひどい場合は、40~50℃程度のぬるま湯に中性洗剤を溶かして浸け置きすると効果的です。ぬるま湯は油を溶かしやすく、炻器への負担も少ないため、洗浄に適した温度です。ただし、熱湯を使うと急激な温度変化になる可能性があるため、ぬるま湯程度にとどめることが大切です。
炻器は磁器のように表面がツルツルではなく、わずかに凹凸がある場合があります。そのため、細かい汚れが溝に入り込むことがありますが、歯ブラシなど柔らかいブラシを使って丁寧にこすることで、傷をつけずに汚れを落とすことができます。
炻器は陶器と異なり、基本的に目止めの必要はありません。目止めとは、陶器の素地にある細かい気孔を米のとぎ汁や片栗粉などのデンプン質で埋める作業で、吸水性を抑えて汚れやシミの付着を防ぐために行います。しかし、炻器は高温で焼き締められているため素地が緻密で、吸水性がほとんどないため、この目止めという工程は不要です。
参考)器のお手入れ方法
陶器の場合、目止めをしないと色の濃い料理や油分が素地に染み込み、シミやカビの原因になります。一方、炻器は素地が緻密に焼き締まっているため、水分や油分が染み込みにくく、購入後すぐに使い始めることができます。この手軽さが、炻器が日常使いの食器として人気がある理由の一つです。
ただし、炻器の中でも貫入(表面にできる細かいひび模様)が入っているものは、わずかに吸水性がある場合があります。貫入は釉薬と素地の収縮率の違いによって生じるもので、デザインとして楽しまれることも多いですが、その隙間から水分が入り込む可能性があります。貫入のある炻器は、使用後はしっかり乾燥させることが大切です。
作家によっては、炻器でも目止めを推奨する場合がありますが、これは作品の特性によるものです。購入時に作家や販売店から目止めの指示がある場合は従い、特に指示がなければ目止めなしで使用して問題ありません。目止めをすることでカビの原因になるという意見もあるため、不要な作業は避けた方が良いでしょう。
参考)陶器の目止めについて器が好きで色々と集めています。目止めにつ…
炻器の保管方法は、まず完全に乾燥させることが大前提です。洗った後は布巾で水分を拭き取り、少なくとも半日から一日程度は風通しの良い場所で自然乾燥させてから食器棚にしまいます。水分が残った状態で収納すると、湿気がこもってカビやシミの原因になるため、特に梅雨時期や湿度の高い時期は注意が必要です。
炻器を重ねて収納する際は、器同士が直接触れないように、間に布やキッチンペーパーを挟むと傷を防げます。炻器は丈夫な素材ですが、硬いもの同士がこすれると表面に細かい傷がつき、そこから汚れが入り込みやすくなります。特に高価な器や気に入っている器は、個別に保護して保管することをおすすめします。
梅雨時期は湿度が上がり、長期間湿気に触れることで炻器にカビが生えたり欠けたりする原因になります。この時期は食器棚にしまわず、常に表に出しておくか、しっかりと乾かして乾燥材とともに箱にしまっておくことが推奨されます。食器棚の中も定期的に換気し、湿気がこもらないようにすることが大切です。
長期間使用しない炻器は、新聞紙やエアキャップで包んで保管すると安全です。その際、必ず完全に乾燥させてから包み、密閉容器ではなく通気性のある箱に入れることで、湿気による劣化を防ぐことができます。年に一度は取り出して状態を確認し、必要であれば洗って乾かし直すことで、長期的に良好な状態を保つことができます。
炻器の寿命を延ばすためには、急激な温度変化を避けることが最も重要です。冷蔵庫から出してすぐに電子レンジで加熱する、熱い器を冷水で洗う、オーブンから出してすぐに冷たい場所に置くなど、短時間での大きな温度差は炻器に負担をかけ、ひび割れの原因になります。常に温度変化を緩やかにすることを心がけましょう。
電子レンジやオーブンでの過度な使用も避けるべきです。炻器は耐熱性に優れていますが、頻繁に高温にさらされると素地や釉薬にダメージが蓄積します。特に長時間の加熱や高温での使用は、できるだけ控えめにすることで器の寿命を延ばせます。日常的な温め程度であれば問題ありませんが、毎日長時間オーブンで使うような用途には、耐熱専用の器を使う方が安心です。
使用後の洗浄では、硬いスポンジやたわしを避け、柔らかいスポンジと中性洗剤を使うことが大切です。研磨剤入りの洗剤は表面に細かい傷をつけ、そこから汚れが入り込んだり、強度が低下する原因になります。炻器の表面を丁寧に扱うことで、美しい状態を長く保つことができます。
定期的に器の状態をチェックすることも寿命を延ばすコツです。小さなヒビや欠けを早期に発見できれば、その器を電子レンジやオーブンでの使用から外すことで、破損事故を防げます。ヒビのある器は普段使いの冷たい料理用として使い、電子レンジには健全な器だけを使うという使い分けが安全です。大切な炻器は金継ぎなどの修復技術を使って修理することで、さらに長く愛用することができます。
参考)https://onlineshop.rigan.jp/ko/pages/%E3%81%8A%E6%89%8B%E5%85%A5%E3%82%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
陶器と電子レンジの関係性について、基本的な知識と注意点がまとめられています(陶器の基礎知識の参考)
陶器、磁器、炻器の違いと見分け方、種類と特徴とお手入れ方法について詳しく解説されています(炻器の分類と特徴の参考)
備前焼の使い込みの極意と、炻器の特性を活かした手入れ方法が紹介されています(炻器のお手入れ実践の参考)
LE CREUSETのストーンウェアの特長と使用方法、耐熱温度や保冷温度などの詳細情報が記載されています(炻器製品の仕様の参考)