強塩基一覧と種類、水酸化物の性質や鉱石との関連性

化学における強塩基には水酸化ナトリウムや有機塩基など多様な種類が存在し、それぞれ異なる性質と用途を持ちます。鉱物由来のアルカリ金属から作られる強塩基の特徴とは何でしょうか?

強塩基の種類と分類

強塩基の主な分類
⚗️
無機強塩基

アルカリ金属・アルカリ土類金属の水酸化物で、完全電離する塩基

🧪
有機強塩基

アルコキシド、アルキルリチウム、フォスファゼン塩基など

💎
固体超塩基触媒

酸窒化物を含む特殊な固体塩基触媒

強塩基の代表的な水酸化物一覧

 

水溶液中で電離度が1に近く、水酸化物イオン(OH⁻)を定量的に生成する強塩基には、主にアルカリ金属とアルカリ土類金属の水酸化物があります。

 

参考)強酸・弱酸・強塩基・弱塩基(違い・覚え方・一覧など)

1価の強塩基には以下のものがあります。

  • 水酸化ナトリウム(NaOH):工業的に最も広く使用される強塩基で、食塩水の電気分解により製造されます

    参考)【超重要物質】水酸化ナトリウム(NaOH)の性質の全てを徹底…

  • 水酸化カリウム(KOH):水酸化ナトリウムと同様に強い塩基性を示します​
  • 水酸化リチウム(LiOH):アルカリ金属水酸化物の中で最も軽量です

    参考)強塩基 - Wikipedia

  • 水酸化セシウム(CsOH):最も強い無機塩基の一つとされています​

2価の強塩基には次のものが含まれます。

これらの塩基性の強さは、アルカリ金属・アルカリ土類金属水酸化物では、CsOH > RbOH > LiOH > NaOH > KOHの順序となります。

 

参考)有機化学でよく使う塩基まとめ

強塩基の有機化合物と超強塩基

有機化合物の中にも強い塩基性を示すものがあり、特に有機合成において重要な役割を果たします。

 

参考)技術情報 DBU®│サンアプロ株式会社

アルコキシド系は有機合成で広く使用されます。

  • ナトリウムエトキシド(C₂H₅ONa):エタノールとナトリウムから合成されます​
  • カリウムtert-ブトキシド(t-BuOK):強い立体障害により高い塩基性を示します​

アルキルリチウムは最も強力な塩基の一つです。

フォスファゼン塩基は有機超強塩基として注目されています。

DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)は、1967年に工業化された強い有機塩基で、水酸化ナトリウムに匹敵する塩基性を示し、有機合成反応の触媒として広く利用されています。

強塩基の性質と電離度

強塩基は水溶液中で完全に電離し、電離度がほぼ1(100%)となる特徴があります。

電離と塩基解離定数の関係は重要です。
強塩基の定義として、塩基解離定数がpKb < 0(Kb > 1)程度のものを指します。水酸化ナトリウムの場合、水溶液中で以下のように完全電離します。

NaOH → Na⁺ + OH⁻
この完全電離により、1molの水酸化ナトリウムが1リットルの水に溶けた場合、pHは14に近い値を示します。

塩基強度の比較では、ブレンステッドの定義に従えば、共役酸のpKa値が大きい物質ほど強い塩基となります。現在知られる最も強い塩基はpKa 50のブタン(C₄H₁₀)の共役塩基C₄H₉⁻で、化合物としてはC₄H₉Liなどが該当します。​
溶媒による塩基性の変化も見逃せません。
フッ化水素中では水分子さえかなり強い塩基となり、フッ化ナトリウムも強塩基として機能します。メタノール溶液ではナトリウムメトキシド(CH₃ONa)が、液体アンモニア中ではナトリウムアミド(NaNH₂)が強塩基として作用します。

溶媒 強塩基の例 特徴
NaOH、KOH 水酸化物イオンを放出​
メタノール CH₃ONa アルコキシドイオンを含む​
液体アンモニア NaNH₂ アミドイオンを含む​

強塩基の用途と反応性

強塩基は化学工業から有機合成まで幅広い分野で活用されています。

 

参考)https://yamadazaidan.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/2006_kondo.pdf

工業用途では多様な応用があります。
水酸化ナトリウムは、石鹸製造、紙パルプ工業、化学繊維製造などで大量に使用されています。また、pH調整剤として排水処理にも利用されます。

有機合成における触媒作用は特に重要です。
DBUやフォスファゼン塩基は、温和な反応条件で高い触媒活性を示し、目的物に対する高い選択性を与えます。これらの有機強塩基は、C-O結合やC-F結合などの化学的に安定な結合の変換反応において優れた性能を発揮します。

新規反応系の開発では、固体超塩基触媒が注目されています。
東京工業大学の研究では、酸窒化物を用いた超塩基触媒が開発され、メタンやアンモニアなど活性化が困難な物質の変換反応やCO₂変換反応への応用が期待されています。この触媒は酸素イオンではなく窒素イオンが塩基点として作用するため、従来の固体塩基触媒とは異なる性能を示す可能性があります。

 

参考)超塩基に匹敵する強塩基性を酸窒化物で実現 酸素空孔に隣接する…

塩基触媒によるクネフェナーゲル縮合反応では、アルデヒドとニトリルの縮合反応において、塩基触媒がニトリルからプロトンを引き抜いて反応が進行します。

強塩基の取り扱いと危険性

強塩基は強力な腐食性を持つため、適切な取り扱いが必須となります。

 

参考)強アルカリ性洗剤は危険?特徴を理解して安全な使い方を学ぼう!…

皮膚への影響は深刻です。
強アルカリ性物質は皮膚に触れると火傷や肌荒れを引き起こします。酸性物質と異なり、接触時の痛みが弱いため気づきにくく、浸透しながら深部まで達して皮膚組織を損傷させる特徴があります。このため、酸性よりも危険であるとされています。

 

参考)酸性とアルカリ性のそれぞれの注意点|(株)愛研|水質や土壌の…

安全対策の必須事項は以下の通りです。

保管と溶解時の注意も重要です。
水酸化ナトリウムや水酸化カリウムは、水やアルコールに溶解すると大量に発熱するため、容器を冷やしながら慎重に溶解作業を行う必要があります。保管は換気された涼しい場所で、直射日光を避けて密閉保管することが推奨されます。

 

参考)https://www.tokyo-ct.ac.jp/wp-content/uploads/2017/03/03g_kagaku.pdf

有機強塩基であるDMF等の極性溶媒中で水素化ナトリウム(NaH)を使用する場合、反応の危険性評価と安全対策が特に重要となります。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/0cf7942bd22d5a4c95599a584af09b6947229d06

強塩基と鉱石・鉱物の関連性

強塩基の原料となるアルカリ金属やアルカリ土類金属は、天然の鉱石や鉱物から抽出されます。

 

ナトリウムの鉱物源は多様です。
水酸化ナトリウムの工業的製造には、主に食塩(塩化ナトリウム、NaCl)が原料として使用されます。食塩は岩塩鉱床や海水から採取される重要な鉱物資源です。食塩水を電気分解することで、水酸化ナトリウムが製造されます。

カリウムとカルシウムの鉱石も重要です。
カリウムは天然にカリ長石(KAlSi₃O₈)やカーナル石(KMgCl₃·6H₂O)などの鉱物として存在します。カルシウムは石灰石(炭酸カルシウム、CaCO₃)として大量に産出され、これを焼成して生石灰(酸化カルシウム、CaO)とし、水と反応させることで水酸化カルシウムが得られます。

 

バリウムとストロンチウム鉱物は特殊な用途に使われます。
バリウムは重晶石(硫酸バリウム、BaSO₄)として産出し、化学処理により水酸化バリウムが製造されます。ストロンチウムは天青石(硫酸ストロンチウム、SrSO₄)やストロンチアン石(炭酸ストロンチウム、SrCO₃)として存在します。これらの鉱石は花火の着色剤や特殊ガラスの原料としても利用されます。

 

リチウム鉱石と需要は近年注目されています。
リチウムはスポジュメン(LiAlSi₂O₆)やレピドライト(リチウム雲母)などの鉱石、または塩湖のかん水から抽出されます。リチウム化合物は電池材料として需要が急増しており、有機合成用の強塩基であるアルキルリチウムの原料としても重要です。

鉱石から抽出されたこれらの金属元素は、精製・化学処理を経て各種の強塩基として化学工業や研究開発に利用されています。天然鉱物資源の持続可能な利用と効率的な抽出技術の開発が、今後の課題となっています。

 

 


Jeffergarden テフロンシート 強酸の強塩基耐性 PTFEフィルムプレート 300x1000x0.1mm 電力機械、化学工業