重金属汚染とは、比重が4~5g/㎤以上の金属によって土壌や地下水、公共用水域などが汚染される現象を指します。日本では高度経済成長期に多発し、主に工場や鉱山からの排水を原因とした産業型公害として深刻化しました。
参考)https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=viewamp;serial=1210
学問的には重金属と軽金属を明確に分ける定義は存在しませんが、密度4~5g/㎤以上の金属という基準が一般的に使われています。代表的な重金属には、鉛・水銀・ヒ素・カドミウム・六価クロムなどがあり、これらは人体に有害な物質として知られています。
重金属は難分解性物質であるため、環境中に蓄積すると長期間にわたって悪影響を及ぼします。人間は重金属をわずかしか代謝できないため、経口吸収などにより体内に蓄積すると、急性中毒や慢性的な健康被害を引き起こす可能性があります。
参考)重金属汚染とは?原因と現状の対策、人体への影響、過去の事例を…
重金属汚染の発生源として、鉱山や製錬所の活動が大きな割合を占めています。鉱山では金属鉱石の採掘過程で大量の廃石と微細粉塵が発生し、高濃度の重金属を含む汚染源となります。
参考)https://www.npec.or.jp/northeast_asia/inquiry/pdf/203.pdf
鉱石中の金属元素の多くは硫黄と結びついた硫化鉱物として存在しており、これが酸素と水に接すると金属イオンと酸を生成(酸化溶解)するため、水環境中において金属汚染の発生源となるのです。廃石や微細粉塵から排出された水素イオンは水を酸性化し、その酸性水によってFe、Cd、Al、Cu、Mn、Pb、Zn、As、Hg、Crなどの重金属が溶出されます。
参考)熱水鉱床鉱物から溶出する重金属について|環境儀 No.72|…
日本における重金属汚染の歴史は古く、明治時代の足尾銅山鉱毒事件が世間に知られるきっかけとなりました。最新の鉱山技術を使って大量の銅を採掘する一方で、精錬の結果生まれた鉱毒を含む排水が渡良瀬川に流れ込み、流域の農地を重金属汚染の被害地としてしまいました。
現代でも、休廃止鉱山から多量の廃石と微細粉塵が発生し、廃水が流出することで、閉山後も汚染が続くケースがあります。特に閉山した数年後に重金属の濃度が高くなる場合も多く、長期的な対策が重要となっています。
休廃止鉱山からの重金属汚染の詳細なメカニズムと対策(環境管理センター資料)
重金属汚染による健康被害は、日本の公害史において深刻な教訓を残しています。政府が重金属汚染を公害と認定し対策に乗り出すきっかけとなったのは、イタイイタイ病と水俣病の発生でした。
イタイイタイ病の症例
富山県の神通川流域で発生したイタイイタイ病は、神岡鉱山の精錬所から排出されたカドミウムによって引き起こされました。神通川の水はカドミウムによって汚染され、下流の水田に流れ込み蓄積しました。患者の多くはカドミウムによって汚染された米や野菜、飲料水を日常的に摂取したため、身体に多くのカドミウムをため込んでしまったのです。カドミウムは腎不全や骨軟化症を引き起こし、骨がもろくなって激しい痛みを伴う病気を発症させました。
参考)土壌汚染の影響
水俣病のメカニズム
熊本県水俣市で発生した水俣病は、チッソ水俣工場から排出されたメチル水銀が原因でした。工場から排出されたメチル水銀は湾内のプランクトンを汚染し、それらを食べた魚に蓄えられました。水俣湾でとれた魚を日常的に食べていた人に水銀が蓄積され、知覚障害・運動障害・言語障害などの神経症状を発症させました。
参考)https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/s46/11859.html
環境省による水俣病の公式情報
その他の重金属による症状
重金属ごとに特徴的な毒性症状があります。
参考)有害重金属の蓄積が様々な病気や症状の根本原因のことがあります…
これらの症状が出る理由は、人が重金属をわずかしか排出できないことにあります。体にたまった重金属は深刻な影響を与え、症状が重い場合は死に至ります。
重金属汚染土壌の浄化には、様々な技術が開発されています。重金属は分解できない物質であるため、一般的な浄化手段として掘削除去、土壌洗浄、不溶化処理などが実施されていますが、これらの方法はコストが高く、エネルギー消費量が大きくなる課題があります。
参考)ファイトレメディエーション|ソリューション・技術|株式会社フ…
主な浄化技術の種類
📌 土壌洗浄法
土壌洗浄は、汚染土壌を掘削し水や溶媒で有害物質を洗浄する工法です。土壌を粒度単位で分級して、有害物質が吸着・濃縮している部分の土壌を抽出し、洗浄作業によりさらに溶出させることで浄化します。特殊鉄粉を用いた新しいシステムでは、ヒ素などの重金属が吸着した特殊鉄粉を湿式磁力選別機で分離・回収し、回収した特殊鉄粉を繰り返し再利用することで処理コストの削減を実現しています。
参考)土壌洗浄 - エコサイクル株式会社
📌 地下水揚水浄化
汚染された地下水を一度揚水し、重金属を除去・回収する方法です。地上に設置した設備で酸化・還元・中和・沈殿・ろ過などの技術を組み合わせて水を浄化します。高濃度汚染水の拡散を防ぎ、汚染地下水が敷地外に拡大するのを防止します。
📌 固化・不溶化処理
汚染土壌中の重金属を化学的に安定させ、溶出しにくい状態にする技術です。石灰石や家畜骨粉などの安定化剤を用いて重金属を不溶化させる方法が研究されています。
参考)https://www.mdpi.com/2071-1050/15/14/11244/pdf?version=1689760599
不動テトラによる重金属浄化技術の詳細
ファイトレメディエーションは、植物を用いて重金属汚染を低減・除去する技術で、従来の方法と比較して環境負荷が少なく、コスト効率が良い方法として注目されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11174537/
ファイトレメディエーションの仕組み
特定の金属元素を高濃度で体内に蓄積する特殊な植物(超集積植物)を活用して、環境中の重金属汚染を低減・除去します。超集積植物は、吸収した重金属の80%以上を茎葉に蓄積するため、地上部の刈り取りによって効率的に汚染を取り除くことができます。
この技術の最大の利点は、農用地の汚染除去に適していることです。工業用地と異なり、農用地では掘削除去などの大規模な土木工事が困難な場合が多いため、植物を栽培しながら徐々に浄化を進められるファイトレメディエーションは有効な選択肢となります。
ファイトレメディエーションの課題
植物による重金属吸収は、土壌中の重金属を除去するとともに、植物体の灰化によって重金属のリサイクルも可能です。ただし、浄化には時間がかかることや、植物の成長条件によって効率が変動することなどの課題もあります。
参考)https://www.mdpi.com/2305-6304/11/5/422
フジタによるファイトレメディエーション技術の実用例
近年では、環境への負荷を最小限に抑えながら重金属汚染を浄化する「グリーンレメディエーション」の概念が広がっており、持続可能な土壌管理の観点からもファイトレメディエーションの重要性は高まっています。
参考)https://bsssjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sum.12717
重金属汚染を未然に防ぐため、また汚染が発生した際の拡大を防ぐために、継続的なモニタリングと予防対策が不可欠です。
参考)土壌汚染対策の環境モニタリングについて href="https://www.eco-j.co.jp/blog/512.html/" target="_blank">https://www.eco-j.co.jp/blog/512.html/amp;#8211; 解体…
環境モニタリングの実施
土壌汚染に遭遇した場合、敷地境界外への汚染拡散状況の監視、措置の効果の確認、施工中の周辺環境および作業環境の監視のため、地盤中や大気中の特定有害物質のモニタリングを行わなければなりません。
モニタリング頻度については、影響検討による移行特性を考慮して決定されます。施工中においては週1回~月1回程度を目安とし、施工後においても地下水の定期的な監視が必要です。特に重金属のように地盤中に留まる物質については、サンプリングした土壌の公定法による分析を実施します。
企業による予防策
企業レベルでは、操業開始後も定期的に地下水・表層土壌サンプリングを実施し、汚染指標を継続的に監視することが重要です。異常値が検出された場合には速やかに是正措置を講じ、社内外への報告ラインを明確化して透明性を担保する必要があります。
参考)土壌汚染を防ぐためにできること|わたしたちだけでなく企業でも…
鉱山における対策
現在では、採鉱による排水や精錬作業によって出てきた排水については有害物質を多量に含んでいることがわかっており、重金属を沈殿・除去など無害化処理を行い、酸性が中和された状態で排水する対策が取られています。
参考)鉱業から引き起こされてきた鉱害~安全に暮らすための処方箋~
また、休廃止鉱山については、閉山後も長期的なモニタリングが必要です。特に閉山した数年後に重金属の濃度が高くなる場合があるため、継続的な監視体制の構築が求められています。
土壌汚染対策の環境モニタリングに関する詳細情報
個人レベルでの予防策
個人レベルでも、不要な化学物質・薬品の適切な処理、徹底した分別・リサイクル、無農薬・減農薬の農産物の選択などが、土壌汚染の予防に貢献します。
重金属汚染は一度発生すると長期間にわたって影響を及ぼすため、発生源での管理と早期発見、適切な対策が極めて重要です。鉱石採掘や金属加工に関わる産業では、環境への配慮と継続的なモニタリングが社会的責任としての配慮と継続的なモニタリングが社会的責任として求められています。

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