沈み込み帯火山なぜ発生メカニズム鉱石資源

沈み込み帯で火山が形成されるのはなぜでしょうか。プレート沈み込みによる水の供給と圧力変化がマグマを生み出すメカニズムについて、鉱石資源との関係も含めて詳しく解説します。火山と鉱物資源の深い関係に興味がありませんか?

沈み込み帯火山なぜ発生するか

沈み込み帯で火山が生まれる理由
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プレートの沈み込み

海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことで、水と熱が地球深部へ運ばれます

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水による融点降下

含水鉱物から放出された水がマントルの岩石を溶けやすくし、マグマが発生します

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火山フロント形成

深さ100km付近でマグマが発生し、海溝と平行な火山列が形成されます

沈み込み帯プレート境界のメカニズム

沈み込み帯は、密度の高い海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所で、地球上で最も地震や火山活動が活発な地域です。海洋プレートが沈み込むことにより、プレート上面に含まれる水が地球深部へと運ばれていきます。この沈み込むプレートは1年で数cmの速度でマントルに沈み込み、海溝やトラフを作り出します。

 

参考)NO3.火山フロントと沈み込み帯

プレート境界では、沈み込むプレートによってマントルウェッジ(沈み込んだプレートとモホ面に挟まれたクサビ状の部分)に対流が生じます。この対流により、高温のマントル物質が沈み込むプレート上部へと運ばれ、マグマ生成の場が形成されるのです。マントルウェッジには沈み込んだプレートにほぼ平行な低速度域が連続的に存在し、この領域がプレートの沈み込みによって誘発された二次対流の上昇流部分と考えられています。

 

参考)沈み込み帯の構造とマグマ生成・上昇

海洋プレートには、海溝の手前で折り曲げるような力が働き、多数の断層(亀裂)が形成されます。そこを伝って水がプレート内部に入り込み、その一部は海洋地殻を通過してマントルまで染み込むと考えられています。この水の存在が、沈み込み帯における火山活動の鍵を握っているのです。

 

参考)なんと、マグマ活動の鍵を握るのは「マントルまで染み込んだ水」…

沈み込み帯マグマ発生と水の役割

沈み込み帯で火山が形成される最大の理由は、プレートが持ち込む水の存在です。海洋プレート上面には、海水と反応して水を含む鉱物が多数形成されています。特に蛇紋石と呼ばれる含水鉱物は、マントルに大量の水を運ぶ重要な役割を果たしています。

 

参考)マグマのでき方2:沈み込み帯のマグマ

プレートが深部に沈み込むにつれて、高温・高圧にさらされるようになり、含水鉱物から水が徐々に染み出してきます。この脱水反応は、一定の温度と圧力の条件がそろったときに起こり始めます。従来は深さ100〜150km付近で脱水反応が起こると考えられていましたが、最新の研究では、スラブ中部付近での脱水反応は従来の説よりも50-100km深いところで起こることが分かってきました。

 

参考)沈み込み帯スラブがマントル遷移層に水を供給することを解明 -…

水の存在によって岩石が溶け始める温度(融点)は大幅に下がります。通常、マントルの温度は固体を保っていますが、水が供給されることで融点が低下し、周囲の岩石よりも融けやすい状態が生まれます。この加水による融点降下と、上昇に伴う減圧という二重の効果により、マントルウェッジの中で岩石の融解が起こりやすくなるのです。

 

参考)Magma (Japanese)

こうして生まれたマグマは周囲の岩石より軽いため、浮力により上へ上へと上昇していき、最終的に地表に達して火山を形成します。沈み込み帯のマグマには数パーセントの水が含まれており、この水分が火山活動の特徴を決定する重要な要素となっています。

沈み込み帯火山フロント深さ100kmの秘密

火山フロントとは、沈み込み帯において海溝と平行に並ぶ火山列の、海溝側の境界を結ぶ線のことです。興味深いことに、世界中の沈み込み帯において、火山フロント直下のプレートの深さはほぼ100〜150km付近で共通しています。

 

参考)FAQ 地質環境の長期安定性に関する研究 東濃地科学センター

この深さが特別な意味を持つ理由は、含水鉱物の脱水反応が起こる深さと密接に関係しています。水は海洋底堆積物の粒間に保持されたり、含水鉱物の形でプレートの沈み込みとともにマントル内に持ち込まれます。深さ100kmを超えるような深度への水の持ち込みのほとんどは含水鉱物が担っていると考えられており、この深さで大規模な脱水反応が起こることで、マグマ生成に必要な水が供給されるのです。

 

参考)https://kazan-g.sakura.ne.jp/J/QA/topic/topic7.html

火山フロントの位置を決めているのは、海溝からの距離ではなく、その下に沈み込んだスラブ上面の深さです。どの沈み込み帯でもスラブが地下100km付近まで沈み込んだところの直上に火山フロントができるという規則性があります。この深さより浅い場所で放出された水は、地温が十分に高くないためマグマを造ることができず、そのまま上昇して地殻の弱線である断層などに沿って地表に達すると考えられています。

 

参考)なぜ東北の火山分布は「すき間だらけ」なのか…その謎を解く、驚…

P波トモグラフィーの観測によれば、火山フロント近くでマグマ噴出量が最大となり、顕著な低速度領域が深さ75〜100km付近に見られることが明らかになっています。これは、この深さでマグマが活発に生成されていることを裏付ける証拠となっています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kazan/46/6/46_KJ00001052980/_pdf

沈み込み帯マントル温度圧力条件の複雑性

マグマが発生するためには、温度と圧力の微妙なバランスが重要です。地球深部のマントルは高温ですが、同時に高い圧力がかかっているため通常は固体を保っています。高温のマントルが浅い場所に上昇すると圧力が下がって液体、つまりマグマとなります。

沈み込み帯では、冷たい海洋プレートが沈み込んでいるため、火山帯の下のマントルもプレート境界付近では冷やされています。それにもかかわらずマグマができるのは、水による融点降下効果が極めて大きいためです。マントルの温度が一般的な溶融温度より低い固体の状態でも、水の供給により岩石が溶け始める温度が大幅に下がり、マグマ生成が可能になるのです。

最近の研究では、沈み込むプレート内の含水鉱物の振る舞いについて新たな発見がありました。従来は「水が優先的にカンラン石に含まれ、その溶解度を超えた時に含水鉱物が生成する」と考えられていましたが、実際には「水が含水鉱物に吸い取られ、カンラン石には全く含まれない」という正反対の結果が得られています。

 

参考)https://research.ehime-u.ac.jp/post-ja/post-1450/

さらに、蛇紋石の一種であるアンチゴライトは、圧力が増加するにつれて組成・構造が変化し、高圧下で徐々に脱水する可能性があることが示されています。このような複雑な鉱物の変化と脱水プロセスが、深さに応じた段階的な水の放出を引き起こし、マグマ生成領域の形成に寄与していると考えられます。

沈み込み帯火山と鉱石資源の密接な関係

🏔️ 火山活動と鉱物資源の形成には深い関係があり、特に沈み込み帯に形成される火山は貴重な金属鉱床の宝庫となっています。

 

参考)噴火の履歴から地球内部の営みを探る

火山の地下には、資源として活用できる元素や鉱物資源が沈殿している「金属鉱床」が多く存在します。国内の金属鉱床の多くは熱水鉱床と呼ばれるもので、マグマから分離した水や、マグマに熱せられた地下水が周囲の岩石と反応し、金属資源が沈殿するなどして形成されています。つまり、火山の地下ではリアルタイムに金属鉱床が作られているのです。

沈み込み帯では、プレートとともに海底堆積物や海洋地殻の成分が地球深部へ運ばれます。これらの物質には銅、金、銀、鉛、亜鉛などの金属元素が含まれており、マグマの生成過程でこれらの元素が濃集されます。マグマが上昇する過程で、揮発性成分とともに金属元素が分離し、周囲の岩石中に沈殿することで鉱床が形成されるのです。

 

参考)沈み込み帯 - Wikipedia

また、プレート境界のマントルと炭素の相互作用も注目されています。西南日本のような暖かい沈み込み帯では、炭素が溶け込んだ流体が大量に放出され、プレート境界の上盤マントルと反応して炭酸塩鉱物と滑石からなる層が形成されることが明らかになっています。このような化学反応により、プレート境界では様々な鉱物が生成され、一部は火山活動を通じて地表近くまで運ばれます。

 

参考)沈み込む炭素がプレート境界のマントルを弱くすることを発見

近年では、海山の沈み込みが特異な火山活動を引き起こすことも分かってきました。海山が沈み込むと、その熱的、化学的影響により、通常では火山活動が起こりえない海溝に近い場所でも火山が形成される可能性があります。このような特殊な環境で形成される火山は、通常とは異なる鉱物組成を持つ可能性があり、新たな鉱物資源の発見につながる可能性があります。

 

参考)沈み込んだ海山が引き起こした予期せぬ火山活動

人類に有用な資源開発が急務とされる現在、火山と金属鉱床の密接な関係が注目されつつあり、沈み込み帯の火山研究は資源探査の観点からも重要性を増しています。

地震本部|NO3.火山フロントと沈み込み帯
火山フロントの形成メカニズムと沈み込み帯の詳しい解説
大鹿村中央構造線博物館|マグマのでき方2:沈み込み帯のマグマ
沈み込み帯でマグマが発生する詳しいプロセスについて図解入りで解説
現代ビジネス|マグマ活動の鍵を握るのは「マントルまで染み込んだ水」だった
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