硫酸鉛の色と鉱物結晶の特徴

硫酸鉛は白色沈殿として知られますが、鉱物としての硫酸鉛鉱は黄色に輝く美しい結晶を見せます。化学物質と天然鉱物での色の違いはなぜ生まれるのでしょうか?

硫酸鉛の色と性質

硫酸鉛の基本情報
化学物質としての色

純粋な硫酸鉛(PbSO₄)は白色または無色の結晶性粉末として存在します

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鉱物としての色

天然の硫酸鉛鉱(アングレサイト)は無色から黄色、まれに青色や緑色を帯びることがあります

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物理的特性

密度6.29g/cm³、融点1170℃、金剛光沢を持つ斜方晶系の結晶構造です

硫酸鉛の白色沈殿と化学反応

 

硫酸鉛は化学実験において典型的な白色沈殿として知られています。水溶性の鉛塩、例えば硝酸鉛や酢酸鉛の水溶液に希硫酸や硫酸塩水溶液を加えると、白色沈殿として硫酸鉛が生成します。この反応は鉛イオン(Pb²⁺)と硫酸イオン(SO₄²⁻)が結合して生じるもので、化学式はPbSO₄で表されます。

 

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純粋な硫酸鉛の見た目は白色または無色で、結晶状もしくは結晶性粉末の固体です。水への溶解度は25℃において0.0425g/1Lとほとんど溶けず、エタノールやアセトンなどの有機溶媒にも難溶性です。この難溶性の性質により、硫酸鉛は沈殿物として容易に識別できるため、鉛イオンの検出反応として利用されています。

 

参考)硫酸鉛(II)

化学反応において生成する硫酸鉛が白色であることは、純度の高い結晶状態を反映しています。塩化鉛(PbCl₂)や炭酸バリウム(BaCO₃)などと同様に、硫酸塩の多くは白色沈殿として観察されます。

 

参考)無機化学の色まとめ(イオン/化合物(沈殿)/ハロゲンなど)

硫酸鉛鉱アングレサイトの黄色結晶

天然鉱物としての硫酸鉛鉱は「アングレサイト(Anglesite)」と呼ばれ、化学物質として得られる白色粉末とは異なる外観を示します。方鉛鉱(PbS)が酸化して生じる二次鉱物で、化学式PbSO₄の組成を持ちますが、無色から黄色、さらには薄い青色や緑色を帯びることがあります。

 

参考)硫酸鉛鉱

硫酸鉛鉱の色は産地や不純物の含有によって変化します。無色、灰色、白色の順で多く産出されますが、黄色く光り輝く結晶は特に美しいとされています。地味で黒い方鉛鉱が酸化して黄色く光り輝く姿に変化することは、酸化が「錆びる」という印象と異なり、興味深い現象です。

 

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主な産地はイタリアのMonteponi、モロッコのTouissit、ナミビアのツメブなどで、日本では尾去沢鉱山が代表的な産地として知られています。英語名Anglesiteは、1783年にイギリス・ウェールズ地方のアングルシー島の銅山で発見されたことに由来します。

 

参考)硫酸鉛鉱 - Wikipedia

結晶は斜方晶系の構造を持ち、硬度2.5~3、比重6.38、金剛光沢を示す透明から半透明の結晶が特徴です。紫外線をあてると蛍光を発するものも多く、重く欠けやすい性質があるため加工には向きません。

 

参考)http://www5b.biglobe.ne.jp/~scarlet/Anglesite.htm

硫酸鉛の色の違いが生じる理由

化学物質として合成される硫酸鉛と天然鉱物の硫酸鉛鉱で色が異なる理由は、主に不純物の混入と結晶構造の違いにあります。実験室で急速に沈殿させた硫酸鉛は微細な結晶粒子の集合体となり、光を乱反射するため白色に見えます。

一方、天然の硫酸鉛鉱は長い年月をかけて地中でゆっくりと結晶成長するため、より大きく均質な結晶構造を形成します。この過程で微量の不純物イオンが結晶格子に取り込まれることがあり、これが着色の原因となります。特に遷移金属元素を微量に含むことで、結晶場理論に基づく光吸収特性が変化し、黄色や青色、緑色などの色彩が現れます。

 

参考)X線異常散乱法およびX線吸収微細構造法による鉱物結晶中の微量…

また、結晶の大きさや完全性も色の見え方に影響します。大きな単結晶は金剛光沢を示し、特定の波長の光を選択的に透過・反射するため、鮮やかな色彩として観察されます。方鉛鉱の酸化によって生成する際の温度や圧力、周囲の化学環境も結晶の品質と色に影響を与える要因です。

 

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硫酸鉛の蓄電池における役割

硫酸鉛は鉛蓄電池の重要な構成物質として、電気化学反応において中心的な役割を果たします。鉛蓄電池では正極に二酸化鉛(PbO₂)、負極に金属鉛(Pb)、電解液に希硫酸を用いており、放電時には両極で硫酸鉛が生成されます。

 

参考)鉛蓄電池に硫酸が含まれているのはなぜですか › › Base…

負極では鉛が酸化されて生じた鉛イオン(Pb²⁺)と硫酸イオン(SO₄²⁻)が反応し、硫酸鉛PbSO₄を生成して負極表面に付着します。この反応で放出された電子は導線を通って正極に送られ、電流が流れる仕組みです。正極でも負極からの電子と水素イオンを受け入れて、二酸化鉛と希硫酸の化学反応により硫酸鉛と水が生成します。

 

参考)鉛と希硫酸で電気を発生する鉛酸バッテリーの仕組みとは

充電時には逆反応が起こり、両極板の表面に付着した硫酸鉛を利用して正極は酸化鉛(IV)に、負極は単体の鉛に戻ります。硫酸は導電性の高い電解質であり、鉛板間の効率的なイオンの流れを可能にするため、鉛蓄電池の機能に不可欠です。

鉛蓄電池の活物質としては、酸化鉛(II)に希硫酸を加えたペースト状のものが用いられ、PbSO₄·PbO、PbSO₄·2PbO、PbSO₄·3PbO、PbSO₄·4PbOのような組成の各種塩基性塩が含まれています。三塩基性硫酸鉛(3BS)の生成量は活物質利用率と重負荷特性に影響を及ぼすことが知られています。

 

参考)https://corp.furukawadenchi.co.jp/ja/research/technews/main/09/teaserItems1/0/file/fbtn71_all.pdf

硫酸鉛の歴史的用途と顔料としての利用

硫酸鉛は古代から白色顔料として利用されてきた長い歴史があります。奈良の正倉院の宝物からも硫酸鉛が用いられている物品が発見されており、日本における古くからの利用が確認されています。白色を示す性質から、絵画や装飾品の着色材料として重宝されてきました。

 

参考)顔料 - Wikipedia

最初期の合成顔料として知られる鉛白は炭酸鉛の一種((PbCO₃)₂Pb(OH)₂)ですが、硫酸鉛もまた類似の用途で使用されてきました。方鉛鉱から生成される炭酸塩鉱物の白鉛鉱は、クリスタルガラスのように光り輝き、これを粉末にした白い顔料を鉛白といって白粉として用いられました。

硫酸鉛は黄鉛やモリブデートオレンジのような着色顔料の原材料の一つとしても使用されてきました。しかし近年では鉛含有塗料の人体への悪影響が懸念されており、鉛含有塗料廃絶に向けての動きが高まっています。欧州委員会でも鋼材・アルミ・銅の合金成分としての鉛に関するRoHS指令の適用など、鉛の使用を制限する規制が強化されています。

 

参考)EnviX - 海外環境法規制調査 エンヴィックス

その他の用途として、釉薬、触媒、樹脂安定剤などがあり、また鉛板は硫酸に対する耐食性が強いため化学工業をはじめとする工業用、X線・γ線防護用、遮音・防振用などに用いられています。鉛は有毒性を持つため取り扱いには注意が必要ですが、鉱物収集家にとっては重量感や照り輝く結晶の魅力から人気のある鉱物種です。

 

参考)用途 href="https://jlzda.gr.jp/lead/about/usefulness" target="_blank">https://jlzda.gr.jp/lead/about/usefulnessamp;#8211; 日本鉱業協会 鉛亜鉛開発需要センター

 

 


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