銭神苗字の由来と分布

全国にわずか70人ほどしか存在しない「銭神」という珍しい苗字。この特異な名字はどのような起源を持ち、どこに分布しているのでしょうか?

銭神苗字の由来と分布

銭神苗字の基本情報
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全国の人口

全国に約70~90人、全国順位37,395位という極めて珍しい苗字

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読み方

主に「ぜにがみ」と読むが、「ぜんがみ」という読み方も存在

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分布の中心

兵庫県(約50人)、特に神戸市須磨区を中心に分布

銭神苗字の地名由来と起源

銭神苗字の起源は、兵庫県淡路市釜口の小字「銭神」に由来します。小字とは、市区町村の大字をさらに細かく分けた地域のことで、集落内の小区画につけられた呼び名です。釜口は淡路市の北東部、大阪湾の沿岸に位置する地域で、江戸時代には津名郡釜口村として存在し、阿波徳島藩領でした。

 

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この地名は金銭の異称や、銭を守る神が語源とされており、本体の多くは蛇とされています。日本では古来より蛇が金銭を守護する存在として信仰され、「銭神」という呼称が生まれました。実際、広島県呉市郷原町には「銭神岩」という巨大な流紋岩があり、金鶏伝説と共に信仰の対象とされてきた歴史があります。このような信仰や地形が地名となり、やがて苗字として定着したと考えられます。

 

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明治時代の苗字必称令(1875年)により、庶民も苗字を名乗ることが義務付けられた際、地元の地名を採用するケースが多く見られました。銭神苗字もこの流れの中で、釜口の小字地名から家系の名として正式に使用されるようになったと推測されます。

 

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銭神苗字の全国分布と特徴

銭神苗字の分布は極めて限定的で、全国に約70~90人程度しか存在しません。都道府県別では、兵庫県が圧倒的に多く約50人が居住しており、特に神戸市須磨区(約20人)、神戸市垂水区(約10人)、神戸市長田区(約10人)に集中しています。

 

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次いで広島県広島市安佐北区、島根県浜田市、奈良県、長崎県に各約10人が分布しています。人口比率で見ると、島根県が0.00098%、兵庫県が0.00086%と高い比率を示しており、兵庫県淡路市では0.014%という特に高い集中率を記録しています。

 

参考)銭神さんの分布 - 日本姓氏語源辞典・人名力

この分布パターンは、発祥地である兵庫県淡路市から神戸市方面への移住、さらに広島県や島根県など西日本各地への展開という歴史的な人口移動を反映していると考えられます。全国で37,395位という順位は、日本に存在する約30万種類の苗字の中でも極めて珍しい部類に入ります。

 

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銭神苗字の読み方と語源の関係

銭神苗字の読み方は主に「ぜにがみ」ですが、「ぜんがみ」という読み方も存在します。この読み方の違いは、語源である「銭」の字の音読みと訓読みの違いに由来しています。「銭」は訓読みで「ぜに」、音読みで「せん」と読み、「神」は訓読みで「かみ」、音読みで「しん」「じん」と読みます。

 

参考)https://namedic.jp/sei/detail/%E9%8A%AD%E7%A5%9E

語源的には、金銭を敬っていう語である「銭神(せんしん)」が訓読みで「ぜにがみ」となったものです。江戸時代の俳諧『当世男』(1676年)には「銭神や駄ちん払にお旅さき」という句が残されており、当時から金銭を敬う表現として使われていたことが分かります。

 

参考)銭神(ぜにがみ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

興味深いことに、「銭神」は金銭のように足がなくても走るという意味から、蛇類を指す言葉としても使われていました。これは蛇が金運や財産を守護する存在として信仰されていたことと関連しており、苗字の語源となった地名にもこの信仰が反映されている可能性が高いでしょう。

銭神苗字と珍しい苗字ランキング

日本には約30万種類の苗字が存在するとされ、その中で銭神は全国順位37,395位という極めて珍しい苗字に分類されます。珍しい苗字のランキングを見ると、全国に70人程度の銭神は、「八月一日(ほづみ)」(約70人、35,938位)や「父母(ちちはは)」(約80人、35,878位)と同レベルの希少性を持っています。

 

参考)珍しい名字いろいろ|名字検索No.1/名字由来net|日本人…

さらに希少な苗字としては、「可愛(かわい)」(約50人、42,656位)、「指輪(ゆびわ)」(約40人、47,067位)、「祭(まつり)」(約30人、52,364位)、「鼻毛(はなげ)」(約30人、57,453位)などがあります。これらの珍しい苗字の多くは、地名、職業、自然物、あるいは信仰に関連した由来を持っており、銭神もその例外ではありません。

日本の苗字は平安時代末期に公家や武士の間で生まれ、江戸時代には武士階級の特権とされていましたが、1875年の苗字必称令により庶民にも苗字が義務付けられました。この際、多くの人々が居住地の地名、職業、地形、動植物などから苗字を選んだため、日本には多様な苗字が存在するようになりました。

 

参考)「私」の名を誇る。 - asobot inc.

銭神と鉱石・金運信仰の関連性

銭神という苗字は、その語源から金運や財産に関する信仰と深い関わりを持っています。日本各地には「銭神」の名を冠する信仰の場が存在し、代表的なものとして埼玉県秩父市の聖神社があります。聖神社は708年に創建された神社で、武蔵国秩父郡で発見された和銅(純度の高い自然銅)が元明天皇に献上されたことを記念して建立されました。

 

参考)【秩父】国内初の通貨「和同開珎」に貢献した秩父。和銅遺跡と銭…

この神社は和銅発見により日本最初の流通貨幣「和同開珎」が誕生したゆかりの地であり、いつしか「金運の神様」「銭神様」と呼ばれるようになりました。聖神社には創建当時に採掘された和銅鉱石や、元明天皇から賜ったと伝わる銅製の蜈蚣がご神宝として納められています。

また、広島県呉市郷原町には「銭神岩」という巨大な流紋岩があり、地元では「大晦日に黄金の鶏がこの岩の上で鳴く」という金鶏伝説が古くから伝わっています。この岩は火山灰でできた岩が火山の噴火やマグマの熱で一度溶かされ、再び固まるときにできた流紋岩で、夕日を浴びると輝いて見えたことから信仰の対象となりました。こうした鉱物や岩石と金運信仰が結びついた事例は、銭神苗字の起源地である兵庫県淡路市の小字「銭神」にも同様の信仰背景があった可能性を示唆しています。

 

参考)銭神岩|呉市の文化財 - 呉市ホームページ

人々は古来より鉱物や自然の恵みに神聖さを見出し、それらを財運の象徴として崇めてきました。銭神という苗字は、そうした日本人の自然崇拝と経済観念が融合した文化的背景を今に伝える貴重な存在といえるでしょう。

 

名字由来netの銭神苗字詳細ページ
銭神苗字の詳細な分布データや家紋情報などが掲載されており、自身のルーツを調べる際に有用です。

 

呉市公式サイト「銭神岩」文化財紹介
広島県呉市に残る銭神岩の詳細な解説と金鶏伝説について、市の公式文の詳細な解説と金鶏伝説について、市の公式文化財情報として掲載されています。