硫酸カリウム(K₂SO₄)は、水溶性カリウム約50%を含む速効性の化成肥料です。主成分である硫酸カリウムは白色から無色の粉末または粒状で、水に溶けやすくアルコールには溶けません。化学的には中性の水溶液を示しますが、作物がカリウムを吸収した後に硫酸イオンが土壌に残留するため、生理的酸性肥料に分類されます。
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この肥料の最大の特徴は塩素を含まないことにあります。塩化カリウムと比較すると価格はやや高めですが、塩分に敏感な作物の栽培に適しており、ジャガイモ、サツマイモ、タバコ、スイカなどの品質を重視する栽培で広く使用されています。また約18%の硫黄を含むため、硫黄養分の供給源としても機能します。
参考)硫酸加里:技術情報 - 株式会社ファイマテック -
カリウムイオンは陽イオンであり土壌コロイドによく吸着されるため、雨水による流亡が少なく、基肥としても追肥としても効率的に作物に利用されます。溶解性が高く土壌施用後によく溶け出すため、施用後2〜3日で肥効が現れる速効性を持ちながら、肥効持続期間は比較的長く、特に有機質の多い粘土質土壌では生育期の短い作物なら基肥だけで栽培期間中の加里欠乏を防げます。
参考)http://bsikagaku.jp/f-fertilization/SOP.pdf
硫酸カリウムの施用量は作物の種類や土壌条件によって調整が必要です。一般的な施用量の目安として、元肥では10㎡あたり10〜20g、追肥では10㎡あたり5〜10gが推奨されています。坪(3.3㎡)あたりでは40〜60gを均一に散布する方法もあります。
参考)硫酸加里
施用のタイミングは作物の生育ステージに合わせることが重要です。果樹や多年生作物には発芽期や活発な生育開始時期に合わせた早春の施肥が効果的で、これにより健全な開花と着果を促進します。畑作物では植え付け前または初期の栄養生長段階が理想的で、生育期間中に分割して施肥することで作物が過負荷なくカリウムと硫黄を安定供給できます。
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トマトの土耕栽培での追肥例では、10aあたり週1〜4kgを点滴灌水チューブで施用する方法があります。カリウムは作物の生育後期まで必要とされるため、一度に全量を施すのではなく基肥と追肥に分けて与える「分施」が効果的で、特に長期間栽培する果菜類やイネ科作物では成長に合わせて段階的に追肥することで吸収効率が高まります。
参考)硫酸カリ_ 25 kg
液体肥料として使用する場合は、水で100〜200倍(水1Lに対し5〜10g)に薄めて使用します。養液栽培では作物・原水・他の使用肥料によって施用量は大きく異なるため、水質分析・植物分析の処方に基づき液肥や単肥などと配合してください。
硫酸カリウムは塩素を嫌う作物に特に適しています。ジャガイモやサツマイモなどのイモ類は塩化カリウムを使うとでんぷん質が低下する可能性があるため、硫酸カリウムが最適な選択です。硫黄も同時に補給できるため、これらの作物では風味や保存性が向上します。サツマイモやごぼう、ニンジンなどの根菜類に施すと品質が向上する効果も確認されています。
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ネギ、玉ねぎ、ニラ、ニンニクなど硫黄を好む作物への施用も効果的です。これらの作物は硫酸カリウムに含まれる硫黄成分を活用でき、タンパク質合成や独特の風味形成に役立ちます。スイカも塩素を嫌うため硫酸カリウムを施用するほうが良好な結果が得られます。
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果菜類ではトマト、キャベツ、ほうれん草などの野菜類にも推奨されます。トマトなどは塩分に敏感なため、硫酸カリウムを使用すると品質や収量が安定し、収穫期が長い作物には追肥で分けて与えるのが効果的です。果樹栽培ではミカンやリンゴなどに春の追肥または秋の基肥として施用すると、果実の味・香り・色つやが品質を左右する要素が向上し、糖度や色づきも良くなります。
カリウムは光合成産物である糖類を根や果実、種子へと移動させる「転流」に関与しているため、ジャガイモやサツマイモなどの根菜類や果実の肥大を促進します。カリウムを多く必要とするジャガイモやスイカなどの根菜・果菜類では、不足すると肥大や糖度に影響が出やすくなります。
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硫酸カリウムは生理的酸性肥料であり、カリウムが作物に吸収された後に硫酸イオンだけが土壌に残留し、pHを下げて土壌を酸性に傾ける性質があります。長期的に多量施用すると土壌が酸性化するため、施肥量には注意が必要です。土壌のpH(酸性度)を定期的に計測し、酸性化していれば消石灰や苦土石灰などのアルカリ性資材で作物に合ったpHに調整することが重要です。
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過剰施用すると硫酸の作用で土壌が酸性に傾き根が障害を受けたり、窒素・リン酸・カリウムなど他の養分の吸収が阻害される可能性があります。適切な施用量を守り、土壌診断に基づく施肥設計を行うことで、これらのリスクを回避できます。
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水田での利用には特別な注意が必要です。硫酸カリウムは硫酸イオンを含むため、カリウム成分が吸収された後に残留した硫黄イオンが湛水などで嫌気環境(酸素のない条件)となっているときに、有害な硫化水素に還元される可能性があります。ただし、ケイ酸やマグネシウム、鉄などの塩基成分の積極的な補給や土壌の改善(CEC向上)によって、老朽化水田は改善されてきており、秋落ちのリスクは下がりつつあります。水田でのカリウム補給という意味では、ケイ酸カリウム肥料の施用も効果的な選択肢です。
肥料の混合時にも注意が必要ですが、硫酸カリウムは化学的中性であり反応性が乏しいため、尿素、硫安、塩安などに混合してもアルカリ反応によるアンモニアの揮散が発生せず、過りん酸石灰や重過りん酸石灰、りん安などに混合してもりん酸の難溶化が起こらないため、化成肥料やBB配合肥料の原料としても広く使われています。
硫酸カリウムは葉面散布用肥料としても効果的に使用できます。高純度の硫酸カリウム(K₂O含有量52%のもの)が葉面散布に適しており、カリウムは植物体を自由に移動できる元素であるため、葉面、特に生長点付近での散布が効果的です。農研機構の研究では、硫酸カリウムの葉面散布によって夏秋トマトの葉先枯れ症を効果的に抑制できることが報告されています。
参考)[554]カリウムは葉面散布が効果的
液肥として使用する場合は、水で100〜200倍に希釈して使用します。具体的には水1Lに対して5〜10gの硫酸カリウムを溶かす計算です。特に果菜類の追肥として用いると速やかに効果が現れるため、生育が遅れている作物への緊急的な養分補給にも有効です。
農研機構|硫酸カリウムの葉面散布による夏秋トマト葉先枯れ症の効果的な抑制技術
養液栽培での活用も広く行われています。水に溶けやすいため養液栽培の液体肥料として活用され、作物・原水・他の使用肥料によって施用量は大きく異なりますが、土壌分析・植物分析の処方に基づき、不足する成分を液肥や単肥で補給する形で使用します。濃度と溶解性が高く、硫酸イオンが存在することで濃度障害が発生しにくい特性があるため、種肥にも適しています。
葉面散布を行う際のポイントとして、カリウムは光合成産物を葉や果実、根に運ぶ働きがあるため、葉面から吸収されたカリウムは速やかに植物体内を移動し、必要な部位に栄養を届けることができます。ジャガイモ、玉葱などのカリウムを多く必要とする作物では、葉面散布による追肥が特に効果的とされています。
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