真電荷(しんでんか)は、別名「自由電荷」とも呼ばれ、真空中に取り出すことができる電荷を指します。この電荷は自由に移動したり外部に取り出したりできる性質を持っており、電気現象における最も基本的な電荷です。
参考)【やさしい電磁気学】真電荷と分極電荷
真電荷の代表例としては、コンデンサの極板に蓄えられた電荷や、電極に存在する電荷があります。これらは外部から電流として加えたり取り出したりすることが可能で、電気回路における実際の電荷の移動を担っています。
参考)静電気/誘電体(2)分極(その1)真電荷と分極電荷: JO3…
物理学的には、真電荷の体積密度は電束密度の発散に等しいというガウスの法則が成り立ちます。つまり、真電荷は電束密度ベクトルDの源となる電荷であり、全電荷から束縛電荷(分極電荷)を引いたものとして定義されます。
参考)真電荷 - Wikipedia
分極電荷は、誘電体が電場中に置かれたときに誘電分極という現象によって生じる電荷です。誘電体を構成する原子や分子は通常、全体として電気的に中性ですが、外部電場が加わると正電荷と負電荷の中心位置がずれて電気双極子が形成されます。
参考)http://www.emlab.cei.uec.ac.jp/jugyo/h28_kaiseki_denjiki/notes3.pdf
この電気双極子には永久双極子と誘起双極子の2種類があります。永久双極子は水分子や塩化水素分子のように、分子構造や構成原子の電気陰性度差によってもともと電気双極子となっているものです。一方、誘起双極子はメタン分子や二酸化炭素分子のように、真電荷を近づけると原子核や電子の位置がずれて電気双極子となるものを指します。
誘電体内部では隣り合う双極子の正負電荷が互いに打ち消し合いますが、誘電体の表面では打ち消し合える隣の双極子が存在しないため、誘電体表面に正負の電荷が現れます。この表面に現れた電荷が分極電荷であり、自由に移動したり外部に取り出したりすることはできません。
誘電分極と分極電荷の詳細な解説(やさしい電磁気学)
コンデンサにおいて、真電荷と分極電荷は明確に区別される重要な役割を担っています。平行平板コンデンサの極板に電荷を与えると、その電荷は真電荷として極板に蓄えられます。例えば、極板AとBにそれぞれ+Qと-Qの電荷を与えた場合、これらは両方とも真電荷です。
参考)https://zenn.dev/yusuk3/scraps/342f24e79de59d
極板間に誘電体を挿入すると、誘電体内部で分極が生じます。真空中で表面密度σの電荷を与えた平行電極板に誘電体を挟むと、分極によって極板に密度σ'の分極電荷を生じます。σとσ'は異符号であるため、極板の見かけ上の電荷密度はσ-σ'になり、誘電体内部の電界の強さは真空の場合より減少します。
この現象により、同じ電圧を印加した場合でも、誘電体を挿入することでコンデンサの静電容量が増加します。分極電荷は誘電体が電場中に置かれているときのみ一時的に表面ににじみ出るだけで、誘電体から取り出すことはできません。一方、真電荷は外部回路を通じて自由に出し入れできるため、電気エネルギーの蓄積と放出を担う本質的な電荷となります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/45/2/45_2_194/_pdf
コンデンサと誘電体の電磁気学(J-STAGE)
導体と誘電体では、真電荷の振る舞いが根本的に異なります。コンデンサの極板間に導体を入れた場合、導体内では外部電場を打ち消そうと真電荷(自由電荷)が自由に動き回ります。ここで重要なのは、移動する因子が自由に動き回れる真電荷であるということです。
参考)【電磁気学】導体と誘電体の違い。 - サクサクわかる!電気・…
真電荷は自由に動けるため、導体内部における外部電場の影響をちょうどゼロになるように真電荷が移動します。これが高校物理でも扱う「極板間に導体を挿入した場合の電界はゼロである」という現象の物理的意味です。
一方、誘電体の場合は真電荷が自由に移動することはできません。その代わりに、電気双極子が整列する誘電分極という現象が起こり、表面に分極電荷が現れます。誘電体内部の電場は完全にゼロにはならず、真空中よりも弱くなるだけです。
参考)誘電体と分極
物質を構成する電子と原子核がもつ電荷すべてを含めたものを自由電荷と呼び、そこから分極により部分的に偏った分極電荷を差し引いたものが真電荷となります。この区別は、誘電体のある空間で電場を正確に計算する際に不可欠です。
参考)真電荷(シンデンカ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
導体と誘電体における電荷の振る舞いの違い(電磁気学解説)
真電荷の最も重要な性質の一つは、電束という仮想的な線の源となることです。真電荷から電束が生じ、この電束から電束密度Dが定義されます。電束密度は真電荷が作る源場であり、ある閉曲面S内に存在する真電荷の総和Qfが作る電束密度は、ガウスの法則を満たすように定義されます。
参考)【やさしい電磁気学】電束と電束密度
ガウスの法則によれば、電束密度Dと面積素ベクトルとの内積を閉曲面上で足し合わせたものは、閉曲面内に存在する真電荷の総和に等しくなります。これは数式で表すと、∇⋅D=ρ(ρは真電荷の体積密度)という関係式になります。
興味深い点は、分極電荷は電束密度の発散源にならないということです。電束密度は真電荷のみに反応し、分極電荷の影響は誘電率という物質定数の中に織り込まれています。このため、誘電体がある空間でも、真電荷についてのみガウスの定理を考えればよく、計算が大幅に簡略化されます。
電束密度の単位はC·m⁻²(クーロン毎平方メートル)で表され、これは単位面積あたりの真電荷量を意味します。真電荷と電束密度の関係を理解することは、鉱石や誘電体材料の電気的性質を解析する上で基礎となる知識です。
電束と電束密度の詳細解説(やさしい電磁気学)