モリブデン酸塩は、モリブデン(VI)のオキソアニオンを含む化合物で、その化学式は非常に多様です。最も単純な形態はオルトモリブデン酸イオンMoO₄²⁻で、これは四面体構造を持っています。この四面体構造では、モリブデン原子が中心に位置し、4つの酸素原子が正四面体の頂点に配置されています。
参考)モリブデン酸塩 - Wikipedia
代表的なモリブデン酸塩には、モリブデン酸ナトリウムNa₂MoO₄があり、これは工業用途で広く使われています。また、天然鉱物としてパウエル石CaMoO₄も存在し、正方晶系の結晶構造を持ちます。
参考)モリブデン酸塩鉱物(モリブデンさんえんこうぶつ)とは? 意味…
より複雑なモリブデン酸イオンも多数存在します。例えば、Mo₂O₇²⁻は1つの酸素原子が橋渡しをする2つの四面体が角を共有した構造です。さらに大きなポリオキソアニオンでは、モリブデン原子の多くが配位数6を取り、角を共有し合ったMoO₆八面体から構成されます。
モリブデン酸塩には、モリブデン原子の数によって様々な種類が存在します。以下は主な化学式の一覧です:
これらのポリオキソアニオンは固体状態でのみ存在し、イソポリメタレートに分類されます。Mo-O結合距離は、末端M-Oが約170 pm、架橋M-O-Mでは約190 pmと測定されています。
参考)モリブデン酸塩とは - わかりやすく解説 Weblio辞書
モリブデン酸アンモニウム(NH₄)₆Mo₇O₂₄·4H₂Oは、工業的に最も重要な化合物の一つで、MoO₃含有量が理論値で81.5%に達します。この化合物は触媒用原料、金属用原料、表面処理剤として幅広く利用されています。
モリブデン酸塩は天然の鉱物としても産出し、錯陰イオン(MoO₄)²⁻と陽イオンによって構成されています。代表的なモリブデン酸塩鉱物には以下のものがあります:
ウルフェナイト(モリブデン鉛鉱)PbMoO₄は、正方晶系の黄色から赤褐色の四角板状結晶で、比重6.5~7、モース硬度2.5~3の特性を持ちます。タングステンがモリブデンを約1/2まで置き換え、鉛重石PbWO₄と部分的に固溶体を形成することが知られています。鉛やモリブデンを含む鉱床の酸化帯に産出し、メキシコ、オーストリア、アメリカなどが主要産地です。
パウエル石CaMoO₄は正方晶系の黄色から緑黄色の錐状または薄板状結晶で、モリブデンの一部がタングステンで置き換えられたものも存在します。鉱床の酸化帯に産出する特徴があります。
リンドグレン鉱Cu₃(MoO₄)₂(OH)₂は単斜晶系の緑色板状結晶で、主に石英斑岩銅鉱床に産出します。この鉱物は銅イオンを含む特殊な構造を持つモリブデン酸塩です。
モリブデン酸塩鉱物は、タングステン酸塩やクロム酸塩と同じAO₄型の陰イオンを構成単位とする鉱物グループに属します。モリブデン酸イオンMoO₄²⁻とタングステン酸イオンWO₄²⁻はやや扁平な四面体を形成し、クロム酸イオンCrO₄²⁻とは構造が異なります。
モリブデン酸塩は分析化学において重要な試薬として活用されており、特にりん酸塩やけい酸塩の定量分析に使用されます。
参考)12054-85-2・モリブデン(Ⅵ)酸アンモニウム四水和物…
モリブデン酸アンモニウムによるりん酸分析では、りん酸イオンとモリブデン酸塩がヘテロポリ酸錯体のりんモリブデン酸を形成します。この錯体を還元剤のアスコルビン酸で還元すると、モリブデン青と呼ばれる青色化合物が生成し、その吸光度を測定することでりん酸濃度を求めることができます。
参考)https://www.pref.kanagawa.jp/documents/2952/riyou07.pdf
モリブデン酸アンモニウム(NH₄)₆Mo₇O₂₄·4H₂Oは、りん酸塩、けい酸塩、ヒ酸、鉛、アルカロイドの定量分析に用いられます。JIS K8905特級に適合した製品は、結晶が大きく溶解に時間がかかるため、粉砕して粉末状にしたものが試薬として提供されています。
参考)http://bsikagaku.jp/f-fertilization/HH.pdf
神奈川県環境科学センターの分析手順書には、全りんの測定におけるモリブデン酸アンモニウム溶液の使用方法が詳細に記載されており、水質分析の実務で参考になります。
モリブデン酸塩は、マラカイトグリーンとともにりん酸の分析にも利用され、比色定量分析法として確立されています。また、モリブデンブルー法と呼ばれる、溶液中のシリカ濃度を調べる比色定量分析にも使用されます。
発色液中の試薬濃度は、リン酸のPに対するモリブデン酸塩のMoのアトム比Mo/Pによって決定され、最適な吸光度を得るための試薬量はリン酸濃度に応じて調整されます。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/7/8/7_8_505/_pdf
モリブデン酸塩は工業分野で多様な用途に使用されており、それぞれの化学式が特定の機能を果たしています。
防錆剤としてのモリブデン酸ナトリウムNa₂MoO₄·2H₂Oは、ビルや工場の配管に使用される炭素鋼の防錆剤として重要な役割を果たします。不動態皮膜を形成し、鋼材の腐食を防ぐ働きがあります。当初はクロム酸塩の代替物として注目されましたが、おだやかな防錆作用を示すことが特徴です。
参考)モリブデン酸
モリブデン酸ナトリウムの化学式Na₂MoO₄·2H₂Oは、式量242、MoO₃含有量が理論値で59.5%です。主な用途には、不凍液用原料、無機顔料用発色剤、塩基性染料媒染剤、金属表面処理剤、防錆剤原料、微量元素肥料、窯業用副原料などがあります。
触媒用原料としてのモリブデン酸アンモニウムは、化学工業において酸化触媒、脱硫触媒の主要成分として使用されています。モリブデンは触媒作用を持った重要元素であり、ヘテロポリ酸塩の形成元素であることから、新しい触媒分野としての展開が期待されています。
参考)http://www.taiwa-sakaide.co.jp/2093.html
泰和株式会社の製品情報によれば、使用済触媒からモリブデン酸の形で回収され、高純度三酸化モリブデンやモリブデン酸アンモニウムの原料となります。
工業的には、二酸化モリブデン、モリブデンイエロー、モリブデン酸塩、パラモリブデン酸アンモニウムなどの製品が、潤滑剤、触媒、顔料、難燃剤、発煙抑制剤、有機ポリマーの腐食抑制剤として使用されています。これらの化合物は、金属表面処理剤、セラミックス添加剤、焼結金属添加剤としても活用されています。
参考)モリブデンの発見、性質、応用
モリブデン酸の化学式H₂MoO₄は、分子量161.95、CAS登録番号7782-91-4で登録されており、一水和物MoO₃·H₂Oや二水和物MoO₃·2H₂Oの性質がよく調べられています。固体構造は配位高分子で、4つの頂点を共有する八面体配位したMoO₃·H₂Oユニットの層から形成されています。
参考)モリブデン酸 - Wikipedia
農業分野では、モリブデン酸アンモニウムとモリブデン酸ナトリウムが速効性のモリブデン肥料として、モリブデン供給源に使われており、主に養液栽培肥料に添加されます。

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