紫外線防止剤には、大きく分けて「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2種類が存在します。この2つは紫外線から肌を守る仕組みが根本的に異なり、それぞれに特徴的なメリットとデメリットがあります。吸収剤は紫外線を化学的に吸収して熱エネルギーなどに変換することで肌への影響を防ぐ仕組みです。一方、散乱剤は物理的に紫外線を反射・散乱させることで肌を守ります。
参考)https://www.laroche-posay.jp/dermclass/article-014.html
紫外線吸収剤の代表的な成分には、メトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン-3などの有機化合物があります。これらは透明で無色のため、肌に塗った際に白浮きせず、使用感が良好です。紫外線散乱剤の主な成分は酸化チタンと酸化亜鉛という白色の無機粉末です。酸化チタンは主にUV-Bを、酸化亜鉛はUV-Aをより効果的に防ぐ特性を持っています。
参考)https://www.yuskin.co.jp/hadaiku/detail.html?pdid=141
吸収剤は少量でも高い紫外線防止効果を発揮し、透明なので白浮きせず、きしみにくいというメリットがあります。また、油分に溶けやすい性質から伸びが良く、肌なじみが優れています。しかし、肌の上で化学反応を起こすため、敏感肌の方や体質によっては刺激となるケースがあり、まれにかぶれる可能性も指摘されています。
参考)「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の違いはなんですか。
散乱剤のメリットは、肌にやさしく敏感肌でも使いやすい点です。化学反応を起こさず物理的に紫外線を反射するため、肌への刺激が少なく、ヒト試験や動物実験でも皮膚刺激性や眼刺激性がほとんどないことが報告されています。塗ってすぐに効果を発揮する即効性もあり、外出前にさっと使えるのもポイントです。デメリットとしては、白色の粉末を使用しているため白浮きして見える場合があり、水やアルコール、油に溶けにくいため伸びが悪く感じられることがあります。
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紫外線吸収剤は、吸収剤自体がスポンジのように紫外線を吸収し、皮膚に紫外線が届くのを防ぐ仕組みです。吸収した紫外線は熱エネルギーなどに変化させて肌表面から放出されるため、肌に紫外線を吸収しやすくしたり、肌が熱くなるようなことはありません。UV-A吸収剤、UV-B吸収剤というように特異的な吸収波長があり、配合されている成分によって紫外線の種類に対する対応度が異なります。
紫外線散乱剤は、粉体の散乱剤が鏡のように紫外線を反射・散乱させて、皮膚に紫外線が届くのを防ぐ物理的な仕組みです。散乱剤(パウダー)が肌を均一に覆って紫外線を肌表面で反射、散乱させて紫外線の影響を防ぎます。酸化亜鉛は紫外線への対応波長が広く、ロングUVAにも対応できる特徴があります。一方、酸化チタンは酸化亜鉛ほど紫外線への対応波長が広くなく、ロングUVAには対応できないという違いがあります。
参考)花王
吸収剤に使われる有機化合物は、よりUV-Aに注目した製品であればUV-Aに対する反応を起こす有機化合物が多く配合され、UV-Bに注目した製品であればUV-Bに対する反応を起こす有機化合物が多く配合されています。全商品の75%に配合されている代表的な成分として、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(主にUV-Aを吸収)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(主にUV-Bを吸収、においに特徴がある)、オキシベンゾン-3(UV-AとUV-Bの両方を吸収)があります。
散乱剤は天然の無機粉末なので、基本的に肌に優しい成分とされています。チタン鉱石から生産される白色の化合物である酸化チタンは、紫外線のA波(UVA)とB波(UVB)の両方を防ぐ効果があります。酸化亜鉛はUVAとUVBを散乱し、酸化チタンに比べると紫外線防御力は劣りますが、透明性が高いため紫外線散乱剤としてよく使われています。
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白浮きに関する最も大きな違いは、吸収剤は白くならず、散乱剤は白くなる傾向があることです。紫外線散乱剤は白色の無機粉末を使用しているため、肌の上にのせたときに「白浮き」して見える場合があります。最近では散乱剤の成分である酸化チタンや酸化亜鉛をナノ化したものや、微粒子化したものも多く、白みの目立たないものも増えています。
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一方、紫外線吸収剤は透明で、他の分子と結びつきやすい性質があるため、肌に塗布したときの感触が良くなる傾向があります。無色透明で白浮きせず、油分に溶けやすいため塗りやすいといえるでしょう。紫外線吸収剤入りの日焼け止めは、白い粉末を使っていないことが多く、肌になじみやすいのが特徴です。
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散乱剤のデメリットとして、酸化チタンは水やアルコール、油に溶けにくいため、伸びが悪く感じられることがあります。紫外線吸収剤に比べて、使用感が悪く、肌に伸びにくく、きしむような感触があるのも紫外線散乱剤の特徴です。散乱剤は皮脂を吸着しやすいため、乾燥肌の人には保湿力のある処方を選ぶ必要があります。
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白浮きを抑えるためには、紫外線防止剤の配合の仕方にこだわった日焼け止めを選び、正しく塗ることが大切です。最近では紫外線散乱剤に対して、微粒子化する技術を使って白浮きしにくい成分が登場しています。ノンケミカルの日焼け止めでも微粒子化した酸化亜鉛や酸化チタンを使っているものは、白浮きしにくくおすすめです。ミルクやジェルタイプなど水分が多いテクスチャーの商品は、伸びがよく、肌にスッとなじむため、塗りムラや白残りを防げます。
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紫外線吸収剤は、肌に塗った吸収剤と紫外線が化学反応を起こして紫外線を吸収するため、肌が敏感な方や体質によっては刺激となるケースがあります。肌に直接働きかける力が強いため、成分によっては肌に合わない場合もあり、その点がデメリットとして挙げられることもあります。個人差はありますが、ごくまれにかゆみなどの刺激を感じる場合があるため、肌に良くないものというイメージがあります。
参考)https://favs-official.com/blogs/skin-column/uv-absorber-for-sensitive-skin
しかし、現在使用されているものは安全性の認められた成分であり、化粧品を普通に使える人が正しく使用される分には、あまり神経質になる必要はありません。人によっては成分が刺激になってしまう場合もあるので、気になる方は手や足の一部に試し塗りをしてから使うとよいでしょう。敏感肌の方は「紫外線吸収剤カプセル化」などの表示がついた刺激を抑えた処方の日焼け止めがおすすめです。
紫外線散乱剤は、紫外線吸収剤と違って肌表面で化学反応を起こさないため、肌への刺激が少ないことがノンケミカルの大きな特徴といえます。肌にやさしく敏感肌でも使いやすく、紫外線吸収剤による刺激がないため、肌荒れしやすい人や赤ちゃんにも使いやすいです。敏感肌だけでなく、乾燥肌やインナードライ肌といったさまざまな肌タイプの人に適した日焼け止めです。
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ノンケミカルの最大のメリットは、肌への刺激が少ないことで、ヒト試験や動物実験などでも、皮膚刺激性や眼刺激性がほとんどないことが報告されています。また、金属アレルギーになりにくいのもメリットです。加えて、紫外線吸収剤よりもクレンジングがしやすく、石けんで簡単に落とせる製品もあります。紫外線散乱剤は、その原料の性質から肌につけると白っぽく残るのが難点でしたが、最近では白浮きしにくい仕様に改良されてきています。
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紫外線吸収剤は、少量でも紫外線防止効果が高いという特徴があります。吸収剤のほうが紫外線防御効果が高くなり、散乱剤と比較すると防御力に優れています。紫外線散乱剤だけでつくられた日やけ止めは「ノンケミカル」と表示されることもありますが、ベールよりもスポンジの方が紫外線を透過させない力があるように、散乱剤と比較すると吸収剤のほうが紫外線防御効果が高くなります。
紫外線散乱剤のデメリットの一つとして、SPF値を上げにくいという点があります。そもそも、紫外線散乱剤の成分は酸化チタンや酸化亜鉛のため、白色の粉末でできており、たくさんの量を使えば使うほど、バルクが白くなり、肌への塗布時に白浮きします。白浮きを防ぐために、酸化チタンや酸化亜鉛を多く配合することができず、結果としてSPF値が上げにくくなります。酸化チタンは濃度を濃くすると真っ白になるため高いSPFやPAのものを作りにくいという特徴もあります。
参考)https://ameblo.jp/rik01194/entry-12335296709.html
SPF値をあげるために、散乱剤をたくさん配合すると白くなりやすい上に、肌がきしみやすくなるのが難点です。また、紫外線吸収剤に比べて紫外線防御力は劣ります。しかし、散乱剤は光による劣化が少ないため、紫外線防止効果の持続性においても優秀で、長時間肌にのせていても比較的低刺激であることも成分特徴の一つとなっています。
参考)https://www.saishunkan.co.jp/domo/column/skin-troubles/uv_absorber/
紫外線吸収剤は即効性と高い防御力が魅力ですが、肌に刺激を感じやすい人には向かない場合もあります。一方、紫外線散乱剤は、肌への優しさと安定した効果が特徴です。レジャーや日中外出する機会が多い人には吸収剤がおすすめですが、散乱剤・吸収剤、どちらにしてもこまめな塗り直しが大切です。紫外線散乱剤だけに限らず、紫外線吸収剤もメーカーが推奨する正しい塗り方をしないと効果を発揮しなくなるため、どちらの日焼け止めを使っていたとしても、適量を塗布すること、適正な時間で塗り直しをすることは必須です。
参考)UVケア選びで悩む!紫外線吸収剤と紫外線散乱剤はどっちがいい…
陶器や食器を扱う作業では、長時間屋外や明るい環境で作業することが多く、適切な紫外線対策が重要になります。日焼け止めを選ぶ際は、作業内容や肌質に応じて吸収剤と散乱剤を使い分けることが効果的です。単純に白浮きしない日焼け止めを選ぶなら、紫外線吸収剤の日焼け止めを選べば十分です。しかし、紫外線吸収剤は刺激が強く、劣化しやすいなどのデメリットがあります。
最近では刺激を小さくするなど改良したものが登場しているので、「白浮きしにくい」ことを重視するなら、紫外線吸収剤の日焼け止めを選んでも大丈夫です。一方、優しさや劣化のしにくさを重視するなら、ノンケミカルの日焼け止めから白浮きしにくいものを探しましょう。肌への優しさを考えると紫外線散乱剤が基本の日焼け止めがおすすめです。
陶器や食器の制作や販売で手を頻繁に洗う必要がある場合は、石けんで簡単に落とせるノンケミカルタイプが便利です。一方、屋外での長時間作業や夏場の強い紫外線下では、高いSPF値が必要なため、吸収剤配合のものが適している場合もあります。敏感肌の人は上記にプラスで、低刺激性を重視して選ぶことが大切です。
日焼け止めの違いは、効果の差ではなく、個人の肌タイプと好みです。一般的に、紫外線散乱剤の日焼け止めは刺激が少なく、敏感肌の方に適していると言われています。先述した通り、散乱剤よりも吸収剤のほうが紫外線の防御力は高くなりますが、紫外線が肌に当たってしまう影響と、吸収剤が肌にもたらすかもしれない影響を比較して選ぶことが重要です。パッケージや口コミで「白浮きしない」「透明ヴェール」などの表現をチェックするとよいでしょう。
参考)紫外線散乱剤と紫外線吸収剤、何が違うの?