セイボリーとは、アフタヌーンティーで提供される塩味系の軽食のことを指します。サンドイッチやキッシュ、タルトなど、甘いスイーツに対して塩気や旨味のある料理全般がこれに該当します。伝統的なイギリス式アフタヌーンティーでは、三段のティースタンドの最下段にセイボリーが配置され、中段にスコーン、上段にペストリーやケーキが並ぶのが基本構成です。この配置には理由があり、食事としての満足感を得つつ、徐々に甘いものへと移行できるよう考慮されています。
セイボリーの語源はラテン語の「sapor(味)」に由来し、英語では「塩味の」「香ばしい」「食欲をそそる」といった意味を持ちます。アフタヌーンティーにおけるセイボリーの役割は、単なる食事の一部ではなく、味覚のリセットやバランスを取る重要な要素として位置づけられています。塩味や旨味のある料理を間に挟むことで、甘いものをより美味しく感じさせる効果があり、味覚に変化をもたらす演出にもなっています。
最近では、スイーツよりもセイボリーの品数が多いアフタヌーンティーが人気を集めており、「セイボリー多め」というコンセプトのメニューが各ホテルやカフェで登場しています。これは、甘いものが苦手な方や、ランチ代わりにしっかりと食事を楽しみたい方のニーズに応えたもので、食事としての満足度を高める新しいトレンドとして注目されています。
伝統的なアフタヌーンティーのセイボリーメニューで最も有名なのが、キュウリのサンドイッチです。英国貴族の間で長く愛されてきたこの一品は、薄切りのキュウリをバターを塗った白パンで挟んだシンプルな構成ながら、アフタヌーンティーの王道メニューとして今も多くのホテルで提供されています。キュウリのサンドイッチが貴族に好まれた理由は、当時キュウリが温室栽培の高級食材であったことや、さっぱりとした味わいが紅茶と相性が良いことが挙げられます。
現代のセイボリーメニューは、伝統的なサンドイッチに加えて、より多様な料理が登場しています。代表的なものとしては、サーモンやローストビーフを使ったオープンサンド、ほうれん草やチーズを入れたキッシュ、野菜やシーフードを使ったタルト、ミニバーガー、カナッペなどがあります。季節の食材を活かしたメニューも人気で、秋にはかぼちゃやきのこを使った料理、春には新鮮な野菜を使ったサラダ仕立てのセイボリーなど、四季折々の味わいを楽しむことができます。
セイボリーの盛り付けにも工夫が見られ、一口サイズの美しい仕上がりが求められます。野菜の色彩を活かした盛り付けや、ハーブをトッピングすることで視覚的な美しさも演出します。また、和洋折衷のアプローチも増えており、和風ダイニングでは茶飯を使ったおにぎりサンドや、だし巻き卵を使ったカナッペなど、日本人の味覚に合わせたセイボリーも提供されています。
アフタヌーンティーに使用する食器選びは、全体の雰囲気を左右する重要な要素です。伝統的なイギリス式では、白磁のプレートにシルバーのティースタンドを組み合わせるスタイルが格式高いとされています。白い陶器は料理の色彩を引き立て、セイボリーの美しさを最大限に表現することができます。特に「ノブレス」シリーズのような、上品なフリルプリーツのフォルムに優美な曲線の縁取りをあしらったデザインは、フレンチシックなテイストでエレガントな雰囲気を演出します。
ブランド食器を選ぶ際には、予算と用途に応じた選択が大切です。イギリスの名門ウェッジウッドは、クリーム色の「クィーンズウェア」や輝く白さの「ボーンチャイナ」が有名で、英国王室御用達の伝統と品質を誇ります。デンマークのロイヤル・コペンハーゲンは、深いコバルトブルーと白の配色が特徴的で、職人の手書きによる繊細な絵柄が魅力です。日本のノリタケは、日本の生活様式を考えてデザインされており、扱いやすく手頃な価格帯から揃えられるのが特徴です。
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ティースタンドの素材選びも重要で、陶器の三段プレートタイプは安定感があり、家庭での使用に適しています。シルバーフレームに陶器のお皿を組み合わせたタイプは、格式高い印象を与え、特別な日のおもてなしに最適です。小花をあしらったシルバーのアフタヌーンティースタンドは、クラシカルで上品な雰囲気を作り出し、パステルカラーのガラス食器と組み合わせることで、大人可愛いスタイルにもアレンジできます。
セイボリーの盛り付けで最も重要なのは、「高さ」を意識することです。ケーキスタンドを使用することで、テーブルに立体感が生まれ、限られたスペースでも多くの料理を美しく配置できます。三段スタンドを使用する場合は、下段に重めのセイボリー、中段にスコーン、上段に軽やかなペストリーという順番が基本ですが、自宅で楽しむ場合はワンプレートに盛り付けても素敵に仕上がります。
色彩バランスを考えた盛り付けも大切なポイントです。野菜の鮮やかな色を活かし、赤(トマトやパプリカ)、緑(キュウリやハーブ)、黄色(卵やレモン)といった配色を意識することで、視覚的な美しさが増します。また、フィンガーサンドイッチは斜めにカットして断面を見せることで、具材の層が美しく見え、食欲をそそる演出になります。オープンサンドの場合は、野菜を小さくカットしすぎず、ある程度の大きさを保つことで見栄えが良くなります。
器の形や質感も盛り付けの完成度を左右します。花びらのような形の器や、シンプルで滑らかな白磁を使用すると、優雅でありながらも繊細な印象を与えることができます。小さな器をギュッと集めた箇所を作ることで「疎密」が生まれ、テーブルをにぎやかに演出できます。スコーンやパイなど大きなフードは大きめのお皿に、カナッペなどの小さな一口サイズは小皿に分けることで、メリハリのある盛り付けが実現します。
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アフタヌーンティーの楽しみ方は、伝統的なスタイルだけではありません。日本の食文化を取り入れた「和のアフタヌーンティー」は、セイボリー中心の構成で新しいスタイルを提案しています。美濃焼や有田焼などの日本の陶器を使用し、おにぎりサンドや茶巾寿司、だし巻き卵のカナッペなどを盛り付けることで、和風の優雅なティータイムが楽しめます。ひな祭りや節句などのハレの日にも活用でき、和菓子との組み合わせも可能です。
季節感を演出するテーブルコーディネートも、陶器選びの重要なポイントです。春はパステルカラーのガラス食器と白い陶器を組み合わせた大人可愛いスタイル、夏は涼しげなブルーの柄が入ったトワルドジュイシリーズでフレンチシックに、秋は温かみのある色合いの陶器を使用し、冬はクラシカルなアラベスク模様のカトラリーと合わせて重厚感を出すなど、四季折々の変化を楽しむことができます。
自宅でアフタヌーンティーを楽しむ際には、必ずしも高額なブランド食器を揃える必要はありません。お気に入りのカップひとつあるだけで、いつものテーブルが特別な空間に変わります。既に持っている食器を組み合わせる際は、色や柄のトーンを統一することで統一感が生まれます。例えば、シンプルな白い陶器をベースに、花柄のガラス皿やティーカップを一つずつ加えていくことで、徐々にコレクションを充実させることができます。
アフタヌーンティーを楽しむテーブルコーディネート|ハルモニア
※薔薇のティースタンドやトワルドジュイ柄など、テーマ別のコーディネート実例が豊富に紹介されています
アンティーク食器を取り入れるのも、アフタヌーンティーに個性と物語性を加える素敵な方法です。イギリスのアンティークマーケットで買い付けられたビンテージのクリーマーや絵皿は、歴史を感じさせる風合いがあり、現代の食器とミックスすることで独特の魅力を持つテーブルが完成します。ガラス皿に型押しされたセイボリー木立薄荷(キダチハッカ)柄のような、クラシカルなデザインの小皿は、デザート用にもセイボリー用にも使える汎用性の高さが魅力です。