質量保存の法則は、18世紀にフランスの化学者アントワーヌ・ラヴォワジェによって提唱された化学の基本法則です。この法則は「どのような化学反応においても、反応前の物質の全質量と反応後に生成した物質の全質量は等しい」というものです。
参考)step02 物質・エネルギー・情報
実験例として、中学校の理科で行われる炭酸水素ナトリウムと酢の反応があります。密閉された容器内でこれらを反応させると二酸化炭素が発生しますが、発生した気体を含めて測定すると反応前後の質量は変化しません。開放系では気体が逃げるため質量が減ったように見えますが、逃げた気体の質量も含めれば総質量は保存されています。
参考)質量保存の法則は誰が発見した?背景と現代への影響
日常生活でも質量保存の法則は様々な場面で観察できます。パンを焼くと重さが減るように感じますが、これは水分が蒸発して空気中に拡散したためで、蒸発した水分も含めれば材料の総質量は変わっていません。同様に、紙を燃やすと灰になって質量が減ったように見えますが、発生した二酸化炭素や水蒸気が空気中に放出されているだけで、全体の質量は保存されています。
エネルギー保存の法則は「孤立系のエネルギーの総量は変化しない」という物理学における保存則の一つで、エネルギー保存則とも呼ばれます。熱力学におけるエネルギー保存の法則は熱力学第一法則として知られ、熱力学理論を構築する上で成立すべき定理の一つです。
参考)エネルギー保存の法則 - Wikipedia
この法則の重要な点は、エネルギーの形態が変化しても総量は一定であるということです。例えば、力学的エネルギー保存の法則では、保存力(重力、弾性力、万有引力)以外の力がはたらいていないか、はたらいていてもその力のする仕事が0のときに成り立ちます。
参考)力学的エネルギーの保存と運動量保存の違いとは
実生活での応用例として、自転車が坂を下る際の運動があります。坂の上から下ることで位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、速度が増加します。ブレーキをかけることで運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、速度を制御できます。このように日常生活の中でエネルギー保存則を意識することで、より効率的な動きが可能になります。
参考)https://ameblo.jp/kagakusyanotamago12345/entry-12882538844.html
質量保存の法則とエネルギー保存の法則の最大の違いは、適用される領域と歴史的背景にあります。質量保存の法則は化学反応における物質の総質量に焦点を当てているのに対し、エネルギー保存の法則はエネルギーの総量に注目しています。
参考)https://ameblo.jp/reproductionclinic/entry-12714304049.html
しかし、20世紀初頭にアインシュタインが特殊相対性理論を発表したことで、この2つの法則の関係性が明らかになりました。アインシュタインの有名な式E=mc²は、質量とエネルギーが等価であることを示しています。ここでEはエネルギー、mは質量、cは光速度を表します。
参考)エネルギーは質量を持つ - EMANの力学
この発見により、質量保存の法則は厳密には破られることが分かりました。相対論では「質量はエネルギーと等価である」という結論が出てくるため、エネルギーを多く持つほど質量は大きくなります。例えば同じ量の水で比較すれば、冷たい水より温かい水の方がその熱エネルギーの分だけごく僅かに重くなります。ただし、化学反応での質量変化は10⁻⁹%程度と極めて小さく、原子核反応でも1%程度のため、日常生活では実感できません。
参考)【相対論】エネルギーと質量の等価性の導出|Kokiの好奇心
したがって、相対論の立場では、エネルギー保存の法則は「質量を含めたエネルギーの総和が保存されている」という主張になります。つまり、質量保存の法則とエネルギー保存の法則は、より広い視点で見れば統合された一つの法則として理解できるのです。
参考)質量とエネルギーの等価性 - Wikipedia
陶器や食器の製造プロセスにおいて、質量保存の法則は重要な役割を果たしています。陶芸における焼成(焼き物を作る過程)では、粘土を高温で焼くことで化学反応が起こり、物理的・化学的変化が生じます。
参考)質量保存の法則(定番の実験&発展の実験)
焼成前の粘土には水分や有機物が含まれており、高温で焼かれると水分の蒸発や有機物の燃焼が起こります。この過程で陶器の重さは減少しますが、蒸発した水蒸気や燃焼によって生成された二酸化炭素などの気体も含めて計算すれば、質量保存の法則が成り立っています。
職人が陶器の焼成を行う際、焼成前後の重量変化を測定することで、焼成が適切に行われたかを判断することができます。この知識は陶芸家にとって品質管理の重要な指標となり、一貫した品質の陶器や食器を製造するために活用されています。
参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/02/41583/
物理学を学ぶ際に混同しやすいのが、力学的エネルギー保存の法則と運動量保存の法則です。この2つの保存則は、どちらもニュートン力学の運動方程式から導かれますが、適用条件と物理的意味が異なります。
参考)力学③ 運動量保存
力学的エネルギー保存の法則は、保存力(重力、弾性力、万有引力)以外の力、すなわち非保存力がはたらいていないか、はたらいていてもその力のする仕事が0のときに成り立ちます。これは「スカラー=スカラー」の式となっており、エネルギーの大きさのみに注目しています。
参考)ややこしすぎる!~力学的エネルギー保存法則と運動量保存則の違…
一方、運動量保存の法則は、物体系が内力を及ぼしあうだけで外力を受けていないとき、全体の運動量の和が一定に保たれるというものです。運動量はベクトル量であるため、方向も考慮する必要があります。
重要な違いとして、力学的エネルギー保存では位置で積分しているため、物体が動かなければエネルギーを与える(仕事をする)ことはできません。しかし、運動量保存の式では時間で積分しているため、物体が全く動かなくても力を与え続けた時間分だけ運動量を与える(力積を及ぼす)ことになります。この点が2つの保存則の大きな違いです。
衝突問題を解く際には、この使い分けが重要になります。非保存力が仕事をするときは力学的エネルギー保存則が使えませんが、ある方向に外力の力積を受けないときはその方向についての運動量保存則が使えます。
参考)https://seika.ssh.kobe-hs.org/media/common/RisuuButuri/2020-3nen/2020_3%E5%B9%B4%E7%90%86%E6%95%B0%E7%89%A9%E7%90%86%E6%BC%94%E7%BF%92%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81%E4%BE%8B.pdf
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