高校生・大学生の同行者がいれば、入場料が1,200円ではなく0円になります。
日展(日本美術展覧会)は、1907年(明治40年)に文部省第1回美術展覧会「文展」として始まった、日本で最も歴史の深い総合美術展です。今回の「第118回日展」という回数表記は、その長い歴史をそのまま数えたものであり、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書という5部門を備えた世界でも類を見ない規模の公募展として現在も続いています。
名古屋での巡回展は、CBC(中部日本放送)ラジオが民間で初めて開局した1951年(昭和26年)に松坂屋を会場にスタートしたという歴史があります。現在は愛知県美術館ギャラリーが会場となっており、2026年で75年以上の巡回の歴史を持つことになります。つまり名古屋展は単なる「東京展の出張版」ではなく、地元の文化史とともに育ってきた展覧会なのです。
今回の名古屋展の陳列点数は467点。内訳は日本画78点・洋画83点・彫刻54点・工芸美術100点・書152点で、東京本展で展示される全約3,000点のうち厳選された作品が並びます。陶芸好きが特に注目すべき第4科「工芸美術」は、染織・漆芸・陶芸・ガラス・人形・紙など多岐にわたるジャンルで100点が集結します。工芸だけで100点という規模は、陶芸ファンにとっては見応え十分です。
主催は公益社団法人日展と中部日展会で、CBCテレビ・CBCラジオ・中日新聞社が共催。愛知・岐阜・三重の各県および名古屋市が後援しており、地域をあげて取り組む展覧会であることが分かります。
第118回日展巡回展(名古屋)公式ページ(公益社団法人日展)
陶芸好きが今回の日展名古屋展2026でまず向かうべきは、第4科(工芸美術)特選受賞作、阪口浩史さんの「紅紫の器『濤』」です。公式の授賞理由には次のように記されています。「ロクロ成型と手びねりで作られた波形のフォルムは、量感と広がりがあり口づくりや稜線の表現も美しい。赤色の釉薬の流れも巧妙で見事である。焼き物素材の良さが伝わる秀作である」。これは要約すると、フォルム・稜線・釉薬の3つが高次元で融合した作品ということです。
阪口さんは岐阜県飛騨市出身で、岐阜県立多治見工業高等学校専攻科を卒業後、1995年に日展初入選を果たし、以後コツコツと作陶を重ねてきた作家です。「出来ることは、こつこつと続けること」という言葉が示すとおり、長年の積み重ねの末に今回の特選を掴んでいます。つまり今回の特選受賞作は、一夜にして生まれたものではなく、30年以上の作陶歴の結晶と言えます。
この作品を鑑賞するコツは、「フォルムを下から見上げる角度」でも確かめることです。波形の稜線は真正面からでは伝わりにくく、やや斜め下から見上げると立体的な量感が際立ちます。彫刻作品と同じく、陶芸も角度を変えて鑑賞することで見え方が大きく変わります。釉薬の流れ方は上部から観察すると、意図的なのか偶然的なのかという「炎との対話」の跡が読み取れます。これを楽しめると鑑賞の深みが増します。
美濃地区から日展入選者が多数輩出されている背景には、多治見・土岐を中心とした陶磁器産地の土壌があります。産地に暮らすことで、日常的に素材・窯・技法と向き合う環境が作家を育てているとも言えます。
第118回日展・第4科(工芸美術)特選授賞理由(公益社団法人日展・PDF)
日展の工芸美術部門には、陶芸以外にも染織・漆芸・ガラス・人形・竹工芸・七宝など多様なジャンルが混在しています。初めて訪れる陶芸ファンほど「陶芸作品だけ見る」という行動を取りがちです。しかしこれは実は少し損です。他ジャンルの表面処理・色彩設計・造形哲学を見ることで、陶芸作品を見る目が大きく広がります。
具体的な鑑賞の順序として参考になるのが、まず展示室全体をざっと歩いて俯瞰し、その後「気になった作品」に戻って集中する方法です。実際に日展を定期的に訪れているせとものファンのレポートでも、「一度ざっと全体を流してから、もう一度最初に戻ってゆっくり鑑賞する」という方法が有効だと紹介されています。最初からじっくり見ると体力が尽き、後半の作品をほとんど見られないことがあります。全体を先に掴むのが基本です。
また、会場の作品横にQRコードが設置されているケースがあり、スマートフォンで読み取ると作者自身のコメントが読めます。作家がどんな意図でその作品を制作したかを知ってから作品を再度見ると、鑑賞の質が格段に変わります。これは使えそうです。
工芸美術の展示室では、ガラスケース越しに展示される作品も多くあります。陶器を鑑賞するとき普段は手に取れる環境で見ている人にとって、ガラス越しの鑑賞は物足りなく感じることもありますが、これは美術展ならではのシチュエーションです。そのぶん「目線の高さ・角度・距離」を自分でコントロールして楽しむ観賞術を身につけると、展覧会での時間がぐっと豊かになります。
まずチケット料金の整理をしておきます。一般当日1,200円、前売り・20人以上の団体は1,000円です。「高校生・大学生は学生証提示で無料」という条件は見逃されがちです。同行する高校生・大学生がいれば、その人の入場料は0円になります。陶芸部活や美術系の授業で訪れる学生には特にメリットが大きいのです。中学生以下も無料ですので、家族で訪れた際の子ども料金は不要です。
前売り券の取り扱い場所は、中日新聞販売店・中日文化センター・CBCラジオ公式オンラインショップのほか、チケットぴあ(Pコード:687-365)・セブンイレブン(セブンコード:113-413)・ローソン(Lコード:43915)・ファミリーマート・イープラスなど多数あります。コンビニで手軽に購入できるため、当日券より200円お得な前売りを事前に確保しておくのが賢明です。
注目したいのが金曜日の夜間開館です。通常は午前10時〜午後6時(入場は午後5時30分まで)ですが、毎週金曜日のみ午後8時まで開館し、入場は午後7時30分まで可能です。平日昼間に来館できない仕事帰りの人でも、金曜日なら退勤後に立ち寄れます。夜間は昼間に比べて来場者が少ない時間帯になりやすく、ゆっくりと作品に向き合える穴場タイムと言えます。
交通アクセスは、地下鉄東山線・名城線「栄」駅または名鉄瀬戸線「栄町」駅から徒歩約3分(4番出口からオアシス21連絡通路利用)です。「ドニチエコきっぷ」または一日乗車券を当日利用した方は当日料金から100円引きになります(他のサービスとの併用不可)。車で来場する場合は愛知芸術文化センター地下のアートパーク東海駐車場を利用できます。
日展名古屋展2026 公式サイト(CBCテレビ)|チケット・イベント情報
日展名古屋展2026は、467点の本展示だけでは終わりません。同じ愛知県美術館ギャラリーのJ室(Junior展示室)に「翔け!未来へ こども達ー 日展名古屋展SDGs特別企画ー」が設けられており、CBCこども絵画展とのコラボ作品として応募作品2,300点余りがすべて展示されています。
この企画に気づかず帰ってしまう来場者が多いというのが、日展常連者の声です。実際に訪れた陶磁器愛好家のレポートでも「混みかたに比較するとずいぶん空いていた」「気が付かずに帰っちゃう人も多い」との記述があります。子どもたちの自由な表現は、長い修練の末に生まれた日展作品とは異なる「生命力」に満ちており、陶芸の「土と遊ぶ原点」を思い起こさせてくれます。会場を出る前に必ず立ち寄ることをおすすめします。
また、会期中には日展作家によるワークショップが開催されました。「カラー粘土を使って作ってみよう!」「デッサンに挑戦!」「自分のはんこ(落款)を作ってみよう!」「地元が誇る伝統工芸 七宝焼体験」という4種類のプログラムが1月31日から2月8日にかけて各日14時〜15時30分に実施され、参加費は各日1人1,500円でした。七宝焼は名古屋の伝統工芸で、陶芸と同じく「火と素材の化学」を楽しめる工芸です。陶芸好きにとっては制作プロセスの親しみやすさもあり、ワークショップへの関心が高いジャンルと言えます。
さらに、2026年2月11日(水・祝)は「日展の日」として来場者プレゼントが用意されました。祝日の来場は込み合いやすい一方で、限定プレゼントがあるのは嬉しい点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 🏛️ 会場 | 愛知県美術館ギャラリー(愛知芸術文化センター8階) |
| 📅 会期 | 2026年1月28日(水)〜2月15日(日)※月曜休館 |
| ⏰ 開館時間 | 10:00〜18:00(金曜のみ20:00まで) |
| 🎫 入場料(一般) | 当日1,200円 / 前売り1,000円 |
| 🎓 高大生 | 学生証提示で無料 |
| 👶 中学生以下 | 無料 |
| 🎨 工芸美術展示数 | 100点(全467点中) |
| 🏅 工芸美術特選 | 阪口浩史「紅紫の器『濤』」ほか計10名 |
| 🚇 アクセス | 地下鉄「栄」駅下車・4番出口から徒歩3分 |
| 📞 問い合わせ | 中部日展会事務局(CBCテレビ内)TEL:052-241-8111 |
名古屋市観光情報公式サイト「名古屋コンシェルジュ」による日展名古屋展2026の詳細情報