立方晶系の例や鉱物、構造、対称性、特徴

立方晶系は結晶構造の中で最も対称性が高く、多くの鉱物や金属がこの系に属しています。ダイヤモンドや塩、鉄など身近な物質から工業材料まで、立方晶系の例や構造的特徴とは何でしょうか?

立方晶系の例と構造

立方晶系の基本構造
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単純立方格子(P)

立方体の頂点のみに原子が配置された最もシンプルな構造

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体心立方格子(I)

立方体の中心にも原子を含み、鉄などの金属に見られる

面心立方格子(F)

各面の中心にも原子が配置され、銅や金などに見られる

立方晶系の鉱物例

 

立方晶系は7つの結晶系の中で最も対称性が高く、3つの結晶軸の長さが全て等しく、軸角も全て90度という特徴を持ちます。この系に属する代表的な鉱物として、ダイヤモンドが挙げられます。ダイヤモンドは炭素原子が共有結合で四面体型に配置されたダイヤモンド立方晶系(空間群Fd3m)の構造を持ち、八面体の面に対して4方向に完全な劈開を示します。

 

参考)結晶構造 - Wikipedia

金属元素では、**金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)**などが面心立方格子構造(A1型)を形成します。一方、**鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)**などは体心立方格子構造(A2型)をとります。これらの金属は配位数や充填率が異なり、面心立方格子は最密充填構造の一種として知られています。

 

参考)金属結晶まとめ

結晶構造の詳細や各種結晶系の分類について

立方晶系の代表的構造と対称性

立方晶系の結晶は4つの3回回転軸という必須の対称性を持ち、5つの点群と36の空間群に分類されます。ブラベー格子では、単純立方格子(cP)、体心立方格子(cI)、面心立方格子(cF)の3種類が存在します。

化合物の結晶構造では、塩化ナトリウム型構造(岩塩型、B1型)が最も基本的な例です。この構造では、ナトリウムイオン(Na⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)がそれぞれ面心立方格子の配置をとり、チェッカーボード状に三次元空間に配列しています。単位胞にはNa⁺とCl⁻がそれぞれ4個ずつ含まれ、各イオンは6個の反対電荷のイオンに配位されます。この構造は酸化マグネシウム(MgO)や酸化コバルト(CoO)などにも見られます。

 

参考)塩化ナトリウム型構造:最も基本的な二元系構造 - はじめよう…

もう一つの重要な構造が塩化セシウム型構造(B2型)で、CsClや高温高圧下のRbClがこの構造をとります。また、蛍石型構造(C1型)はCaF₂やCeO₂に見られ、陽イオンが面心立方格子、陰イオンが単純立方格子の配置をとる構造です。

立方晶系の特徴と物性

立方晶系の結晶は等軸晶系とも呼ばれ、対称性が最も高いため多様な結晶面が発達します。代表的な結晶形態として、立方体、八面体、十二面体があり、これらは鉱物の外形として観察されます。例えばスピネル(尖晶石、MgAl₂O₄)は立方晶系に属し、八面体結晶が最も一般的ですが、六面体や十二面体の結晶も存在します。

 

参考)ブラベー格子とは?結晶の美しい14パターンを徹底解説

立方晶系の物質は等方性を示すという重要な特徴があります。これは結晶のどの方向でも物理的性質が同じであることを意味し、例えばダイヤモンドの屈折率は全ての方向で2.417です。ただし、硬度に関しては結晶方位による異方性があり、ダイヤモンドでは立方体の面の対角線方向が最も硬く、十二面体の面と比べて100倍もの差があります。この性質はダイヤモンドのカット加工で活用されています。

 

参考)ダイヤモンドの物質特性 - Wikipedia

格子定数の観点では、立方晶系は a = b = c、α = β = γ = 90°という制約を持ち、単一のパラメータ(格子定数a)で結晶構造を記述できるため、X線回折による解析が比較的容易です。

 

参考)格子定数:結晶構造を知る上での基本 - はじめよう固体の科学

立方晶系の工業材料と応用

立方晶系の材料は工業的に極めて重要で、半導体材料として**シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)**がダイヤモンド構造(A4型)をとります。これらは電子デバイスの基礎材料として広く使用されています。

磁性材料では、磁鉄鉱(Fe₃O₄)がスピネル型構造(H1-1型)を持ち、立方晶系に属します。スピネル型構造はMgAl₂O₄を代表とし、多くの酸化物や硫化物がこの構造をとります。この構造は温度変化による構造相転移を起こすことがあり、高分解能粉末回折法による研究対象となっています。

 

参考)高分解能粉末回折によるスピネル化合物の構造相転移の研究

超伝導材料ではA15型構造が知られており、Nb₃SnやV₃Siなどがこの構造をとります。また、ペロブスカイト型構造(E2-1型)もチタン酸カルシウム(CaTiO₃)などに見られ、誘電材料や圧電材料として応用されています。

ブラベー格子と14種類の結晶構造の詳細解説

立方晶系と他の結晶系の対称性比較

結晶系は全部で7種類存在し、立方晶系、正方晶系、斜方晶系、六方晶系、三方晶系、単斜晶系、三斜晶系に分類されます。この中で立方晶系は最も対称性が高く、三斜晶系が最も低い対称性を持ちます。

 

参考)結晶美術館 - 結晶系

六方晶系は1つの6回回転軸を持ち、格子定数は a = b ≠ c、α = β = 90°、γ = 120°という制約があります。ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)などが六方最密充填構造(A3型)をとり、立方晶系の面心立方格子と並んで最密充填を実現しています。​
正方晶系は1つの4回回転軸を持ち、a = b ≠ c、α = β = γ = 90°という条件を満たします。ルチル型構造(C4型)がこの系の代表例で、二酸化チタン(TiO₂)などが該当します。​
立方晶系の結晶は、氷の多形の中にも存在します。氷には少なくとも19種類の多形が確認されており、その中には立方晶系の氷Ic(ダイヤモンド型構造)が含まれます。通常の氷は六方晶系の氷Ihですが、氷Icは急冷によって生成される準安定相です。

 

参考)高圧中性子回折実験が氷多形の研究にもたらしたもの

立方晶系の結晶構造を正確に決定するには、X線回折や中性子回折による高分解能測定が不可欠であり、対称性の変化を伴う構造相転移の研究においても重要な役割を果たしています。

 

参考)X線回折パターンからの対称性予測における知識発見−熟練者の勘…

 

 


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