平衡定数求め方大学化学反応濃度温度依存性

大学化学で平衡定数を求める方法について、濃度平衡定数から圧平衡定数まで、具体的な計算手順を解説します。熱力学的アプローチや温度依存性も含め、化学反応の平衡状態をどのように数値化できるのでしょうか?

平衡定数求め方大学化学

📊 この記事で学べる平衡定数の求め方
⚖️
濃度平衡定数の計算

モル濃度を用いた基本的な平衡定数の導出方法と具体的な計算手順

🌡️
熱力学的アプローチ

標準ギブズエネルギー変化から平衡定数を理論的に求める方法

📈
温度依存性の理解

温度変化による平衡定数の変動を予測する計算テクニック

平衡定数の基本式と濃度計算

 

平衡定数は化学反応が平衡状態に達したときの各成分の濃度比を表す重要な定数です。一般的な化学反応式 aA + bB ⇄ cC + dD において、濃度平衡定数Kcは K = [C]^c[D]^d / [A]^a[B]^b と表されます。ここで重要なのは、左辺の反応物が分母、右辺の生成物が分子に配置され、各物質の濃度を化学反応式の係数で累乗するという点です。

 

参考)【化学平衡】平衡定数やmol数の変化、グラフなど

具体的な計算手順として、まず反応前後の物質量変化を表にまとめます。例えばH₂ + I₂ ⇄ 2HIの反応では、反応前のH₂とI₂が1.0 molずつで、平衡時に0.20 molになった場合、反応で消費された量は0.80 mol(1.0 - 0.20)です。係数比から生成したHIは1.6 molと計算でき、これらの値を容器の体積で割ってモル濃度に変換します。

 

参考)化学平衡の法則とルシャトリエの原理

平衡定数の値は温度が一定であれば初期濃度によらず常に一定になります。これは化学平衡の法則として知られ、反応の種類と温度によってのみ決定されます。実際の計算では、平衡時の濃度を求めた後、平衡定数の式に代入して数値を得ます。

 

参考)【高校理論化学】平衡状態と化学平衡の法則(濃度平衡定数Kcと…

平衡定数の熱力学的導出方法

大学化学では、平衡定数を熱力学的に求める方法が非常に重要です。標準反応ギブズエネルギー変化ΔrG°と平衡定数Kの間には、ΔrG° = -RT ln Kという関係式が成り立ちます。ここでRは気体定数(8.314 J/(mol·K))、Tは絶対温度(K)です。この式から平衡定数を求めるには、ln K = -ΔrG°/RTを計算し、両辺の指数をとってK = exp(-ΔrG°/RT)とします。

 

参考)【化学平衡】化学反応系に熱力学を適用する方法と平衡定数の導出…

標準反応ギブズエネルギーΔrG°は、各化学種の標準生成ギブズエネルギーΔfG°から計算可能です。具体的には、生成物の標準生成ギブズエネルギーの総和から反応物の総和を引くことで求められます。また、ΔrG° = ΔrH° - TΔrS°(ΔrH°は標準反応エンタルピー、ΔrS°は標準反応エントロピー)という関係も利用できます。

 

参考)平衡定数の計算

実用的には、25℃(298.15 K)、1気圧における熱力学データを用いて平衡定数を計算することが多いです。例えば水蒸気の熱分解反応H₂O(g) → H₂(g) + (1/2)O₂(g)において、2300 Kでの標準ギブズエネルギー変化が118.08 kJ/molと与えられた場合、この値を上記の式に代入することで平衡定数が求まります。

 

参考)https://chemeng.web.fc2.com/cre2024/cre02.html

圧平衡定数と濃度平衡定数の関係

気相反応では、モル濃度の代わりに気体の分圧を用いた圧平衡定数Kpが使われます。反応 aA + bB ⇄ cC + dD において、圧平衡定数は Kp = (PC)^c(PD)^d / (PA)^a(PB)^b と表されます。ここでPJは各気体の分圧(Pa)です。

 

参考)http://fastliver.com/kagakuheikousample.pdf

濃度平衡定数Kcと圧平衡定数Kpの間には、理想気体の状態方程式PV = nRTから導かれる関係式があります。具体的には、濃度[J] = n(J)/V = P(J)/(RT)という関係を用いて、Kp = Kc × (RT)^Δνという換算式が得られます。ここでΔνは反応式における気体の係数変化(生成物の係数の総和 - 反応物の係数の総和)です。

 

参考)【大学の物理化学】平衡定数と反応ギブズエネルギーの関係につい…

例えばアンモニア合成反応N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃では、Δν = 2 - (1+3) = -2となるため、Kc = Kp × (RT)²という関係になります。一方、H₂ + I₂ ⇄ 2HIのような反応では、Δν = 2 - (1+1) = 0なので、KpとKcは数値的に等しくなります。このように、反応の種類によって両者の関係が変わることに注意が必要です。

化学のグルメ:化学平衡と平衡定数の詳細解説
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平衡定数の温度依存性計算

平衡定数は温度によって変化し、その温度依存性を表す式としてファントホッフの式が知られています。積分形では ln K = -ΔH°/RT + C(Cは積分定数)と表されます。より実用的な形として、2つの温度T₁とT₂における平衡定数K₁とK₂の関係は、ln(K₂/K₁) = (ΔH°/R)(1/T₁ - 1/T₂)となります。

任意の温度における平衡定数を求めるには、まず25℃(298.15 K)における標準ギブズエネルギー変化から平衡定数Kを計算します。次に標準エンタルピー変化ΔH°を求め、これらの値を用いて積分定数Cを決定します。最終的に ln K = -ΔH°/RT + C の式に所望の温度Tを代入することで、その温度での平衡定数が得られます。

吸熱反応では温度上昇とともに平衡定数が増加し、発熱反応では減少します。例えば水蒸気の熱分解反応(吸熱反応)では、温度が上がると平衡が反応物側(吸熱側)に移動するため平衡定数が増加します。実際の計算では、各成分の熱容量の温度依存性も考慮したより精密な式 ln K = -ΔH°/RT + (Δa/R)lnT + (Δb/2R)T + (Δc/6R)T² + ... + C が用いられることもあります。

化学反応工学:平衡定数の温度依存性と平衡組成
実際の化学プロセスで使用される平衡定数計算の詳細な手順とエクセル計算シートの実例が掲載されています。

 

平衡定数計算における鉱石関連反応の実例

金属精錬や鉱石処理における化学反応でも平衡定数の概念が重要です。高温化学反応により生成する相は、ギブズの相律によって規制される熱力学的示強因子が与えられたときに安定化します。溶鉄中の元素間相互作用を表す熱力学データは、鉱石からの製鉄プロセスや合金元素の挙動予測に不可欠です。

 

参考)https://core.ac.uk/download/pdf/39207649.pdf

例えばFe-Ni-Cr系合金の脱酸反応における平衡定数の計算では、活量係数の表現方法が重要になります。希薄溶液ではHenry基準の活量を用いてWagnerの展開式で活量係数を表しますが、高合金系ではRaoult基準の活量を用いたRedlich-Kisterパラメータによる展開式が適用範囲が広く有効です。実際の計算では、相互作用助係数をRedlich-Kisterパラメータから算出し、脱酸反応の平衡定数と組み合わせることで、平衡時の酸化物濃度を予測できます。

 

参考)302 Found

さらに、固体-気体反応における平衡定数では、固体の活量は1と定義されるため、平衡定数の式には固体成分を含めません。例えば炭素と二酸化炭素の反応 C(s) + CO₂(g) ⇄ 2CO(g) では、Kp = P(CO)²/P(CO₂)と表され、固体炭素の項は現れません。このように、鉱石処理や金属精錬の実際の計算では、反応系の特性に応じた適切な平衡定数の定式化が必要となります。

 

参考)平衡定数で固体の濃度は1?一定?無視?理屈を化学的に解説! …

日本鉄鋼協会:溶鉄中元素間の相互作用パラメータ決定法
金属製錬における化学平衡と相互作用係数の実験的測定方法について、専門的な解説がなされています。

 

 


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