交趾焼の種類と色彩特徴や名工の作品

茶道具として珍重される交趾焼には、黄・紫・緑・青など色鮮やかな種類があります。三彩や法花との関係、京焼の名工たちの技法まで、交趾焼の奥深い世界を知っていますか?

交趾焼の種類と特徴

交趾焼の主な種類
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黄交趾

最も人気が高く、中国でも歴史的に好まれる色。鮮やかな黄色の釉薬が特徴

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紫交趾

深みのある紫色が上品な印象を与える。紀州徳川家で珍重された色

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緑交趾・青交趾

萌黄や浅黄など多様な緑・青系の色彩。貫入が美しく映える

交趾焼は、中国南部で生産された陶磁器の一種で、ベトナムのコーチシナ(交趾支那)との貿易で交趾船によりもたらされたことに由来します。低火度焼成による鮮やかな色彩が特徴で、黄、紫、緑、青、白などの細かい貫入の入る釉薬がかかった焼き物を総称します。近年の研究では、実際の産地は中国福建省南部の漳州と判明しています。
参考)交趾焼 - Wikipedia

 

交趾焼の種類は使用される釉薬の色彩によって分類され、黄交趾が最も人気が高く、中国人が歴史的に好む色として知られています。黄色の器を見るとすぐに交趾を連想するほど代表的な色彩です。紫交趾は深みのある色合いで、文政10年(1827年)に表千家9世了々斎が紀州徳川家の治宝侯に紫交趾のうつわを持参し、その出来栄えが高く評価されたことが記録されています。緑交趾青交趾には萌黄交趾、浅黄交趾などがあり、それぞれ異なる色調を持ちます。
参考)交趾:和食器の模様

 

交趾焼の色彩は赤、青、緑、黄、紫といった彩り豊かな釉薬が使用され、これにより他の陶磁器とは一線を画す華やかで美しい仕上がりとなります。総じて黄、紫、緑、青、白などの細かい貫入の入る釉薬のかかった焼き物を指し、低火度焼成による鮮やかな色彩が最大の特徴です。
参考)ブログ

 

交趾焼の三彩と法花の関係

交趾焼は広義には正倉院三彩などの低火度釉による三彩、法花と呼ばれる中国元時代の焼き物、黄南京と呼ばれる焼き物や清の時代の龍や鳳凰が描かれた焼き物も含まれます。三彩とは紫・緑・黄の三色を指し、中国の唐三彩から宋三彩、遼三彩、元三彩、明三彩へと受け継がれ、やがて法花、交趾焼へと発展しました。
参考)唐三彩

 

法花は明三彩の一種ともいえ、文様を白土の堆線で縁どりし、その線を境に黄・紫・緑・茶・青などの色釉で染め分ける技法をとります。明代初期に線七宝の技法に類似した泥土の線で文様を区画した法花と呼ばれる三彩の作品が作られるようになり、この流れを汲むものが交趾三彩とされています。法花は中国元時代の焼き物として知られ、交趾焼と同様に低火度焼成で鮮やかな色彩を持つ特徴があります。
参考)交趾焼 コ一チやき href="https://turuta.jp/story/archives/2723" target="_blank">https://turuta.jp/story/archives/2723amp;#8211; 鶴田 純久の章 お話

 

土は灰白色でねっとりしたものと赤色系のものが使用され、三彩の伝統を受け継ぎながら独自の発展を遂げました。中国では縁起の良い焼き物として知られ、台湾でも「交趾陶」「嘉義焼」と呼ばれて人気があり、やはり黄色に人気があります。廟の壁面装飾に使われ、様々な歴史上の人物や故事にまつわる文物が立体的に表現されています。
参考)「板陶窯 交趾剪黏工藝園區」

 

交趾焼の香合と茶道での位置づけ

交趾焼は主に茶の湯の世界で珍重され、香合がとくに尊ばれています。江戸時代に数寄者の間で作成された香合番付では、交趾の香合がその上位を占めるほど高く評価されました。日本では16世紀ごろに香料や香薬などの容器として用いられ、交趾支那(コーチシナ)との貿易により日本に入ってきた色鮮やかな交趾の合子や小器を、茶道具のひとつである香合として珍重するようになりました。
参考)【有限会社 伊万里陶芸】黄交趾・浅黄交趾・緑交趾:康創窯・有…

 

茶道で珍重されることから、京都において楽家や永楽善五郎がその写しものを制作し、九谷焼や日本の京焼でもその写しが作られることとなり、制作は全国で行われるようになりました。永楽家が携わった紀州徳川家の偕楽園焼は紫と浅葱色と呼ばれるトルコブルーを基調にした法花の和製の作風です。交趾焼は茶道の道具としては煌びやかな部類に入りますが、茶道の世界で大変珍重され、高く評価されたという歴史を持っています。
参考)【二代 中村翠嵐】茶道具・煎茶道具の買取作家・取扱い一覧 -…

 

香合以外にも、茶碗、香炉、皿、花入などの茶道具が交趾焼で作られています。中村翠嵐作の黄交趾鳳凰香合など、干支をモチーフにした香合も人気があり、茶道や香道の世界で使用されています。交趾焼の香合は楽天市場やYahoo!オークションでも多数取引されており、茶道愛好家の間で根強い人気を保っています。
参考)【楽天市場】交趾焼 茶道具の通販

 

交趾焼の製作工程といっちん技法

交趾焼の製作工程は、ろくろ成形・水挽きから始まり、成形したものを乾燥させ、削り仕上げを行います。素焼きまたは高温で焼き締めた後、次に交趾釉を施釉し、低火度焼成による焼成を経て完成します。彫刻、盛り上げ、椎泥、イッチン、貼付け、線刻、泥化粧などの下絵を施した生地に鮮やかな色釉がかかります。
参考)交趾焼きの製造工程を知ろう!|ゆる投資生活

 

いっちん技法は交趾焼を特徴づける重要な技法で、泥しょうを和紙の袋に満たして指で圧して口から絞りだし、盛り上がった線を描く技法です。まるで生クリームを絞り袋で絞り出してケーキにデコレーションするように、手作業で器のキャンパスの上に盛りつけていきます。一般的に絵付は筆を用いますが、いっちんはこのように絞り袋を用い、筆による絵付にはない立体感があり、独特の手ざわりを生みます。
参考)https://ameblo.jp/seikadou/entry-12326995431.html

 

交趾技法の釉薬が水のように流れやすいため、それを留めておく手段としていっちん技法が編み出されました。表面に凹凸があるため、いろいろな色の釉薬を付けたとしても、流れをストップして釉薬どうしが混ざり合うのを防いでくれます。イッチン下書きの後、イッチン描きを行い、本焼き(900℃で素焼き後、1250℃で焼成)を経て、交趾を施す部分には釉薬をかけずに焼きます。
参考)https://www.fujingaho.jp/culture/craft-tableware/g31379863/kyoto-craftsman-takashima-200313/

 

本焼きが終わったら交趾の作業に入り、独自に調合した釉薬を筆で少しずつ器の表面に乗せて平滑に伸ばし、均一に塗ります。この作業を一色ずつ繰り返した後、800℃程度で焼き付けます。色に深みを出したり、むらなく仕上げるため、この工程を数回繰り返すこともあり、一度の焼成ではなく3~4回と何回も釉薬をつける作業をしないといけません。交趾の色にムラがあるかないかで、作家の技術と腕前が一目でわかります。

交趾焼の名工と作品の特徴

交趾焼で重要な作家として、永楽善五郎の系譜があります。永楽家は本来の姓を「西村」と言い、代々の当主は「善五郎」を名乗り、初代から9代は西村姓を名乗り主に土風炉を製作しました。10代以降は永樂姓を名乗り、土風炉の他、茶陶を制作しています。文政10年(1827年)、表千家9世了々斎が西村了全の作った紫交趾のうつわを紀州徳川家の治宝侯の茶会に持参したところ、治宝侯はこのうつわを大層気に入り、息子の西村善五郎(後の保全)を呼び寄せ、偕楽園のお庭焼として交趾の焼物を焼かせました。その出来栄えは素晴らしく、治宝侯は「永楽」と「河濱支流」の陶印を授け、これを契機に永楽善五郎と名乗り始めることになりました。
参考)永楽1|うつわ知新

 

11代保全より「永樂」の落印を用いると共に12代和全から永樂姓を名乗り、さかのぼって了全と保全も永樂の名で呼ばれています。了全以降は、主に祥瑞、仁清写といった色絵、交趾焼も代表的焼き物となりました。父である保全と同様、茶碗から香合、平皿など様々な作品を手掛けており、赤絵、交趾焼、仁清などの写しに優れた技量を示します。三彩龍文鉢などの作品があり、作風は染付、交趾、金襴手、色絵など多岐にわたり、多彩な技巧を背景に茶陶に優れた作品を残しています。
参考)永楽善五郎の詳しい説明と

 

青木木米は交趾の名品を多く残している京焼の名工です。黄釉と紫釉を塗り分けた「交趾焼」スタイルの陶印を使用し、印面に「淡/如水」の文字が彫られ、側面に捺された「木米」楕円印が特徴です。
参考)https://www-art.aac.pref.aichi.jp/collection/pdf/2022/apmoabulletin2022kimurap28-122.pdf

 

赤沢露石は1943年(昭和18年)に交趾焼で技術保存作家認定を受けた二代赤沢露石(赤沢修三 京都市)がいます。黄交趾茶碗や黄交趾鳳図中鉢など、黄交趾の作品を多く手がけました。
参考)メルカリ

 

中村翠嵐は京都に伝わる焼物の中で「交趾焼」を確立させた現代の陶芸家です。交趾焼の第一人者として知られ、黄、青、紫、緑などの鮮やかな釉薬発色の交趾焼作品を得意としており、極細陶彫による華紋や波紋などに技術力の高さを感じることができます。1942年京都府で生まれ、1961年に初代・中村翠嵐の元で作陶の修行を始め、1987年に京焼・清水焼伝統工芸士に認定され、2003年に経済産業大臣表彰を受け、2010年に「現代の名工」厚生労働大臣表彰を受けるなど、数々の賞を受賞しています。交趾焼きに魅せられた翠嵐氏の作品は独特の彩色で非常に美しく、皆具等が人気で評価額としては10万前後にまで上がることもあります。
参考)中村 翠嵐 作 『交趾 尊式 花入』 買取価格相場|骨董品買…

 

交趾焼の購入後の手入れと鑑賞のポイント

交趾焼を購入したら、まず器全体を水もしくはぬるま湯にひたすことが重要です。陶器には細かい穴が空いており、そこに汚れが入り込んでしまうと厄介なため、最初に水を含ませることで汚れの付着をある程度防ぐことができます。使用する前にぬるま湯に浸して、あらかじめ生地に水分を含ませてご使用いただくと茶渋・染み等が付きにくくなります。陶器は吸水性があり、水分と共に汚れを吸収するため、このひと手間が長く美しく使うコツです。
参考)交趾焼き(こうちやき)を学ぼう!|ゆる投資生活

 

使用した後は洗い、布巾で拭いた後1日は陰干しをしてください。ご使用後は熱湯で軽く流すと乾燥が早まり、カビの予防になります。洗浄後は布で拭かず、高台を上にして陰干しし、5~7日かけてしっかり乾燥させることが推奨されます。その後は桐箱に入れて保管いただければ十分で、ウレタンなど通気性のない緩衝材で包むと湿気がこもるため、布で保管されることをオススメします。
参考)https://www.kotopotter.jp/blogs/table_coordinate/matchabowl_handling

 

交趾焼の鑑賞ポイントは物によって異なります。もし細かい柄が施されているならば、イッチン描きの細工を見るのがよいでしょう。逆に同じ色が大きい面積で塗られているものがあれば、全て筆で塗っているのでムラがいかにないか、均一を保っているかを見るのがよいです。上手な使い方として、使う前にぬるま湯に浸して、あらかじめ生地に水分を含ませてご使用頂くと茶渋・染み等が付きにくくなります。
参考)お取り扱い上のご注意など

 

交趾焼は電子レンジやオーブンでの使用は避けるべきで、陶器は吸水性が高いため、水分が残ったままで温めると素地が膨張し、徐々に痛める原因になることもあります。また、金、銀、プラチナなど金属系の釉薬で絵付けされているものは火花が出る可能性があるので使えません。長期間使用しない場合でも、定期的に風通しの良い場所で陰干しすることで、カビや変色を防ぐことができます。
赤沢露石による交趾焼の由来と技法の詳細解説
京焼・清水焼の交趾技法の製作工程を写真で解説
交趾焼の歴史と特徴、色彩の美しさについての総合解説
交趾焼陶工・中村翠嵐氏のインタビューと作品紹介

 

I'll now create a comprehensive blog article about 伊賀焼作家 based on the research gathered.