ロータリーキルン仕組みと構造から焼成温度まで徹底解説

ロータリーキルンは回転円筒による連続熱処理装置として、鉱石処理からセメント製造まで幅広く活用されています。傾斜と回転で原料を搬送しながら高温焼成する独自の仕組みとは一体どのようなものでしょうか?

ロータリーキルン仕組みと構造

ロータリーキルンの基本構造と動作原理
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回転円筒による連続処理

傾斜した円筒形炉体が回転しながら原料を上端から下端へ自動搬送

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高温焼成環境

800~2000℃の高温で均一な熱処理を実現し物理的・化学的変化を促進

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タンブリング攪拌

回転による転がり作用で原料を均一に混合し局所的な加熱ムラを防止

ロータリーキルン基本構造と炉芯管の役割

ロータリーキルンの心臓部は、レトルトまたはマッフルと呼ばれる円筒形の炉芯管です。この炉芯管は水平から2~5度の傾斜角度をつけて設置され、長手方向の軸を中心にゆっくりと回転します。炉芯管の外殻は鉄製で構成され、直火式の場合は内側に耐火物ライニングを施すことで2000℃以上の高温にも耐えられる構造になっています。

 

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回転速度は用途によって異なりますが、通常は毎分0.5~5回転の範囲で運転されます。一般的なキルンでは1~3rpmで安定した性能を発揮し、近代的なセメントプラントでは処理効率を高めるために4~5rpmの高速回転も採用されています。この低速回転により、原料は転がりながら均一に加熱され、局所的な過熱や加熱不足を防ぐことができます。

 

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炉芯管の傾斜角度と回転速度の組み合わせによって、原料が炉内に滞留する時間を制御できます。例えばセメント製造では約30分間の滞留時間が確保され、この間に原料は徐々に高温ゾーンを通過しながら焼成反応が進行します。

 

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ロータリーキルン回転速度と滞留時間の関係

ロータリーキルンの回転速度は、原料の滞留時間と処理品質に直接影響を与える重要なパラメータです。回転速度が遅いほど滞留時間が長くなり、特定の化学的または熱的処理に必要な反応時間を確保できます。フェロニッケル製造などでは、駆動装置の摩耗を考慮して1rpm程度の回転速度が好ましいとされています。

 

参考)https://patents.google.com/patent/JP2014141719A/ja

滞留時間は回転速度だけでなく、キルンの傾斜角度によっても調整可能です。傾斜が急になるほど原料の移動速度が速くなり滞留時間は短くなります。この関係性を利用して、1100℃以上の高温滞留時間を精密に制御することで、外殻形成時間など製品品質に関わる重要な工程を最適化できます。

 

参考)https://core.ac.uk/download/pdf/61351617.pdf

回転速度は材料流量にも影響し、速度が速いと流量が増加して生産性が向上します。しかし同時に熱分配の必要条件とバランスを取る必要があり、脱炭酸のようなプロセスでは均一な加熱が重要となります。そのため、傾斜角度、温度、ベッドの深さなど複数のパラメータを総合的に管理することで、キルンの最適な性能を引き出すことができます。

ロータリーキルン直接加熱型と間接加熱型の違い

ロータリーキルンは加熱方法によって直接加熱型(直火式)と間接加熱型(外熱式)の2つのタイプに大別されます。

 

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直接加熱型は、シェルの内側に耐火物を張り、ドラム内部で燃焼ガスを発生させて原料を直接加熱する方式です。耐火物の耐火度によっては2000℃以上に昇温することも可能で、高温での化学反応が必要なセメントクリンカ製造や石灰焼成に適しています。燃焼ガスと被処理物が直接接触する方式のため、鉱石、粘土、化学肥料など燃焼ガスとの接触が問題にならない材料に使用されます。熱伝達が直接行われるためエネルギー効率が高い反面、材料汚染のリスクがあります。

 

参考)http://iwasa-kikai.co.jp/technology.html

一方、間接加熱型はレトルトの外側に耐火物と炉を設け、外部から加熱する方法です。レトルトの材質により1250℃程度までの昇温が可能で、燃焼ガスの影響を受けたくない粉末・粒状の材料や、不活性雰囲気が必要なデリケートな材料の処理に最適です。ドラム壁を通して熱が伝わるため燃焼ガスとの直接接触は避けられますが、熱伝達効率が低く加熱時間が長くなるため、操業コストが上昇する傾向があります。また間接加熱型では耐火物ライニングを使用しないのも特徴で、余分な断熱層を追加すると効率が低下するためです。

 

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ロータリーキルン耐火物ライニングとメンテナンス

耐火物ライニングは直火式ロータリーキルンにおいて、運転中の極端な内部温度からキルン外殻を断熱・保護する重要な構成要素です。熱損失を最小限に抑え、内部温度を一定に保つことでキルンの効率維持に重要な役割を果たします。

ロータリーキルンの部位によって使用される耐火物の種類が異なります。炉体本体は最も侵食を受ける部分で、高アルミナ質レンガ、耐火粘土レンガ、マグネシアレンガ、マグネシアアルミナスピネルレンガなどが使用されます。これらは耐火性が高く、耐熱衝撃性にも優れています。化学スラグによる侵食が懸念される場合は、シリカレンガが化学的侵食に耐えるために採用されます。

 

参考)ロータリーキルン耐火物 - Kerui Refractory

キルンの出口部分は極端な温度に耐える必要があるため、高アルミナ質煉瓦、マグネシアクロム煉瓦、高アルミナ質キャスタブルが使用されます。入口部分では金属材料の投入による摩耗損傷が発生するため、マグネシア・アルミナ・スピネル煉瓦、シリカカーバイド煉瓦、ドロマイト煉瓦といった優れた硬度を備えた耐火物が選択されます。これらは熱伝導率が優れており、装置内を高温に保つことができます。

耐火物の選択は、キルン温度、材料の化学的性質、磨耗性などの要因に依存し、適切なメンテナンスは工程の不整合、熱の歪み、費用のかかる修理を避けるために極めて重要です。

ロータリーキルン鉱石処理における独自の制御技術

ロータリーキルンは鉱石処理分野において、様々な鉱物の焼成や焙焼に独自の制御技術を活用しています。石灰石の生石灰への焼成、ドロマイトやマグネサイトの焼結、ボーキサイトの焼成など、鉱物の相変化を確実にするために制御された温度での運転が行われます。

 

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鉱石処理用の冶金化学キルンでは、アルミナやボーキサイトなどの鉱石の精製や化学反応に使用され、過酷な材料特性のため耐摩耗性ライニングを必要とします。多種多様な鉱石の焙焼では、ロータリーキルンが鉱石を還元するのに役立ち、海綿鉄(スポンジアイアン)の生産に不可欠な役割を果たしています。

 

参考)ロータリーキルンは、処理する材料に基づいてどのように分類でき…

キルン内の温度制御は焼成プロセスの成否を左右します。実機セメント焼成キルンを模した小型ロータリーキルンでは、焼点温度±10℃での運転制御が可能で、1500℃までの高温焼成が実現されています。窯回転数を調整することで窯内の通過時間を20~120分の範囲で任意に制御でき、焼成時間の精密な管理が可能になります。

 

参考)熱処理技術 内熱キルン 外熱キルン

さらに、焼却炉飛灰からの金属分離技術では、ロータリーキルンを用いた高温焼成法により、重金属類を塩化物や金属形態で揮発分離する先進的な処理技術が開発されています。1000℃以上で焼成することで重金属を低レベルまで除去し、環境基準を十分満足する処理が実現されています。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai/120/9/120_9_521/_pdf

サンファーネス株式会社のロータリーキルン技術解説
ロータリーキルンの構造、設計、温度別の用途について詳細な技術情報が掲載されています。

 

岩佐機械工業株式会社の熱処理技術資料
直接加熱型と外熱型ロータリーキルンの特徴と、各種鉱石処理への適用事例が紹介されています。

 

ロータリーキルンの回転速度最適化ガイド
回転速度が保持時間、材料流量、熱分布に与える影響について専門的な解説があります。