星の砂 特徴と形成 有孔虫の生態と採取場所

星形の美しい砂粒「星の砂」は、実は有孔虫という生物の殻です。その正体や形状の秘密、見つけ方のコツまで、鉱石に興味がある方にもおすすめの情報を詳しく解説します。星の砂の不思議な魅力を知りたくありませんか?

星の砂 特徴と生態

星の砂の基本特徴
有孔虫の殻が正体

バキュロジプシナという単細胞生物の炭酸カルシウムの殻で、死後に海底に堆積します

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サイズは1~3mm

肉眼で観察できる大きさで、砂粒サイズの殻に幾何学的な室構造を持ちます

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約4μmの細孔

殻表面には均一な大きさの孔が多数あり、シャープな細孔分布を示します

星の砂 有孔虫の正体と構造

 

星の砂は、バキュロジプシナ(Baculogypsina sphaerulata)という原生生物有孔虫の殻です。この小さな生物は植物プランクトン有孔虫であり、体長は数百μm~数mm程度で、死後に炭酸カルシウムでできた丈夫な殻だけが残存します。生きている有孔虫の殻内は原形質で満たされていますが、有機質である原形質が分解されると、石灰質の殻のみが海底に堆積し、波や潮の流れによって浜辺へと打ち寄せられます。

 

参考)宮古島で星の砂|正体・採り方・おすすめ穴場スポットを紹介!話…

星の砂の殻は不規則な突起を持っており、星を想起させる形状となっています。殻の表面には細かい孔が多数空いており、ほとんどの孔の口径は約4.4ミクロン(0.0044ミリメートル)程度とほぼ同じ大きさです。内部構造は「室」と呼ばれる部屋が多数あり、放射状に配列されたヒトデに似た幾何学的で神秘的な構造になっています。

 

参考)https://www.istone.org/star-sand.html

生きている星の砂の寿命は約1年半で、有性生殖(一部は無性生殖)で子孫を残します。角の先から偽足と呼ばれるものを出し、排泄物などを出しています。また、体の内部にはサンゴと同様に共生藻類がおり、それらが光合成をすることでエネルギーを得ていると考えられています。角の先端から透明な粘性物質を出して一つの場所に留まることが多く、海藻や岩石などに付着して生活する底生有孔虫です。

 

参考)豊福 高志 (Takashi Toyofuku) - 研究ブ…

星の砂 炭酸カルシウムの形成過程

星の砂の殻は炭酸カルシウム(CaCO3)の塊で構成されており、サンゴ礁の炭素循環において海の重要な役割を果たしています。この炭酸カルシウムは、浅海底で降り積もってできる石灰岩の一種と同じ成分です。有孔虫は石灰質の殻を作る特徴があり、この殻は遺骸となって残り、堆積物としては砂のサイズ(1/16 mm~2mm)に分類されます。

 

参考)意外と知らなかった!星砂ビーチでとれる星型の砂の正体は実は!…

有孔虫は砂をつくる生物として知られ、沖縄本島や石垣島の真っ白な砂浜の多くが、星の砂を含む有孔虫の殻でできた海岸です。日本で多くみられる南西諸島では、大陸から切り離された約150万年前から体積したものが現在の星の砂となっています。海底に堆積した星の砂は、波にもまれてトゲが折れたり削られたりして丸くなり、肌色の砂粒に変化します。

 

参考)https://churashima.okinawa/userfiles/files/topics/event/2021/20210804tenji_umi04.pdf

細孔分布測定の研究によれば、星の砂は約4μm付近の細孔直径を多く有し、シャープな分布がみられることから、大きさの揃った細孔を持っていることが明らかになっています。この均一な構造が、星の砂特有の美しい形状を生み出す要因の一つとなっています。

 

参考)星の砂と太陽の砂(細孔分布測定・表面観察・X線CTによる内部…

星の砂 太陽の砂との見分け方

星の砂とよく混同される「太陽の砂」は、カルカリナ(Calcarina)という別種の有孔虫の殻です。両者は形態的に明確な違いがあり、星の砂は五角形の星型で白色系、比較的小さめであるのに対し、太陽の砂は放射状で丸型、黄色味があり、やや大きめです。

 

参考)星砂が多いのはどっちだ - 沖縄B級ポータル - DEEok…

具体的な特徴を比較すると、星の砂(バキュロジプシナ)は星形をしており、殻の構造は穴が多くシンプルで、比較的大きいサイズです。一方、太陽の砂(カルカリナ)は中央部が球に近く、突起の先端が丸みを帯びており、形状は球形や棒状の突起など多様で、突起が多く複雑な構造を持ち、比較的小さいサイズです。

 

参考)星の砂 - Wikipedia

電子顕微鏡による観察では、殻の表面の様子や突起先端の形状が明らかに異なることが確認されています。また、内部構造においても、星の砂はヒトデに似た放射状の室配列であるのに対し、太陽の砂はアンモナイトのような巻貝構造をしていることがX線CTによる内部観察で判明しています。細孔分布についても、星の砂は約4μm、太陽の砂は約10μm付近の細孔直径を多く有するという違いがあります。

 

参考)星の砂 太陽の砂|ミクロ探偵団|ミヤマ株式会社 環境分析測定…

星の砂 生息環境と地域分布

星の砂(バキュロジプシナ)は西太平洋の熱帯から亜熱帯域の海域に広く分布しており、暖かい海の浅瀬に生息しています。日本国内では、種子島以南の南西諸島の海岸において見つけることができ、特に沖縄県の竹富島、西表島、鳩間島が有名な採取場所です。

 

参考)沖縄本島で「星の砂」探し!5カ所の海岸を探した結果は?【子連…

沖縄本島でも星の砂が拾える場所がいくつか存在します。北部の古宇利島にあるトケイ浜では、砂浜をよく観察すると小さな星型の砂がまばらに見つかります。中部の読谷村にある渡具知ビーチや恩納村の真栄田岬近くにあるザネー浜(裏真栄田ビーチ)でも、岩場付近に星の砂が混じっていたという報告があります。宮古島周辺では、砂山ビーチ、与那覇前浜ビーチ、白鳥崎(伊良部島)が星砂の自然堆積が見られるビーチとして知られています。

 

参考)宮古島にも星の砂ってあるの?場所や見つけ方のコツを紹介

星の砂は海藻や岩石などに付着して生活する底生有孔虫であり、サンゴ礁の周辺に生息します。グレートバリアリーフ(大堡礁)の研究では、約2.7~2.5万年前と約2.2~1.9万年前の2つの時期に集中した星砂の化石が発見されており、海面の急激な低下後に礁原と浅礁湖をもつ裾礁タイプのサンゴ礁が形成されたことが明らかになっています。

 

参考)沖縄本島で星の砂が取れる場所はどこ?ビーチで拾ったものは持ち…

星の砂 採取時の注意と保護活動

星の砂の採取については、少量なら持ち帰りが認められていますが、場所によっては採取が禁止されている区域があります。鳩間島では星の砂が最も多く取れるとされていますが、持ち出しが禁止されています。国立公園エリアや保護区域に指定されているビーチでは採取が禁止されていたり、環境省が管理する区域ではルールが厳しくなっています。

星の砂は年々減少しており、深刻な環境問題となっています。1990年代までの観光客数の緩やかな増加に対し、1990年代から劇的に増加した観光客による持ち帰りや商材化により、150万年かけて出来上がった星の砂が、わずか20数年で激減した事例が報告されています。1993年にはビーチ全体が星の砂で埋めつくされていた場所が、2019年には十数分探してやっと一粒見つけることができるほどになったという記録があります。

 

参考)LNT原則4 消えた星の砂 href="https://lntj.jp/blog/?p=209" target="_blank">https://lntj.jp/blog/?p=209amp;#8211; LNTJ BLO…

この現象は「アキュミュレイト・エフェクト(累積効果)」と呼ばれ、自分一人ぐらいはインパクトは問題ないだろうという考えが、同じ考えをもった人により繰り返されることで、いずれは取り返しのつかないダメージになることを示しています。年間約40万人が仮に同じ行為をし、それが20数年繰り返されると、長い年月をかけて形成された自然環境があっという間になくなってしまう可能性があります。ツバルなど環礁地域では、サンゴ礁の劣化が進み、国土となる堆積物を作る生態系の能力が低下していることも報告されており、有孔虫を飼育・増殖する実験による生態系の修復が進められています。

 

参考)海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持

星の砂 コレクションと鉱物学的価値

星の砂は、その神秘的な形状から鑑賞の対象として広く愛好されており、小さなビンに詰められたものが沖縄の空港や道の駅でお土産として販売されています。「キレイな星の砂を見つけると願い事が叶う」という言い伝えもあり、まるで四ツ葉のクローバーや流れ星のような縁起物として親しまれています。その形の不思議さやネーミング、そしてどこにもあるわけではないという希少性が人気の理由です。

鉱物学的な観点からは、星の砂は生物学的な研究対象としても重要な価値を持っています。有孔虫の化石は古生代石炭紀~ペルム紀のフズリナ(紡錘虫)や新生代古第三紀のヌンムリテス(貨幣石)など、地質学的な年代決定に用いられる示準化石として知られています。現生種の星の砂も、サンゴ礁の地形と形成時期を探る手がかりとして研究に活用されています。

 

参考)http://www.edu.pref.kagoshima.jp/research/result/siryou/hyoudai/rika/1673-rika281.pdf

星の砂の保存方法については、乾燥させて小瓶などの密閉容器に入れておくことが一般的です。ただし、浜辺に打ち上げられるとトゲの部分が削れてしまい、ただの丸い粒になってしまうため、棘が残っている状態の星の砂を見つけることができれば、それは特に価値が高いとされています。電子顕微鏡やX線CTを用いた内部観察により、その幾何学的な室構造を詳細に観察することもでき、科学教育の素材としても活用されています。

 

参考)竹富島で星砂探すならカイジ浜がおすすめ!アクセス&行き方・持…

星の砂 見つけ方の実践テクニック

星の砂を効率的に見つけるには、いくつかのコツがあります。まず、探す場所は浜辺の陸側ではなく波打ち際で探すと見つけやすいことが知られています。満潮が引いたあとの干潮時が最適な時間帯で、波の穏やかな日には岸辺近くに星の砂が見つかることがあります。

 

参考)星の砂を探して見よう@カイジ浜|地域お散歩@星野リゾート

具体的な探し方の手順としては、まず細かい目のザルやふるいで砂をふるう方法があります。また、バケツに砂と水を入れてかき混ぜ、軽い星砂が浮かぶのを確認する方法も効果的です。浜辺に打ち上がった海藻の周辺を重点的に探すことも推奨されており、岩があって海藻が生えている付近が特に有望なポイントです。

砂浜に手のひらを押し付けて砂をよく見てみると、星の形をした砂が見つかります。星砂は通常の砂よりもピンクがかっているのが特徴で、大きさは1mm程度です。竹富島のカイジ浜では、多くの珊瑚や巻貝のかけらなどが打ち寄せられることから、有孔虫の死骸である星砂が取れる浜として有名です。

砂をすくい取って手のひらに広げ、注意深く観察することで星の形をした砂粒を発見できます。見つけられない場合は探す場所を少し変えてみることが重要で、条件が良い場所では比較的容易に見つけることができます。ただし、年々減少しているため、採取は必要最小限にとどめ、環境保護に配慮することが求められます。

東京大学大気海洋研究所 - ホシズナをもっと知ろう
星の砂の生態や共生藻について詳しい科学的情報が掲載されています。

 

美ら島沖縄 - 星の砂ってなんだろう
星の砂の色や生態、死後の変化について写真付きで解説されています砂の色や生態、死後の変化について写真付きで解説されています。

 

 


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