カロテノイド効果と種類による健康への働き

カロテノイドは野菜や果物に含まれる天然色素で、強力な抗酸化作用により生活習慣病や老化を防ぐ効果が期待されます。リコピンやルテインなど種類ごとに異なる健康効果があり、どのように体を守るのでしょうか?

カロテノイド効果と健康

カロテノイドの主な健康効果
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抗酸化作用

活性酸素を除去し、細胞の酸化ストレスから体を保護します

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生活習慣病予防

がんや心血管疾患のリスクを低減する効果が報告されています

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目の健康維持

ルテインやゼアキサンチンが網膜を保護し、視力低下を防ぎます

カロテノイドの抗酸化作用による効果

 

カロテノイドは自然界に700種類以上存在する天然色素で、植物や微生物が紫外線から身を守るために生産する物質です。人間の体内では生成できないため、食事から摂取する必要がありますが、体内に取り込まれると強力な抗酸化物質として機能します。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3942711/

活性酸素は細胞を傷つけ、老化や病気の原因となりますが、カロテノイドはこの活性酸素を効率的に除去する能力を持っています。特に一重項酸素という反応性の高い活性酸素に対して、カロテノイドは物理的消去と化学的消去の両方の仕組みで対応できる点が特徴的です。研究では、カロテノイドの摂取量や血中濃度が高い人ほど、がんや心血管疾患の発症率が低いことが報告されています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10229386/

カロテノイドの抗酸化作用は、単に活性酸素を除去するだけでなく、遺伝子発現や細胞内シグナル伝達経路にも影響を与えることが明らかになってきました。特に核内因子κBや核内因子赤血球系2関連因子2といった転写因子と相互作用し、炎症反応や酸化ストレスに関わる経路を調節する役割を果たしています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10220829/

カロテノイドの種類と特徴的な働き

人間の体内で主に働くカロテノイドは、リコピン、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの6種類です。これらは大きく分けて、カロテン類とキサントフィル類に分類されます。

 

参考)カロテノイド(カロチノイド)とは?はたらきや摂れる食べ物、効…

β-カロテンは緑黄色野菜に多く含まれる橙色の色素で、体内でビタミンAに変換される特徴があります。ビタミンAへの変換量は体内の必要量に応じて調整されるため、過剰摂取のリスクが低く安全性が高いとされています。がん予防や黄斑変性症の予防、粘膜の健康維持に重要な役割を果たします。
参考)カロテノイドについて|サプリメントのヘルシーパスブログ

リコピンはトマトに豊富に含まれる赤色色素で、カロテノイドの中でも特に強い抗酸化力を持っています。疫学調査では、トマトの摂取頻度が高い人ほど消化器系がんや前立腺がんの発症リスクが低いことが確認されています。​
ルテインとゼアキサンチンは目の網膜、特に黄斑部に存在し、有害な青色光から視細胞を保護する重要な役割を担っています。加齢性黄斑変性症や白内障の患者にこれらを継続投与した結果、視力の改善効果が確認されています。
参考)https://leaf-laboratory.com/blogs/media/glossary113

カロテノイド効果による生活習慣病予防

カロテノイドの摂取は、多くの生活習慣病の予防に効果的であることが科学的に証明されています。心血管系疾患に関しては、カロテノイドの摂取量や血清濃度が多い状態が心臓血管系疾患リスク低減と強い関連性を示すことが報告されています。

 

参考)「カロテノイドを多く含む食品」はご存知ですか?過剰摂取による…

がんの予防効果については、強い抗酸化作用と免疫力の強化により、がん抑制作用があることが明らかになってきました。特に皮膚がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんなどに対する予防効果が認められています。カロテノイドはがん細胞の増殖を抑制し、アポトーシス(細胞の自然死)を誘導する働きも持っています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5429337/

メタボリックシンドローム(代謝症候群)に対しても、カロテノイドの効果が注目されています。カロテノイドには抗肥満作用、抗糖尿病作用があり、血清トリグリセリドを減少させる効果が提案されています。従来の薬物治療と比較して、長期使用によるコストや副作用の負担が少ない代替治療法として期待されています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11207240/

糖尿病や肥満、循環器疾患などの慢性疾患の発症率が、カロテノイドを多く含む果物や野菜を豊富に摂取することで低下することも、複数の疫学研究で示されています。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10607816/

厚生労働省による「ビタミンAとカロテノイド」の詳細情報(がん、加齢黄斑変性症への効果に関する科学的根拠)

カロテノイド効果と美肌・美容への働き

カロテノイドは美肌や美容の分野でも注目されています。皮膚に蓄積したカロテノイドは紫外線からの保護効果を発揮し、酸化ストレスによる早期老化を防ぎます。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6719967/

β-カロテンは肌のターンオーバーを促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの合成を促す働きがあります。そのため、肌の潤いやハリ、弾力を生み出す効果が期待できます。さらに目の粘膜である角膜の細胞産生を促して傷を修復するなど、目のダメージの回復にも関わっています。

 

参考)紫外線から体を守る 「カロテノイド」

研究では、カロテノイドが真皮のコラーゲンI/エラスチン指数を改善し、肌の弾力性を向上させることが確認されています。カロテノイドとコラーゲンには相乗効果があり、カロテノイドはコラーゲンの増殖に最適な微小環境を作り、コラーゲンレベルのバランスを直接調整する働きを持っています。

 

参考)カロテノイドとコラーゲンが相乗効果を発揮する6つの方法 - …

カロテノイドは活性酸素種によって引き起こされる炎症プロセスを抑制し、真皮線維芽細胞におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の産生を減少させることで、コラーゲンの分解を防ぎます。これにより、しわの形成を抑え、肌の若々しさを保つ効果が期待されます。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11783858/

にんじん100%飲料を摂取した実験では、「肌の乾燥」や「肌のうるおい」が改善されるなどの美肌作用が確認されています。このような研究結果から、内側からの美容アプローチとしてカロテノイドを含む食品やサプリメントの活用が推奨されています。

 

参考)保湿効果などにより、美肌に作用することを確認 にんじん100…

カロテノイドとコラーゲンの相乗効果に関する詳細情報

カロテノイド効果を高める摂取方法と食品

カロテノイドは脂溶性の物質であるため、油と一緒に摂取すると吸収率が大幅に向上します。研究では、トマトジュースと牛乳を同時に摂取した場合、カイロミクロン(血液中の脂質輸送体)中のリコピン濃度が約3倍、β-カロテン濃度が約3倍に上昇することが確認されています。

 

参考)野菜飲料と牛乳の同時摂取がカロテノイドの吸収性を高める作用を…

カロテノイドを多く含む食品としては、以下のものがあります。

カロテノイドは化学的に不安定で、光、熱、酸素、酸、金属イオンの存在下で酸化されやすい性質があります。そのため、新鮮な状態で摂取するか、適切に加工された製品を選ぶことが重要です。

 

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9865331/

厚生労働省の「健康日本21」では、野菜を1日350g摂取することを目標としていますが、実際の平均摂取量は約288.5gと不足しています。調理方法や食べ合わせを工夫することで、効率よくカロテノイドを吸収し、健康効果を最大化できます。

野菜ジュースなどの加工品も、カロテノイドの摂取源として有効です。ただし、カロテノイドの大部分は小腸で吸収されず大腸に到達し、腸内細菌によって代謝される可能性があることも最近の研究で示唆されています。この腸内細菌との相互作用が、カロテノイドの健康効果に新たな側面を加える可能性があります。

カゴメの研究:野菜飲料と牛乳の同時摂取によるカロテノイド吸収性向上の詳細

カロテノイド効果と地球の歴史における役割

カロテノイドは現代の健康効果だけでなく、地球の歴史においても重要な役割を果たしてきました。古代の海洋環境を研究する有機地球化学の分野では、堆積岩中に保存されたカロテノイドの化石が、過去の環境を復元する重要な指標として利用されています。

 

参考)https://unit.aist.go.jp/georesenv/product/tbn/green_tbn2022.pdf

35億年前の地層から発見されるストロマトライトには、光合成バクテリア(かつてはラン藻類と呼ばれていた)が関与していました。これらの光合成生物は、カロテノイドを含む色素を持ち、地球の大気に酸素を放出し始めた最初の生命体の一つとされています。

 

参考)https://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKankoub/ouroboros/01_02/ganseki.html

緑色硫黄細菌が持つカロテノイド色素であるイソレニエラテンの分解産物は、古海洋表層の酸化還元状態を示す指標として用いられています。これらの化石カロテノイドは、石油根源岩の形成や生物の大量絶滅の原因となった古環境の復元に役立てられています。

カロテノイドは、光合成において集光や光防御、抗酸化といった役割を担っており、地球上の生命が繁栄するための基礎を築いた物質の一つと言えます。現在でも植物や微生物がカロテノイドを生産し続けており、それを人間が食事を通じて摂取することで、健康維持に役立てているのです。

 

参考)https://bsj.or.jp/jpn/general/bsj-review/BSJ-review-9B%2046-108.pdf

このように、カロテノイドは地球の歴史を通じて生命を支え続けてきた重要な物質であり、現代においても私たちの健康と美容に多大な恩恵をもたらしています。鉱石や化石に興味がある方にとって、カロテノイドの地球化学的な側面は、健康効果とは別の魅力的な研究分野となっています。

 

産業技術総合研究所:古海洋環境復元におけるカロテノイド化石の利用に関する研究

 

 


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