半導体レーザーは、アルミニウム・ガリウム・ヒ素などの半導体素子を媒質として光を発振する医療機器で、歯科領域では主に波長810nm前後の近赤外線が使用されています。この波長帯は水分への吸収が少なく、メラニンやヘモグロビンといった色素成分に選択的に吸収される特性を持つため、軟組織の処置に最適です。レーザー光線は単一波長で高い指向性を持ち、エネルギーが集中するため、ピンポイントで患部に作用します。
参考)https://www.omicsonline.org/open-access/current-uses-of-diode-lasers-in-dentistry-2161-119X-1000295.php?aid=87878
照射時には組織表面だけでなく、深部まで光が透過する組織透過性の高さが半導体レーザーの大きな特徴です。この性質により、歯周ポケットの奥深くや根管内部といった器具が届きにくい部位にもレーザー光を到達させ、炎症組織の蒸散や細菌の殺菌を行うことができます。また、光ファイバーを用いた照射方式により、コンパクトなペン型装置でも幅広い症例に対応可能となっています。
参考)歯科用ペン型半導体レーザー ULTRAFAST|株式会社フォ…
半導体レーザー治療の最大のメリットは、痛みが少なく患者の負担を大幅に軽減できる点です。従来のメスや切削器具と異なり、振動や不快な音がほとんど発生しないため、歯科治療に恐怖心を持つ方や小児にも適しています。麻酔なしまたは少量の麻酔で処置できるケースが多く、レーザー光自体に神経を保護する作用があるため、治療中の痛みを効果的に抑えられます。
参考)歯科用レーザーについて🔫
出血がほとんどないことも大きな利点です。レーザーの熱凝固作用により、切開と同時に止血が行われるため、術野が明瞭になり精密な処置が可能になります。さらに殺菌作用により感染リスクが低減され、組織の治癒速度が促進されるため、術後の腫れや痛みも少なく回復が早い傾向にあります。ピンポイントで患部のみに照射できるため、健康な周囲組織を傷つけるリスクも最小限に抑えられます。
参考)歯科用の半導体レーザーとは?特徴・用途や原理・波長、禁忌を分…
歯周病治療において半導体レーザーは、歯周ポケット内の炎症組織の除去と細菌の殺菌に優れた効果を発揮します。歯周ポケットにレーザーを照射することで、歯周病菌を減少させながら炎症や出血を抑制し、歯肉の治癒を促進します。組織透過性が高いため、スケーラーやキュレットが届きにくい深いポケットの奥まで作用が到達し、デブライドメント(汚染組織の除去)を効果的に行えます。
参考)歯周病治療で扱うレーザーについて
光線力学療法(PDT治療)と呼ばれる先進的な治療法でも半導体レーザーが活用されています。この方法では、光感受性物質を歯周ポケット内に注入した後にレーザーを照射することで、歯周病菌を選択的に殺菌します。従来の機械的清掃に比べて深部の細菌除去効果が高く、重度の歯周病症例にも有効とされています。ただし、レーザー治療はあくまで補助的な手段であり、歯科衛生士による歯石除去やクリーニング、ブラッシング指導といった基本治療との併用が不可欠です。
参考)レーザー治療について href="https://morimoto-dent.com/blog/61/" target="_blank">https://morimoto-dent.com/blog/61/amp;#8211; 兵庫県神戸市西区の歯医…
根管治療(歯の神経の治療)では、感染した根管内にレーザーを照射することで、炎症や排膿を抑える効果が期待できます。光ファイバーを根管内に挿入できるため、複雑な形態の根管でもレーザー光が届き、通常の器具では除去しきれない細菌の殺菌に役立ちます。フィステル(歯茎にできる膿の出口)がある場合には、直接レーザーを照射することで治癒が促進されます。ただし、感染根管治療の基本は感染歯質の機械的除去であり、レーザーはそれを補完する位置づけです。
参考)レーザー治療 - 東京の根管治療・歯内療法専門医院
口内炎の治療においても半導体レーザーは即効性のある効果を発揮します。患部にレーザーを照射すると、痛みが治療当日から和らぎ、傷の治りが早まることを実感できます。レーザーには組織や細胞の再生を促す作用があり、粘膜の治癒速度を促進させます。長引く口内炎や繰り返す口内炎に悩む患者にとって、薬剤だけの治療に比べて短期間で症状改善が見込める優れた選択肢となっています。
参考)レーザー治療が可能な歯科トラブルの種類と利点を解説 - メイ…
半導体レーザー治療の保険適用範囲は拡大傾向にあります。2008年に虫歯治療、2010年には歯周病治療、2018年からは歯茎などの軟組織処置に対しても保険が適用されるようになりました。具体的には「う蝕歯無痛的窩洞形成加算」「手術時歯根面レーザー応用加算」「歯科用レーザー照射療法」などの項目で保険算定が可能です。ただし、保険適用には施設基準や術者の研修修了要件があり、すべての処置が保険対象になるわけではありません。
参考)レーザー歯科治療 - 小岩駅前パークス歯科
自費診療も含めた治療費は、処置内容や医院によって異なりますが、保険適用の場合は数百円から数千円の患者負担で済むケースが多くなっています。レーザー装置本体の導入費用は機種により80万~150万円程度で、従来のガスレーザーやエルビウムヤグレーザーに比べて低価格です。保守コストも光ファイバーなどの消耗品費用が中心で比較的軽微なため、多くの歯科医院で導入が進んでいます。
参考)レーザー治療
半導体レーザーは出力の低い医療用レーザーであり、高い安全性が確保されています。レントゲンのような放射線を含まないため、身体に有害な影響を与えることはなく、電気を通さないため心臓疾患やペースメーカー使用者、高血圧や妊娠中の方でも安心して治療を受けられます。照射時間は1/10000秒と非常に短く、1000℃以上の熱が発生しても歯の神経には影響がなく、痛みを感じることはほとんどありません。
ただし適応には限界があり、歯科用半導体レーザーは主に軟組織処置に適しており、硬組織の切削(虫歯の除去や歯の形成)には適応外です。硬組織の処置にはEr:YAGレーザーなど別の種類のレーザーが必要となります。また、どこの歯科医院でも受けられるわけではなく、レーザー装置を導入している医院に限られます。重度の歯周病など症状によってはレーザー単独では治療できないケースもあり、従来の治療法との組み合わせが必要です。安全に治療を受けるためには、レーザー治療の経験が豊富な歯科医師を選ぶことが重要です。
参考)歯周病のレーザー治療とは?種類やメリット・デメリット・治療に…
歯科用半導体レーザーの特徴と用途について詳しく解説された専門サイト
歯科領域における半導体レーザーを用いた低反応レベルレーザー治療の研究論文

TOYO T4T 工業用ラインレーザーモジュール 直線ライン TLM-320R (固定焦点式 赤色半導体レーザー)〈 TLM-320R〉