灰簾石特徴や結晶系・産地・用途・色

灰簾石は斜方晶系に属するケイ酸塩鉱物で、変成岩中に産出し、多様な色と特徴を持ちます。タンザナイトやアニョライト、チューライトといった宝石としても知られる灰簾石には、どのような鉱物学的特性や魅力があるのでしょうか?

灰簾石の特徴と性質

灰簾石の主要な特徴
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結晶構造の特性

斜方晶系に属し、カルシウム・アルミニウム・ケイ素から構成される独特の結晶構造を持つ

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多彩な色彩変化

灰色から青紫、ピンク、緑色まで、含有成分により多様な色を呈する

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脆弱性への注意

完全な劈開を持ち超音波洗浄で破損しやすく、取り扱いに配慮が必要

灰簾石の結晶系と化学組成の特徴

 

灰簾石は斜方晶系に属する正方晶系のケイ酸塩鉱物で、化学式はCa₂Al₃(Si₂O₇)(SiO₄)O(OH)です。従来は緑簾石グループに属するとされていましたが、2006年の国際鉱物学連合の新分類により、緑簾石グループの定義に単斜晶系が入れられたため、正方晶系である灰簾石は除外されることとなりました。結晶構造では、ケイ素酸素四面体とケイ素酸素二量体が連なり、その間にカルシウムとアルミニウムが配置されることで安定した骨格を形成しています。

 

参考)灰簾石 - Wikipedia

この鉱物の大きな特徴として、鉄(Fe³⁺)を含まない斜灰簾石の高温相にあたることが挙げられます。結晶構造で見ると、Feを含まない斜灰簾石の格子単位での(1 0 0)の双晶構造の多形となっており、斜灰簾石より産出は少ない傾向にあります。灰簾石の結晶は柱状や板状を形成し、薄い板が重なったような形状が結晶の先端部分に見られることがあります。

 

参考)灰簾石とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書

興味深いことに、同じ化学組成を持ちながら結晶構造が異なる同質異像の鉱物として「クリノゾイサイト(単斜灰簾石)」が存在します。これらは成分は同じでも、結晶系が異なるために別の鉱物として分類されています。

 

参考)ゾイサイト(zoisite/灰簾石)~組成・特徴・歴史・産地…

灰簾石の色と多色性の特徴

灰簾石の色彩は非常に多様で、灰色を基本としつつ、黄色、ピンク色、青色、緑色、褐色、無色など幅広い色合いを呈します。この多様な色彩は、微量元素の含有によって生み出されます。特にバナジウムを含むものは青~青紫色を示し、「タンザナイト」として宝石市場で高い評価を受けています。マンガンを含むものは桃色から赤色を呈し、「チューライト(桃簾石)」と呼ばれます。

 

参考)https://melc-lilli.com/archives/2695

タンザナイトは見る角度によって色合いが変化する多色性という性質を持つことで知られています。太陽光のもとでは色鮮やかなブルーに見えますが、月明かりや照明などの下では紫がかって見える特徴があります。この現象はタンザナイトに含まれるバナジウムの性質によるもので、さらに微量の酸化クロムを含んだものは濃い青色を示します。

 

参考)12月の誕生石タンザナイト(灰簾石)の効果について

緑色の灰簾石と赤いルビーが組み合わさった「アニョライト」も特筆すべき変種です。アニョライトはマサイ族の言葉で緑を意味する「anyoli」が語源で、緑のゾイサイトと黒のチェルマカイト、そしてルビーの結晶から構成されています。この組み合わせにより、緑と赤の見事なコントラストが織りなす独特の美しさを生み出しています。

 

参考)ルビーインゾイサイト パワーストーン 意味辞典

灰簾石の産地と産状の特徴

灰簾石は主に高圧型の広域変成岩中に出現し、角閃石片岩の構成鉱物として産出します。普通角閃石、アルマンディン(ガーネット)、透輝石、ソーダ雲母、藍晶石、石英などと共生して見られ、時にはエクロジャイト(榴輝岩)にも産出します。変成岩やペグマタイト中で多く発見され、結晶片岩中の副成分鉱物として、また柱状結晶が集合して脈や塊をなして産することもあります。

 

参考)https://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/mineral-rock-sirabekata/mineral44/epx-mineral/henkoukenbikyou-koumoku/henkoukenbi%20zougankoubutu/micro%20zoisite.htm

世界の主要産地は多岐にわたります。タンザナイトの産地として知られるタンザニアのアルーシャ地区メレラニ鉱山は最も有名です。この地域で採掘される青い灰簾石が特にタンザナイトと呼ばれ、厳密にはタンザナイトの原産地はタンザニアのみとされています。ただし、青い灰簾石自体はオーストリアのチロル地方、北アメリカのノースカロライナ州、西オーストラリアなどでも産出されています。

アニョライト(ルビーインゾイサイト)の主要産地はケニアで、チューライト(桃簾石)はノルウェーが代表的産地です。その他、スイス、オーストリア、インド、パキスタン、アメリカのワシントン州でも産出が確認されています。日本国内では糸魚川産のチューライトが知られており、磨きのアクセサリーなどが有名です。

灰簾石の物理的特徴と硬度

灰簾石のモース硬度は6.5~7で、中程度の硬さを示します。比重は約3.3~3.4で、ガラス光沢を持ち、条痕色は白色です。屈折率が高いため、平行ニコルの偏光顕微鏡下では輪郭や割れ目がはっきりと観察できます。

 

参考)灰簾石(カイレンセキ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

この鉱物の大きな特徴の一つは、一方向に完全な劈開を持つことです。劈開とは、鉱物が特定の方向に沿って平面的に割れやすい性質を指します。灰簾石はこの劈開が完全であるため、衝撃や圧力に対して脆弱な面があります。特にタンザナイトを含めて、超音波洗浄をすると壊れやすいという特性があるため、取り扱いには十分な注意が必要です。

クロスニコルの偏光顕微鏡下では、結晶の伸びに対して直消光し、組成変化に乏しいため常に干渉色はかなり低く、1次の白色程度まで(異常干渉色で藍色)となります。この特徴は、類似鉱物である斜灰簾石との識別に役立ちます。斜灰簾石はAl→Fe³⁺などの組成変化が大きく、干渉色も異なるためです。

灰簾石の用途と鑑賞価値の特徴

灰簾石の用途は主に宝石や装飾品として多岐にわたります。無色のものは宝石として好まれ、半透明から不透明なものは主として彫刻などに用いられています。特にタンザナイトは12月の誕生石の一つに指定されており、「高貴」や「冷静」といった石言葉を持ち、ジュエリー市場で高い人気を誇ります。青紫色の美しい透明なタンザナイトは研磨されて指輪、ネックレス、イヤリングなどに加工されます。

 

参考)タンザナイト(tanzanite/灰簾石)~組成・特徴・歴史…

チューライト(桃簾石)は、淡いピンクから赤色の色合いを持ち、温かみのある色調から癒しや愛情を象徴する石として親しまれています。心の緊張をほぐし、愛情や思いやりの感情を育む石とされ、アクセサリーとしても人気が高く、自然な優しさと落ち着きを表現する石として選ばれることが多いです。磨き石として市場に出回ることが多く、特に糸魚川産のチューライトは日本国内で評価されています。

 

参考)チューライトの意味・効果や特徴とは href="https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/5483" target="_blank">https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/5483amp;#8211; 福縁閣パ…

アニョライト(ルビーインゾイサイト)は、緑のゾイサイトに赤いルビーが混在する独特の外観から、装飾品や彫刻作品に用いられます。アニョライトに含まれるルビーは宝石になるほど上質なものは稀ですが、ゾイサイトの緑と見事なコントラストを織りなし、独特の美しさを醸し出すため、コレクターや愛好家に人気があります。

 

参考)宝石図鑑 石言葉

鉱物標本としても灰簾石は高い価値を持ちます。結晶面の様子や薄い板が重なったような形状が観察でき、特徴的な結晶の形態が標本から良く観察できるため、教育用や学術研究用としても重宝されています。変成岩の研究においては、角閃石片岩やエクロジャイトの構成鉱物として、地質学的な温度・圧力条件を推定する指標鉱物としても利用されます。

灰簾石の分類や歴史に関する詳細情報:Wikipedia 灰簾石
タンザナイトの宝石学的特徴と産地情報:宝石モール
灰簾石の薄片観察と鉱物学的特性:倉敷市立自然史博物館

 

 


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