崩壊系列 一覧と放射性崩壊の種類と特徴、鉱石との関係性

崩壊系列には4つの種類があり、ウラン系列・トリウム系列・アクチニウム系列・ネプツニウム系列が存在します。それぞれの系列の特徴や質量数の規則性、鉱石との関係性についてわかりやすく解説。崩壊系列を正しく理解できていますか?

崩壊系列 一覧と特徴

崩壊系列 一覧と特徴

主な崩壊系列の特徴
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4つの系列が存在

ウラン系列、トリウム系列、アクチニウム系列、ネプツニウム系列の4種類。質量数を4で割った余りで分類される

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自然界に存在する系列

トリウム系列、ウラン系列、アクチニウム系列の3つが天然に存在し、鉛の安定同位体で崩壊が終了

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人工的な系列

ネプツニウム系列は半減期が短く、天然にはほとんど現存しない人工元素の系列

崩壊系列とは、放射性崩壊によって次々と別の原子核に変化していく一連の過程をまとめたものです。不安定な放射性元素は、安定な同位体に到達するまで連鎖的に崩壊を繰り返します。

 

参考)崩壊系列 - Wikipedia

崩壊系列は合計4種類しか存在しません。これは、アルファ崩壊で質量数が4ずつ減少し、ベータ崩壊では質量数が変化しないという性質によるものです。質量数を4で割った余りが0、1、2、3の4パターンしかないため、崩壊系列も4種類に限定されます。

 

参考)崩壊系列:物理学解体新書

崩壊系列 ウラン系列の詳細

 

ウラン系列は、ウラン238(238U)から始まり、ラジウム226(226Ra)を経由して、最終的に鉛206(206Pb)に至る系列です。別名「ラジウム系列」とも呼ばれています。

この系列に含まれる核種の質量数は、すべて「4n+2」(nは整数)の形で表現できます。例えば、238は4×59+2、206は4×51+2となります。

ウラン系列で特に注目すべきは、放射性ガスであるラドン222(222Rn)が含まれている点です。ラドンは半減期が約3.8日で、地下水や温泉に含まれており、非喫煙者の肺がんリスク要因としても知られています。

 

参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r1kisoshiryo/attach/202003mat1-02-50.pdf

ウラン鉱石は、ウランだけでなく崩壊系列に含まれるラジウムやラドンなどの娘核種も含んでいるため、ウラン単体の13倍もの放射能を示すことがあります。

崩壊系列 トリウム系列の構成

トリウム系列は、トリウム232(232Th)から始まり、鉛208(208Pb)で崩壊が終了する系列です。別名「4n系列」とも呼ばれています。

 

参考)https://contest.japias.jp/tqj14/140054/doitai.html

この系列の質量数はすべて「4n」(4の倍数)で表されます。例えば、232は4×58、208は4×52です。

トリウム系列では、アルファ崩壊が6回、ベータ崩壊が4回起こります。この過程で、質量数232のトリウムから質量数208の鉛へと変化します。

トリウム系列にはラドン220(220Rn、別名トロン)が含まれています。トロンの半減期は約55秒と非常に短く、ラジウム224(224Ra)が崩壊して生成されます。

崩壊系列 アクチニウム系列の特性

アクチニウム系列は、ウラン235(235U)から始まり、アクチニウム227(227Ac)を経由して、鉛207(207Pb)に至る系列です。
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この系列に含まれる核種の質量数はすべて「4n+3」の形で表現されます。235は4×58+3、207は4×51+3となります。
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意外な事実として、アクチニウム系列にはプルトニウム239(239Pu)が含まれています。プルトニウムは核兵器や原子力発電の燃料として知られる元素で、この系列の一部を構成しています。
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アクチニウム系列も他の系列と同様、アルファ崩壊とベータ崩壊を繰り返しながら、段階的に安定な鉛同位体へと変化していきます。
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崩壊系列 ネプツニウム系列の現状

ネプツニウム系列は、ネプツニウム237(237Np)またはプルトニウム241(241Pu)から始まり、ビスマス209(209Bi)で崩壊が終了する系列です。

この系列の質量数は「4n+1」の形で表現されます。237は4×59+1、241は4×60+1となります。

ネプツニウム系列は、開始核種の半減期が地球の年齢に比べて極めて短いため、天然にはほとんど現存していません。現在では主に原子力発電の副産物として人工的に生成されています。

ビスマス209以前の核種はすべて半減期が短く、自然界では事実上存在しないため、「消滅した系列」とも呼ばれています。

崩壊系列 放射性崩壊の種類と質量数の関係

放射性崩壊の主要なモードは、アルファ崩壊、ベータ崩壊、核異性体転移、自発核分裂の4種類に分けられます。

崩壊の種類 質量数の変化 原子番号の変化 特徴
アルファ崩壊(α崩壊) -4 -2 ヘリウム原子核を放出。質量数が4減少する
ベータ崩壊(β崩壊) 0 ±1 電子や陽電子を放出。質量数は変化しない
ガンマ崩壊(γ崩壊) 0 電磁波を放出。核種は変化しない
核異性体転移 0 励起状態から基底状態への移行

アルファ崩壊が起こるごとに質量数が4ずつ減少するため、同じ崩壊系列に属する核種の質量数を4で割った余りは常に同じになります。この性質により、すべての核種は4つの系列のいずれかに分類されます。

ベータ崩壊は、β⁻崩壊(陰電子崩壊)、β⁺崩壊(陽電子崩壊)、電子捕獲の3つに細分化されます。いずれも質量数は変化せず、原子番号のみが変化します。

 

参考)放射性壊変ってなに? href="https://www.envraddb.go.jp/family/environmental-radioactivity/radiation/4/" target="_blank">https://www.envraddb.go.jp/family/environmental-radioactivity/radiation/4/amp;#8211; 親子で学ぶ放射能サイト

崩壊系列における各段階の半減期は、数秒から数十億年まで大きく異なります。平衡状態に達すると、系列内のすべての核種が親核種と同じ放射能を示すという特徴があります。

鉱石に含まれる放射性元素を調べる際、崩壊系列の知識は不可欠です。ウラン鉱石の放射能が予想以上に強いのは、ウランだけでなく娘核種のラジウムやラドンも含まれているためです。

崩壊系列の質量数の規則性を理解することで、未知の放射性核種がどの系列に属するかを簡単に判別できます。質量数を4で割った余りが0ならトリウム系列、1ならネプツニウム系列、2ならウラン系列、3ならアクチニウム系列となります。

崩壊系列の詳細な図表と各核種の半減期データが掲載されている、ウィキペディアの崩壊系列解説ページ
各崩壊系列の質量数の一般式と分類方法について、わかりやすい表とともに解説している物理学解説サイト

 

 


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