短鎖脂肪酸効果で腸内環境改善と健康維持

短鎖脂肪酸は腸内細菌が作る健康成分で、腸内環境を整えるだけでなく、肥満予防や免疫機能の向上など全身の健康に影響します。食物繊維やオリゴ糖から産生される短鎖脂肪酸の効果とは一体何でしょうか?

短鎖脂肪酸の効果

短鎖脂肪酸がもたらす健康効果
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腸内環境の改善

腸内を弱酸性に保ち悪玉菌の増殖を抑制、善玉菌優勢の腸内フローラを実現します

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肥満予防効果

脂肪の蓄積を抑制し、エネルギー代謝を促進することで太りにくい体質づくりをサポートします

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免疫機能の調整

免疫細胞の働きを整え、アレルギー反応を抑制する効果が期待されています

短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を分解する際に産生する有機酸の総称で、主に酢酸、プロピオン酸、酪酸の3種類があります。炭素数が6つ以下の脂肪酸を指し、腸内環境の改善から全身の健康維持まで幅広い効果を発揮する物質として注目されています。
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腸内で善玉菌であるビフィズス菌や酪酸菌が優勢な状態では、食物繊維などの難消化性炭水化物を餌として短鎖脂肪酸が活発に産生されます。この短鎖脂肪酸は大腸の上皮細胞から吸収された後、血流に乗って全身を巡り、様々な臓器や組織に作用することで健康効果を発揮します。
参考)腸のバリア機能を高めるほか、脂肪の蓄積抑制作用も?! 今話題…

近年の研究では、短鎖脂肪酸が単に腸の健康を保つだけでなく、肥満の予防、免疫機能の調整、コレステロールの合成抑制、さらには糖尿病や生活習慣病の予防にも関与している可能性が示されています。
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短鎖脂肪酸の腸内環境改善効果

 

短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性に保つことで、酸性に弱い悪玉菌の増殖を抑制し、発がん性のある腐敗物質の発生を防ぎます。善玉菌によって産生された短鎖脂肪酸は、腸内のpHバランスを整えることで善玉菌が優勢な腸内フローラを維持する環境を作り出します。​
また、短鎖脂肪酸には腸内の免疫機能を活性化させる働きがあり、細菌やウイルスによる感染を予防する効果も報告されています。腸管には体内の免疫細胞の約70%が集中しているため、短鎖脂肪酸による免疫機能の向上は全身の健康維持に直結します。
参考)短鎖脂肪酸で腸内環境を整える 免疫力向上のススメ

さらに、短鎖脂肪酸は腸のぜん動運動を活発にすることで、腸内の内容物をスムーズに先へ送り出し、排便を促進します。この働きにより自然な快便がもたらされ、便秘の予防・改善効果が期待できます。​
短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、大腸の上皮細胞の主要なエネルギー源として利用され、大腸が正常に機能するために欠かせない存在です。酪酸が不足すると腸のバリア機能が低下し、様々な健康問題につながる可能性があります。​

短鎖脂肪酸の肥満予防とダイエット効果

短鎖脂肪酸には、食欲のコントロール、脂肪蓄積の抑制、脂質やブドウ糖の代謝促進という3つの作用があり、これらが総合的に働くことで肥満を防ぐ効果を発揮します。腸内で産生された短鎖脂肪酸は血流に乗って全身を巡り、様々な臓器に作用することでエネルギー代謝を調整します。
参考)短鎖脂肪酸とは?太りにくい体を作るアンサーはタンサ|江崎グリ…

酢酸は白色脂肪細胞に作用し、脂肪組織への過剰なエネルギー取り込みをブロックすることで、脂肪の蓄積を抑制します。白色脂肪細胞には酢酸を感知するセンサーがあり、血液によって運ばれた酢酸をキャッチすると、脂肪細胞への栄養取り込みを制限する仕組みが働きます。​
酪酸は交感神経に作用して心拍数や体温を上昇させ、安静時のエネルギー消費量を高めることで脂肪を消費しやすい状態を作り出します。この作用により、運動をしていない時でもエネルギーが消費されやすくなり、太りにくい体質づくりをサポートします。​
短鎖脂肪酸は腸管にある内分泌細胞から分泌されるホルモンの調整にも関与しており、摂食中枢に作用して食欲をコントロールする働きも持っています。肥満体型の人は標準体型の人と比較して短鎖脂肪酸の産生量が少ないという研究報告もあり、腸内環境を整えて短鎖脂肪酸を増やすことが健康的なダイエットの鍵となります。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000015042.html

短鎖脂肪酸とコレステロール・糖尿病予防

短鎖脂肪酸には肝臓でのコレステロール合成を抑制する働きがあり、血中コレステロール値の低下に貢献します。腸内での短鎖脂肪酸の濃度が高まると、肝臓におけるコレステロール合成酵素の働きが阻害され、結果として血中コレステロールが低下することが報告されています。
参考)短鎖脂肪酸とは?4つの働きと体内で増やす方法を解説|フラクト…

水溶性食物繊維を摂取することで血中コレステロールが低下するメカニズムの一つとして、腸内で短鎖脂肪酸が産生されることが関係していると考えられています。特に海藻類や大麦などに含まれる水溶性食物繊維は、善玉菌によって分解されやすく、効率的に短鎖脂肪酸を産生できます。​
2型糖尿病の予防や改善に関しても、短鎖脂肪酸の効果が期待されています。短鎖脂肪酸は受容体であるGPR41やGPR43に結合し、インスリン分泌を促進するグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の発現を増加させます。GLP-1はすい臓のインスリンを出す細胞を保護しつつインスリンの分泌を促すため、血糖値のコントロールに役立ちます。
参考)https://kpsl.jp/service-list/lc-ms/scfa

2型糖尿病患者の便中短鎖脂肪酸濃度は健常人と比較して低下しているという研究結果があり、短鎖脂肪酸の産生を増やすことが糖尿病の予防や症状改善につながる可能性が示唆されています。食物繊維を積極的に摂取することで腸内細菌による短鎖脂肪酸の産生が促進され、糖尿病リスクの低減効果が期待できます。
参考)「腸内細菌」が糖尿病や肥満のリスクを低下 食物繊維から短鎖脂…

「腸内細菌」が糖尿病や肥満のリスクを低下(糖尿病ネットワーク)
糖尿病予防における短鎖脂肪酸と腸内細菌の役割について詳しく解説されています。

 

短鎖脂肪酸の免疫機能とアレルギー抑制効果

短鎖脂肪酸は免疫システムの調整役として働き、過剰な免疫反応を抑制することでアレルギー症状の緩和に貢献します。特にプロピオン酸や酪酸は免疫細胞に働きかけ、アレルギー反応の中心である免疫グロブリンEを減少させる効果があることが報告されています。
参考)短鎖脂肪酸がアレルギーを抑制する作用機構を解明~アレルギーに…

短鎖脂肪酸はマスト細胞の活性化を抑制する作用を持ち、食物アレルギー、喘息、鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎など、マスト細胞が関与する様々なアレルギー症状に対して効果が期待されています。動物実験では、短鎖脂肪酸がアナフィラキシー反応を抑制することも確認されており、直接的なアレルギー反応の抑制メカニズムが解明されつつあります。
参考)肥満予防や腸内環境の改善だけじゃない!「短鎖脂肪酸」がアレル…

酪酸は制御性T細胞という免疫細胞を増やす働きがあり、アレルギーや炎症といった過剰な免疫反応を抑えます。また、短鎖脂肪酸は抗炎症性サイトカインであるIL-10を増加させることで、免疫システムのバランスを整え、アレルギー反応を抑制することが報告されています。
参考)腸活のポイントは「短鎖脂肪酸」!

腸内で産生された短鎖脂肪酸は腸管バリア機能を強化し、腸壁の粘膜細胞を修復することで、アレルギーを引き起こす物質が体内に侵入しにくい環境を作ります。腸内環境を整えて短鎖脂肪酸の産生を増やすことは、アレルギー予防の観点からも重要です。
参考)短鎖脂肪酸普及協会

短鎖脂肪酸がアレルギーを抑制する作用機構(東京理科大学)
短鎖脂肪酸がマスト細胞に作用してアレルギーを抑制する最新の研究成果が紹介されています。

 

短鎖脂肪酸を増やす食品と食生活のポイント

短鎖脂肪酸は食品から直接摂取するのが難しく、胃や小腸で吸収されてしまうため大腸までほとんど届きません。そのため、腸内で短鎖脂肪酸を産生する善玉菌を増やし、その餌となる食物繊維やオリゴ糖を積極的に摂取することが重要です。​
水溶性食物繊維は善玉菌が特に好む栄養源で、海藻類、大麦、オクラ、芋類、果物類などに多く含まれています。根菜類やきのこ類も水溶性食物繊維を豊富に含むため、普段の食事に1品追加することがおすすめです。穀類やイモ類を冷やすことで生成されるレジスタントスターチも、水溶性と不溶性両方の性質を持ち、善玉菌の餌となって短鎖脂肪酸の産生を促進します。​
オリゴ糖も善玉菌の餌となり、特にビフィズス菌がオリゴ糖をエサにすると酢酸の産生が増加します。オリゴ糖は玉ねぎ、ごぼう、大豆、バナナ、はちみつなどに多く含まれています。
参考)https://yohwakai.com/newsletter/66_20210115/07.pdf

善玉菌そのものを増やすためには、ヨーグルト、納豆、ぬか漬け、キムチ、味噌などの発酵食品を日常的に摂取することが効果的です。ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌などの善玉菌は腸内に棲み着かないため、毎日継続して摂取する必要があります。​
不溶性食物繊維は短鎖脂肪酸の産生効果は水溶性ほど高くありませんが、腸を刺激してぜん動運動を活発にし、便通を促すことで腸内環境を整える働きがあるため、水溶性食物繊維と合わせて摂取することが理想的です。穀類、豆類、ゴボウ、モロヘイヤ、きのこ類、切干大根などに多く含まれています。​

食品カテゴリ 代表的な食品例 短鎖脂肪酸への効果
発酵食品 ヨーグルト、納豆、ぬか漬け、キムチ、味噌 善玉菌を直接摂取でき、短鎖脂肪酸の産生菌を増やす
水溶性食物繊維 海藻類、大麦、オクラ、芋類、果物類 善玉菌の餌となり、短鎖脂肪酸の産生を促進
オリゴ糖含有食品 玉ねぎ、ごぼう、大豆、バナナ、はちみつ ビフィズス菌の餌となり、酢酸の産生を増やす
不溶性食物繊維 穀類、豆類、ゴボウ、きのこ類、切干大根 腸のぜん動運動を促進し、腸内環境を整える

短鎖脂肪酸とは?|善玉菌にうれしい発酵性食物繊維(ミツカン)
短鎖脂肪酸を増やすための具体的な食品選びと食生活のポイントが紹介されています。