菱刈鉱山見学の魅力を徹底解説|日本最高品位金山のアクセスと周辺情報

世界トップクラスの金品位を誇る菱刈鉱山は、どのように見学できるのでしょうか?鹿児島県伊佐市にある日本唯一の商業金鉱山の実態、アクセス方法、周辺の温泉スポットまで詳しくご紹介します。

菱刈鉱山見学の基本情報

菱刈鉱山の主な特徴
世界最高品位の金鉱石

1トンあたり約20グラムの金を含有し、世界平均の約4~6倍の高品位を誇る

🏔️
日本唯一の商業金鉱山

現在も年間約4~6トンの金を採掘する国内最大規模の稼働鉱山

🚗
鹿児島空港から約40分

鹿児島県伊佐市に位置し、車でのアクセスが便利な立地

菱刈鉱山見学の予約と注意点

菱刈鉱山は一般公開されておらず、個人での見学はできません。住友金属鉱山株式会社が管理するこの鉱山は、商業規模で操業を継続している国内唯一の金鉱山であり、安全管理上の理由から通常は関係者以外の立ち入りが制限されています。しかし、行政や教育機関との調整を経て、特別に許可を得た場合に限り内部見学が可能となるケースがあります。

 

参考)一般非公開の金鉱山に特別潜入!伊佐市・菱刈鉱山の驚きの現場と…

北海道大学をはじめとする国内外の大学や大学院の学生が、毎年研修や見学のために訪れています。これは、菱刈鉱山が国内で鉱山技術を実地体験できる数少ない貴重な場所だからです。見学では、地下坑道への入坑だけでなく、最新のDX技術への取り組みや、金鉱石の選別工程なども見ることができます。

 

参考)菱刈鉱山を見学しました

日本鉱業協会が主催する「全国鉱山・製錬所現場担当者会議」では、業界関係者向けに菱刈鉱山の見学ツアーが組まれることがあります。このような専門的な機会以外で一般の方が見学する機会は極めて限られているため、鉱山に関心がある方は関連する教育機関や業界団体を通じたアプローチが必要です。

 

参考)https://www.kogyo-kyokai.gr.jp/cms/wp-content/uploads/2025/02/2024%E5%B9%B4%E5%BA%A6_%E5%85%A8%E5%9B%BD%E9%89%B1%E5%B1%B1_%E8%A3%BD%E9%8C%AC%E6%89%80%E7%8F%BE%E5%A0%B4%E6%8B%85%E5%BD%93%E8%80%85%E4%BC%9A%E8%AD%B0_%E9%96%8B%E5%82%AC%E6%A1%88%E5%86%85_%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E4%BB%98.pdf

菱刈鉱山の歴史と発見の経緯

菱刈鉱山の歴史は比較的新しく、採掘開始は1985年(昭和60年)です。この地域は江戸時代から産金地として知られており、藩政時代には試掘が行われ、明治時代には本格的な採掘の記録も残っています。しかし、現在の菱刈鉱山の発見は、1960年代から金属鉱業事業団(現在の独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)が行った探査活動の成果です。

 

参考)菱刈鉱山 - Wikipedia

1981年(昭和56年)に高品位の金鉱脈が発見されると、その4年後には生産が開始されました。発見当初の埋蔵量は120トンとされていましたが、その後の継続的な調査により埋蔵量は増え続け、操業開始から約40年間で採掘された金の総量は264トンを超えています。これは日本屈指の金山として知られる佐渡金山の総採掘量83トンの3倍以上に相当する驚異的な数字です。

 

参考)鎌田浩毅の役に立つ地学:「1トンあたり40グラムの金」品質で…

鉱床探査の試錐では290グラム/トン、鉱山の平均でも約40グラム/トンという世界最高品位の金含有率が確認されました。この高品位が、日本国内での商業採掘を可能にしている最大の理由となっています。現在の確認埋蔵量は約155トン(2023年現在)で、年間約4トンの採掘ペースであれば約40年間の操業が可能と見込まれています。

 

参考)現代の日本にある世界有数の金山

菱刈鉱山の採掘技術と設備

菱刈鉱山は従来の鉱山とは異なる最先端の技術を導入しており、トロッコではなく大型ダンプカーで鉱石を搬出する「トラックレス・マイニング方式」を当初から採用しています。坑道の入口は幅6メートル、高さ4.5メートルと大きく、大型機械がそのまま進入できる設計になっています。

 

参考)黄金の国「ジパング」健在なり…国内唯一の「菱刈鉱山」の総採掘…

鉱床は垂直に走る多数の鉱脈により形成されており、水平方向から坑道を通して採掘を行います。穿孔マシン(ジャンボ)で鉱脈に深さ1.8~3.5メートルの孔を40~50個開け、発破により鉱石を採取します。採鉱法としては、SS法(Slice Slitting法)、BS法(Bench Stoping法)、DS法(Double Slicing法)などが開発され、遠隔操作が可能なLHD(ロード・ホウル・ダンプ)を導入することで安全性を高めています。

 

参考)菱刈鉱山(資源)

現在、菱刈鉱山では自動化も積極的に進められており、鉱石を運ぶ重機の自律走行システムの導入が計画されています。坑道内にWi-Fi設備を導入し、自動運転システムが確立すれば、海外鉱山への技術展開も視野に入れられています。採掘された鉱石は細かく砕かれた後、機械と人の目の両方を使って金が含まれている石とそうでない石に選別され、その後愛媛県西条市にある住友金属鉱山の東予工場に運ばれて製錬されます。

 

参考)菱刈鉱山

菱刈鉱山の金鉱脈形成メカニズム

菱刈鉱山の金鉱脈は「浅熱水性鉱脈型金銀鉱床」と呼ばれるタイプで、マグマの活動に伴う熱水の活動によって形成されたものと推定されています。鹿児島は火山地帯であり、火山の恵みである鉱物資源が豊かな地域です。九州南部に分布する火山岩の年代調査によると、約600万年前から現在に至るまで火山活動が東に移動していることがわかっており、金鉱床は約450万年前(春日鉱床)から100万年前(菱刈鉱床)の間に形成されました。

 

参考)金高騰!令和のゴールドラッシュ!日本の金山 - SBIふるさ…

興味深いことに、鉱床の形成は関連した火山活動から約50万年遅れて起きています。マグマの熱によって高温の地下水が流れた後に、多種の金属を含む「鉱脈」ができ、この中にごく微小の金の粒が含まれているのです。菱刈鉱山では鉱脈は30~100cmの厚さがあり、垂直に近い角度で立っており、白い石英脈の中に金が存在しています。

 

参考)https://www.enaa.or.jp/?fname=hishikarikouzan.pdf

現在も稼働中の菱刈鉱山の採掘中には温泉水が噴出しており、この温泉が湯之尾温泉として利用されています。火山国である日本には、菱刈鉱山のような鉱脈が発見されないまま埋もれている可能性が高く、今後の探査技術の発展により新たな金鉱床が見つかる可能性も指摘されています。菱刈鉱床は浅熱水金鉱床の中では、金の資源量や鉱石の金含有量の点で世界最大規模の鉱床とされています。

 

参考)温泉|離れのある囲炉裏温泉旅館 早水荘【公式サイト】

菱刈鉱山へのアクセスと周辺観光

菱刈鉱山は鹿児島県伊佐市菱刈前目3844に位置しており、鹿児島空港から車で約40分の距離にあります。公共交通機関を利用する場合、鹿児島空港から菱刈郵便局前までバスで約1時間、そこから車で約10分です。また、水俣方面からは菱刈郵便局前まで大口経由でバスが運行されており、所要時間は約1時間半です。

 

参考)菱刈鉱山がすごい!~伊佐市にある日本最大の新しい金山~ - …

最寄り駅は肥薩線の吉松駅ですが、鉱山までは直線距離で約4.2kmあり、駅から徒歩でのアクセスは現実的ではありません。バス停としては湯之尾や湯之尾駅前が最寄りとなりますが、そこから鉱山までは徒歩で約60分以上かかるため、車での移動が推奨されます。

 

参考)地図 : 住友金属鉱山株式会社 菱刈鉱山 - 伊佐市菱刈前目…

菱刈鉱山周辺には魅力的な観光スポットがあります。特に注目すべきは湯之尾温泉で、この温泉は1810年に温泉地として開けた歴史ある温泉地です。源泉は菱刈鉱山の採掘中に噴出した温泉を活用しており、金鉱山の副産物として生まれた温泉として知られています。泉質は炭酸水素塩泉で、源泉温度は64℃、美肌効果が高く「金鉱山の湯」として親しまれています。川内川上流の閑静な山の湯で、川筋に7軒の旅館が並んでおり、行楽客の利用が多いエリアです。

 

参考)湯之尾温泉街【アソビュー!】

早水荘公式サイト
湯之尾温泉の代表的な旅館の一つで、総檜造りの内湯や川内川のせせらぎを聞きながら入れる露天風呂があります。

 

住友金属鉱山 国内拠点情報
菱刈鉱山の所在地や連絡先、交通アクセスの詳細が掲載されています。

 

菱刈鉱山の見学は一般公開されていないため、鉱山そのものを訪れることはできませんが、周辺の湯之尾温泉や伊佐市の自然を楽しみながら、世界最高品位の金鉱山が近くにあることを感じることができます。また、日本鉱業協会などの専門機関が主催する見学会に参加できる機会があれば、鉱山技術の最前線を体験できる貴重な経験となるでしょう。