礫岩は直径2mm以上の粒子(礫)が堆積して固まった堆積岩です。礫岩の表面は肉眼で一つ一つの粒子を識別できるほどデコボコしており、触るとゴツゴツした感触があります。礫岩には円礫岩と角礫岩の2種類があり、円礫岩は丸い礫が集まったもので水の働きを受けて形成され、角礫岩は角張った礫からできています。
参考)http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/sedimentaryrock/sedimentaryrock.html
円礫岩は河川や海岸で長距離運搬される過程で礫同士が擦れ合い、角が取れて丸くなることで形成されます。一方、角礫岩は岩石が砕けてできた礫があまり移動せずに堆積したもので、海底地すべりや火砕流に巻き込まれて形成されることもあります。礫のサイズによっても分類され、大きな岩屑が主体のものは粗い礫岩、小さな岩屑が多いものは細かい礫岩と呼ばれます。
参考)https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/08/51947/
日本国内では礫岩は県内全域で広く見られ、特に三畳紀と第三紀から第四紀の地層に多く分布しています。礫岩を構成する礫の種類を調べることで、その背後にある地質体(後背地)の情報を知ることができる重要な手がかりとなります。
砂岩は直径1/16mmから2mmの砂粒が堆積して固まった岩石で、手で触るとザラザラした質感が特徴です。砂岩は堆積岩の中でも最も一般的な岩石の一つで、川や海、風などの物理的な運搬堆積プロセスによって形成されます。砂粒の主成分は通常、石英(シリカ)鉱物で構成されており、顕微鏡で観察すると砂粒が集まっている様子が確認できます。
参考)https://oilgas-info.jogmec.go.jp/_res/projects/default_project/_project_/pdf/3/3061/199306_182a.pdf
砂岩の粒子の大きさによって性質が変わり、粒子が大きい砂岩は粗い砂岩、粒子が小さい砂岩は細かい砂岩と呼ばれます。砂粒の形状も重要な分類基準となり、丸い砂粒でできた砂岩は水流や風で長距離移動した後に堆積したことを示し、粒度がよく揃った石英粒が多いのが特徴です。一方、角張った砂粒が堆積した砂岩(アルコーズ砂岩)は、岩石が砕けた砂粒があまり移動せずに堆積したもので、石英以外に長石類や角閃石類の砂粒も含まれ、粒度があまり揃っていません。
砂岩は泥岩と互い違いの地層(互層)をなしていることが多く、泥岩より淡い色をしています。川の流れが川底の砂に様々な堆積構造や粒子配列を作り出すため、砂岩には特徴的な層理構造が観察されることがあります。日本では県内全域によく見られ、三畳紀と第三紀の地層に多く、化石を含むこともしばしばあります。
泥岩は直径1/16mm以下の非常に細かい粒子(主に粘土)が堆積してできた岩石です。泥岩の特徴は手触りが滑らかで、一つ一つの粒子が肉眼では識別できないことです。泥岩は黒っぽい色のものが多く、風化すると淡褐色に変化することがあります。
参考)絵で見る地球科学|地質を学ぶ、地球を知る|産総研地質調査総合…
泥岩はさらに細かく分類され、1/256mm以上1/16mm以下の粒子を主体とするものはシルト岩、1/256mm以下の粒子を主体とするものは粘土岩と呼ばれます。泥岩が弱い熱と圧力を受けると頁岩(シェール)や粘板岩(スレート)に変化します。
参考)堆積岩 - Wikipedia
泥岩の形成環境は、流れのない静かな水中、または緩やかな流れの場所で静かに堆積することが条件となります。泥岩中の粘土鉱物の含有量が高いため、水に触れると著しい粘土化や崩壊を起こすという水感受性が高い特性があります。この性質は、泥岩が炭鉱や建設現場で扱われる際の大きな課題となっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11599759/
日本では県内全域によく見られ、三畳紀、白亜紀、第三紀の地層に多く分布しており、化石を含むこともしばしばあります。泥岩は硯の原石としても利用され、例えば真庭市勝山の「高田硯」はペルム紀の泥岩を原石としています。
堆積岩の分類は粒子のサイズによって明確に定義されており、この基準は世界的に共通して使用されています。具体的には、直径2mm以上の粒子を礫、1/16mmから2mmの粒子を砂、1/16mm以下の粒子を泥と区分します。これらの粒子が固まってできた岩石をそれぞれ礫岩、砂岩、泥岩と呼びます。
参考)https://www2.omnh.jp/learning/geoguid/ganseki_taisekigan.html
産業技術総合研究所 地質調査総合センター:泥・砂・礫の区分
粒子サイズの分類基準について詳しく解説されています。
砂と泥の境界である1/16mm(0.0625mm)は肉眼での判別が困難なため、実際の岩石分類では見た目の判断が難しくなります。礫岩と砂岩の区分は2mmという基準があるため、粒の大きさを目視で比較的容易に判断できます。しかし、砂岩と泥岩の違いを正確に見分けるには、手触りや表面の質感を頼りにする必要があります。
参考)ろとうのみかた 『粒の大きさで堆積岩の分類をするには?』 -…
堆積岩を構成する砕屑物(さいせつぶつ)は、風化作用や運搬作用によって岩石が砕かれてできた粒子のことを指します。これらが選別され堆積して固まったものを砕屑岩と呼び、構成する主な粒子によって粒の小さい方から泥岩、砂岩、礫岩に区分されます。粒子サイズによる分類は、堆積環境や運搬過程を推定する上で極めて重要な情報源となります。
参考)http://www.ranhaku.com/web03/c4/1_01.html
現場で礫岩、砂岩、泥岩を見分けるには、いくつかの実用的なポイントがあります。まず、岩石をハンマーで割って内部の粒の様子を観察することが基本です。礫岩は表面がデコボコしており、小石サイズの粒が肉眼で識別できるため、最も判別が容易です。
参考)https://www.digirika.tym.ed.jp/wp-content/uploads/ishino-miwakekata.pdf
砂岩の見分け方は手触りが重要で、表面がザラザラしているのが特徴です。砂岩は泥岩より淡い色をしていることが多く、泥岩と互い違いの地層(互層)を形成している場合が多く見られます。また、砂岩は化石を含むこともあるため、化石の有無も判別の手がかりになります。
泥岩は手触りが滑らかで、粒の様子がよく分からないほど細かい粒子でできています。泥岩は黒っぽい色のものが多く、柔らかい性質を持っています。泥岩を水に濡らすと粘土のような質感になることもあり、これも判別の重要なポイントです。
実際の地質調査では、粒度表という道具を使用してより正確な分類を行うこともあります。また、岩石試験では礫岩(粒径2mm以上)、砂岩(粒径1/16mm以上2mm以下)、シルト岩(1/256mm以上1/16mm以下)、泥岩(1/256mm以下)という厳密な基準で分類されます。色や質感だけでなく、層理構造や含まれる鉱物の種類を観察することで、より正確な判別が可能になります。
参考)岩石試験を知ろう!!| 関東土質試験協同組合 | 室内土質試…
関東土質試験協同組合:岩石試験を知ろう!!
岩石の専門的な分類基準について詳しい情報が掲載されています。
礫岩、砂岩、泥岩はそれぞれ異なる産業分野で利用されており、その物理的特性が用途を決定しています。礫岩は構造が粗く透水性が高いため、地下水の貯留層として重要な役割を果たします。また、礫岩は建設資材としても利用され、道路の路盤材や砕石の原料として採取されることがあります。
参考)Redirecting...
砂岩は建築用石材として古くから利用されており、その耐久性と加工のしやすさから神社仏閣や洋風建築物の外装材として重宝されてきました。砂岩は石油や天然ガスの貯留岩としても極めて重要で、孔隙率と浸透率が高いことから、エネルギー資源の探査において主要なターゲットとなります。砂岩の堆積作用と粒子配列を解析することで、石油貯留層の特性を予測する技術も発展しています。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構:貯留岩形成過程解析技術
砂岩が石油・ガス貯留岩として果たす役割についての専門的な解説があります。
泥岩は透水性が低く、石油や天然ガスの根源岩(ソースロック)や、それらを封じ込める帽岩(キャップロック)として重要です。泥岩に含まれる有機物は石油生成の原料となり、地質学的に極めて価値の高い岩石です。また、泥岩は陶磁器の原料や硯の材料としても利用されており、真庭市勝山の高田硯はペルム紀の泥岩を原石としています。
参考)https://www.lyellcollection.org/doi/10.1144/SP454.16
一方で、泥岩は粘土鉱物を多く含むため、水に触れると膨張や崩壊を起こしやすく、土木工事や鉱山開発において安定性の課題を抱えています。この水感受性の高さは、トンネル掘削や道路建設において特別な対策が必要となる要因です。礫岩、砂岩、泥岩それぞれの特性を理解することは、地質工学や資源探査において不可欠な知識となっています。

東京サイエンス 岩石標本15種 (花崗岩、閃緑岩、 斑れい岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、泥岩、砂岩、礫岩、凝灰岩、石灰岩、チャート、ホルンフェルス、晶質石灰岩、片麻岩)