スコリアと軽石は、どちらも火山の噴火によって生まれた多孔質の火山砕屑物ですが、その性質は大きく異なります。最も基本的な違いは、形成される際のマグマの種類にあります。スコリアは玄武岩質マグマから、軽石は安山岩質~流紋岩質マグマから形成されることが多く、この違いが色や密度、用途に大きく影響します。
参考)用語の説明
両者を区別する最もわかりやすい特徴は色調です。スコリアは黒色や赤褐色など暗色系の色を呈し、軽石は白色や黄色など淡色系の色をしています。この色の違いは、含まれる鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の酸化物の量によって決まります。鉄やマグネシウムの含有量が多いほど、岩石は黒っぽくなるため、スコリアは暗色になります。
参考)https://kazan.or.jp/J/QA/topic/topic41.html
もう一つの重要な違いは密度です。軽石は気泡が多く見かけ上の比重が水より軽いため、水に浮くことができます。一方、スコリアは比較的重い鉄を多く含んでいるため全体的に重く、水に沈みやすい性質があります。この密度の差は、マグマに含まれる二酸化ケイ素(SiO2)の割合と関連しています。
参考)園芸資材としてのスコリア - saitodev.co
スコリアは、主に玄武岩質マグマの噴出によって形成される多孔質の火山砕屑物です。玄武岩質マグマは、二酸化ケイ素(SiO2)の含有量が52%以下と比較的少なく、その代わりに鉄やマグネシウムといった重い成分を多く含んでいます。
参考)軽石とスコリアは何で区別するんですか?? - Clearno…
噴火の際、地下深部から上昇するマグマは減圧されることで、マグマに溶解していた水蒸気や二酸化炭素などの揮発性成分が発泡します。この火山ガスで泡立ったマグマが、そのまま冷えて固まったものがスコリアです。噴煙の中で急激な酸化や冷却が起きることで、スコリア特有の多孔質構造が形成されます。
参考)軽石 - Wikipedia
スコリアの色は黒色、灰色、赤褐色など様々ですが、これは鉄の酸化状態によって変化します。鉄が酸化第二鉄(Fe2O3)になっていれば赤くなり、酸化第一鉄(FeO)だと黒くなります。長時間高温で酸化した場合は赤褐色を呈することが多く、噴火時の条件によって色調が決まります。
参考)構造色がつくる輝く火山噴出物
軽石は、主に流紋岩質~安山岩質マグマの噴出によって生じる火山砕屑物です。これらのマグマは二酸化ケイ素の含有量が高く、スコリアの元となる玄武岩質マグマよりも粘り気が大きいという特徴があります。この粘性の高さが、軽石独特の性質を生み出す要因となっています。
参考)https://www.gsj.jp/Muse/event/archives/src/tephra_leaflet.pdf
噴火の際、マグマは地下深部から上昇する過程で減圧され、溶解していた揮発成分が発泡します。粘り気の大きいマグマでは、発泡した気泡が閉じ込められやすく、多孔質でありながらも気泡の壁が比較的厚い構造になります。この構造により、軽石は見かけ上の比重が水よりも軽くなり、水に浮く性質を持つようになります。
軽石の性状はガラス質で壊れやすく脆い特徴があります。色は白色、黄色、灰色など淡色系が主で、これは鉄やマグネシウムの含有量が少ないためです。ただし、水面に浮かぶ軽石も、波による摩耗で小さくなったり、気泡に水が浸水したりすることで、徐々に沈下していきます。
スコリアと軽石の最も顕著な物理的違いは、その密度にあります。軽石は多くの気泡により見かけ上の比重が水(1.0 g/cm³)より軽いものが多く、そのため水に浮く性質があります。一方、スコリアは比較的重い鉄を多く含むため、全体的に密度が高く水に沈みやすい傾向があります。
| 特性 | スコリア | 軽石 |
|---|---|---|
| 密度 | やや高い(水に沈む) | 低い(水に浮く) |
| 色調 | 黒色、赤褐色、灰色 | 白色、黄色、灰色 |
| 表面の質感 | 凹凸が多い | ガラス質で脆い |
| 主な成分 | 鉄、マグネシウムが多い | 二酸化ケイ素が多い |
軽石とスコリアの物性は、人工軽量骨材に似た特徴を持っています。例えば、代表的な人工軽量骨材であるメサライトの絶乾密度は約1300kg/m³ですが、天然の軽石やスコリアもこれに近い範囲の密度を示します。この特性により、両者とも建築材料や園芸資材として幅広く利用されています。
参考)https://garden-crete.com/pdf/shizenhatochinochikara_2.pdf
硬度についても両者には違いがあります。スコリアは鉄を多く含むため硬度があり、軽石よりも強固な構造を持っています。一方、軽石は脆く壊れやすい性質があるため、用途によって使い分けが必要です。ただし、軽石の中でも日向土(ボラ土)と呼ばれる種類は、一般的な軽石よりも硬度が高く、鹿沼土よりも硬い性質を持っています。
参考)軽石とは?特徴・種類や使い方などをわかりやすく解説します│広…
スコリアと軽石を見分ける最も簡単な方法は、色調を観察することです。基本的には、赤色から黒色ならばスコリア、黄色から白色ならば軽石と判断できます。この色の違いは、鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)の酸化物の含有量によって生じます。鉄やマグネシウムの含有量が多いと赤色から黒色になり、少ないと白色から黄色になります。
灰色のものについては、色だけでは判別が難しい場合があります。そのような場合は、成分分析による判別が有効です。二酸化ケイ素(SiO2)の含有量が52%以下であれば玄武岩質マグマ由来のスコリア、それ以上であれば安山岩質以上のマグマ由来の軽石と判断できます。
もう一つの判別方法は、水に浮くかどうかを確認することです。軽石は気泡が多く見かけ上の比重が水より軽いため、水面に浮きます。一方、スコリアは重い鉄分を多く含むため、水に沈む傾向があります。ただし、軽石でも気泡に水が浸水すると沈むようになるため、この方法は新鮮な試料に対してのみ有効です。
表面の質感も判別のポイントになります。スコリアは軽石よりも凹凸が多く、ゴツゴツとした外観を持っています。一方、軽石はガラス質で比較的滑らかな表面をしており、触った感触が異なります。また、硬度にも差があり、スコリアの方が硬く、軽石は脆く壊れやすい性質があります。
参考)お庭づくりで使いたい!「スコリア」という砕石素材もおすすめで…
スコリアは、その多孔質な構造と物理的特性を活かして、様々な分野で利用されています。最も一般的な用途の一つが園芸資材としての利用です。スコリアは多孔質性により排水性と通気性に優れており、土壌改良材として広く使用されています。ホームセンターでは「赤スコリア」として販売されており、庭づくりの資材としても人気があります。
建築分野では、スコリアは軽量骨材として利用価値が高く評価されています。スコリアを用いた軽量コンクリートブロックは、通常のコンクリートよりも密度が低く、地震時の建物性能向上や財政的負担の軽減に貢献します。また、スコリアは硬度が高く強固な構造を持つため、圧縮強度に優れた軽量コンクリートを製造できます。
参考)https://www.mdpi.com/2075-5309/7/1/2/pdf?version=1482746584
スコリアの色調も重要な特徴の一つです。赤茶色のスコリアは、コンクリートや砕石などの無機質な白やグレーが多いお庭に、自然な色のアクセントを加えることができます。火山の噴出物という自然素材でありながら、装飾性も兼ね備えているため、ガーデニングや造園において重宝されています。
軽石は、その軽量性と多孔質構造により、古くから様々な用途で利用されてきました。最も身近な用途としては、かかとの角質ケアに使用する美容用品が挙げられます。昔のお風呂場には石鹸大の軽石が置かれており、足のかかとの角質層を削るために使われていました。
園芸分野では、軽石は非常に重要な資材として広く活用されています。その主な用途は以下の通りです。
軽石の園芸資材としての価値は、その物理的特性に由来します。多くの気泡により浮遊性が高く、排水性や通気性、保水性に優れているため、観葉植物の生育環境を整えるのに最適です。また、断熱性や遮音性も高いという特徴があり、用途の大部分は建築材料として使用されています。
人工軽石としてパーライトも広く利用されています。これは黒曜石という火山ガラスを熱して作られた人工素材で、土壌改良や断熱材として用いられています。園芸店ではセントポーリアの土などとして入手でき、天然軽石と同様の用途で活用されています。
特殊な軽石として日向土(ボラ土)があります。これは鹿沼土よりも硬度があり、通常の軽石よりも柔らかい性質を持つ軽石の一種です。水に浮く一般的な軽石と異なり、内部まで水が通過できる性質があるため水に入れると沈みます。また、酸性に傾く鹿沼土と異なり、酸度は中性であるため、幅広い植物に使用できます。
<参考リンク>
スコリアと軽石の成分や形成過程について詳しく知りたい方は、日本火山学会の公式ページに専門的な解説があります。
日本火山学会 - スコリア・軽石の解説
国土地理院の用語解説では、火山砕屑物の分類や特徴について詳しく説明されています。