熱交換器仕組み図解|プレート式とシェルアンド構造を徹底解説

熱交換器の仕組みを図解でわかりやすく理解したい方へ。プレート式やシェルアンドチューブ式など主要な種類の構造から、効率を高める伝熱係数の考え方、メンテナンスのポイントまで詳しく説明します。鉱石の精製工程など産業用途で熱交換器はどう活用されているのでしょうか?

熱交換器の仕組みと図解による構造理解

📋 この記事でわかること
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熱交換器の基本原理

高温から低温へ熱が移動する性質を利用し、流体間で効率的に熱を交換する仕組みを解説

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プレート式とシェルアンドチューブ式の構造

薄板を積層したプレート式と、円筒内に管を配置したシェルアンドチューブ式の違いを図解

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効率向上とメンテナンス

伝熱係数の最適化方法や洗浄による性能維持、産業での活用事例を紹介

熱交換器における熱移動の基本原理と図解

 

熱交換器は、温度の高い物質から温度の低い物質へ熱が移動する性質を利用した装置です。このシンプルな物理法則を応用し、2種類の流体が直接混ざることなく熱だけを効率的に交換します。例えば金属パイプ内を熱湯が流れると、パイプを通して周囲の空気に熱が伝わり、熱湯が冷却されます。産業プラントでは、このような熱エネルギーの移動を意図的に制御することで、廃熱回収やプロセス温度の調整を実現しています。

 

参考)熱交換器とは - 仕組みと用途

熱交換のメカニズムは「温度差」が駆動力となる点が特徴です。温度差が大きいほど熱交換量は増加し、例えば熱湯を冷やす際に水よりも氷を使う方が早く冷える理由はここにあります。工業用熱交換器では、この原理に基づき伝熱板や伝熱管を介して流体間で熱を移動させる構造を採用しています。熱伝導性の高い素材を使用するほど効率が向上するため、銅やアルミニウム、ステンレス鋼などが伝熱面の材料として選ばれます。

 

参考)熱交換器の原理は?どのように熱を交換するのか|アルファラバル…

鉱石の精製や金属加工といった重工業では、高温プロセスの温度調節に熱交換器が不可欠な役割を果たします。鉄鋼生産では炉で発生する高温を制御し、鉱石処理では反応温度を最適範囲に維持するために使用されています。こうした過酷な環境でも安定した性能を発揮できるよう、耐圧性や耐食性に優れた設計が求められます。

 

参考)https://www.kelvion.com/jp/%E7%94%A3%E6%A5%AD%E5%88%A5%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/%E9%87%8D%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%BB%BD%E5%B7%A5%E6%A5%AD

熱交換器のプレート式構造とその特徴

プレート式熱交換器は、波形に成型した薄い金属板(伝熱プレート)を多数積層し、板の間を高温流体と低温流体が交互に流れる構造です。各プレートに開けられた穴を通じて流体が導かれ、プレート表面で対向流が形成されることで効率的な熱交換が行われます。伝熱板にはステンレスやチタンなど耐食性の高い材料が使われ、ガスケットで接合されています。

 

参考)全熱交換器の仕組みを図を用いて解説!

この方式の最大の利点は、プレート枚数を増減することで容量調整が可能な点です。船舶用など設置スペースが限られる場所では、コンパクトで高効率なプレート式が好まれます。また伝熱面積が広く、わずかな温度差でも最大限に活用できるため、省エネルギー性に優れています。メンテナンス時にはフレームから伝熱プレートを取り外し、高圧洗浄機やデッキブラシで洗浄します。プレートガスケットの装着部も丁寧に洗浄し、異物が残らないよう注意が必要です。

 

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プレート式熱交換器は食品工場や化学プラントで広く採用されており、冷水管に内側フィンを挿入する改良により冷却時間が短縮され、生産ラインの稼働効率が向上した事例も報告されています。小型軽量で熱効率が高いことから、今後も幅広い用途での利用拡大が期待されます。

 

参考)熱交換器とは何か?その基本的な仕組みを紹介|アルファラバルの…

熱交換器のシェルアンドチューブ式の仕組み

シェルアンドチューブ式熱交換器(多管式熱交換器)は、太い円筒形の胴体(シェル)内に細い多数の管(チューブ)を配置した構造です。シェル側を流れる流体とチューブ内を流れる流体が管壁を介して熱交換を行います。古くから使用される一般的なタイプで、伝熱係数計算の基礎式も確立されており、低圧から高圧まで幅広い条件に対応できます。

 

参考)様々な熱交換器の形を知ろう

構造的には固定管板式、U字管式、遊動頭式の3種類に大別されます。固定管板式はチューブ両端を管板に固定した最もシンプルな構造で、伸縮接手により熱応力を回避します。U字管式はチューブをU字状に曲げて一枚の管板に固定し、温度変化による自由な伸縮が可能でシェルからの抜き取りも容易です。遊動頭式はチューブ全体をスライドできる構造を持ちます。

 

参考)多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式熱交換器)|1限目 熱…

シェルアンドチューブ式の強みは高い耐圧性能にあり、大型工場や化学プラントなど過酷な環境でも安定して使用できます。圧力損失を小さく設計でき、高粘度の流体にも対応可能なため、油圧関連機器での利用も多いです。ただしプレート式と比較するとサイズが大きくなる点がデメリットです。メンテナンスでは適正水圧の高圧水流で管内の汚れを掻き出し、材質に応じた専用クリーナーを使用すると効果が高まります。

 

参考)熱交換器の掃除とは | 清掃する理由から構造別の手順まで徹底…

熱交換器の伝熱係数と効率向上の方法

熱交換器の性能を表す指標として総括伝熱係数(U値)があります。これは流体から伝熱面への熱伝達、伝熱壁内の熱伝導、伝熱面から流体への熱伝達をまとめた値で、U値が大きいほど熱が伝わりやすくなります。総括伝熱係数は温度条件から得られる対数平均温度差を用いて計算され、熱交換器の設計では必要伝熱面積を求める際に重要な役割を果たします。

 

参考)基礎式|2限目 今さら聞けない…|熱交ドリル|株式会社 日阪…

効率を向上させる方法は主に3つあります。第一に伝熱面積を広くすることで、プレート数や管数を増やすと熱の伝わる量が増加します。第二に伝熱効率を高める方法として、熱伝導性の高い材質への変更、伝熱壁の薄肉化、汚れの除去、流体流量の増加が有効です。第三に対数平均温度差を大きくすることで、温度差が大きいほど熱交換量が増えます。

 

参考)熱交換器の効率をアップさせる3つの方法!具体例でわかりやすく…

日阪製作所の熱交ドリル
総括伝熱係数の計算方法と実例が詳しく解説されており、熱交換器設計の参考になります。

 

伝熱面の汚れは熱交換器の天敵であり、設計段階で汚れ係数を考慮することで性能低下を見込んだ設計が可能になります。実際の運用では定期的な洗浄により性能を維持することが重要です。ある食品工場では冷水管に内側フィンを挿入したことで熱交換器の出口温度が安定し、冷却時間が短縮されて生産ラインの稼働効率が向上した事例があります。材質変更による伝熱効率の改善は特に効果が高く、熱交換器最適化の鍵となります。

 

参考)熱交換器の性能を左右する「周辺放熱」の最適化

熱交換器のメンテナンスと洗浄による性能維持

熱交換器の性能を長期間維持するには、定期的なメンテナンスと洗浄が欠かせません。伝熱面に汚れが付着すると熱伝導が阻害され、効率が大きく低下します。プレート式熱交換器の場合、伝熱プレートの洗浄前後を比較すると汚れの影響が明確で、汚れが蓄積すると性能に顕著な影響が出ます。

 

参考)http://www.showa-hex.co.jp/products_04.html

プレート式のメンテナンス手順は、まずフレームからプレートを取り外し、高圧洗浄機またはデッキブラシを使用して洗浄します。デッキブラシを使う際は伝熱プレートに傷をつけないよう注意が必要です。特にプレートガスケット装着部(シールライン)は残留物をしっかり除去しないと漏れの原因になるため、入念な洗浄が求められます。専用洗剤を使用すると洗浄効果が高まります。

 

参考)セルフメンテナンス|メンテナンスサポート|株式会社 日阪製作…

シェルアンドチューブ式では、適正水圧の高圧水流で管内の汚れを掻き出す方法が一般的です。管の材質によっては専用クリーナーがあり、最適なものを選ぶことで洗浄効率が向上します。メンテナンスの際には十分なスペースを確保する必要があり、プレート式では伝熱プレートをキャリングバーから傾けて脱着します。

 

参考)https://zensin.co.jp/upload/product/heat_exchanger/gasket/manu_gasket.pdf

日阪製作所のメンテナンスサポート
プレート式熱交換器の詳細な分解・洗浄手順と注意点が図解されており、実務に役立ちます。

 

定期的な洗浄により伝熱性能を回復させることで、エネルギー効率の維持と運用コストの削減につながります。ある産業施設では洗浄後に表面温度が20〜25℃低下し、周辺機器の誤作動が解消されただけでなく、冷却ファンの稼働頻度が減少して年間約10%の電力削減に成功しました。

鉱工業における熱交換器の産業用途と活用事例

重工業と軽工業において、熱交換器は生産プロセスに不可欠な役割を担っています。鉄鋼生産などの重工業では高温プロセスでの熱調節、パルプや紙の生産などの軽工業ではエネルギー生成の最適化と正確な温度制御に使用されます。鉱石の精製工程では反応温度を適切に維持し、金属加工では炉の温度管理に熱交換器が活用されています。

産業用熱交換器の主なメリットとして、廃熱回収による省エネルギー化が挙げられます。本来失われるはずのプロセス熱を回収して再利用することで、エネルギー消費を最小限に抑え、運用コストの削減につながります。また熱回収により温室効果ガスの排出が減少し、環境フットプリントの改善にも貢献します。耐久性が高くメンテナンスがほとんど不要で、変化する産業プロセスに適応できる柔軟性も備えています。

Kelvionの重工業・軽工業向けソリューション
鉄鋼、石油、鉱石産業における熱交換器の具体的な活用事例と省エネ効果が紹介されています。

 

自動化とデジタル化の進展により、産業用熱交換器の役割も進化しています。データ分析による運転最適化や予知保全により、プロセス効率が向上しエラーが減少します。鉱石処理施設や化学プラントなどエネルギー消費が大きい産業では、効率的な熱交換器の導入が競争力強化の鍵となっています。

 

 


熱交換器設計ハンドブック 2版