電束密度 公式と誘電率の関係から導出方法

電束密度とは電場や誘電体に深く関わる物理量であり、その公式は電磁気学の基本となります。電束密度の定義から計算式の導出、誘電率との関係まで理解できているでしょうか。

電束密度の公式と誘電率

📊 電束密度の基礎知識
電束密度の定義

単位面積あたりの電束の数を表す物理量で、記号Dで表されます

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基本公式

D=εEという関係式で電場Eと誘電率εから求められます

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単位と表記

単位は[C/m²]で、クーロン毎平方メートルと読みます

電束密度の基本公式と定義

電束密度DDDは、単位面積1m21\mathrm{m}^21m2あたりの電束の数を表す物理量です。記号はDDDを使用し、単位は[C/m2]\mathrm{[C/m^2]}[C/m2]となります。電束密度は誘電体内部の電場に関連して用いられる補助的なベクトル場であり、電気変位とも呼ばれています。

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電束密度の最も基本的な公式は、真空中ではD=ε0ED=\varepsilon_0 ED=ε0Eと表されます。ここでε0\varepsilon_0ε0は真空の誘電率(8.854187817×1012F/m8.854187817×10^{-12}\mathrm{F/m}8.854187817×10−12F/m)、EEEは電場の強さ[V/m]\mathrm{[V/m]}[V/m]を示します。誘電率ε\varepsilonεの媒質中では、この式はD=εED=\varepsilon ED=εEと一般化されます。

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ガウスの法則によって電束密度が定義されており、閉曲面SSSを通過する電束密度の面積分は、その内部の電荷QQQに等しくなります。これを式で表すとSDdS=Q\displaystyle \oint_S D\mathrm{d}S=Q∮SDdS=Qとなり、電束密度は真電荷の分布だけから求められるため計算に都合がよいという特徴があります。

参考)電束密度 - Wikipedia

電束密度と電界強度の関係式

電束密度DDDと電界強度EEEの関係は、誘電体の性質を理解する上で極めて重要です。誘電体内部の任意の場所の電場をEEE、分極(単位体積あたりの電気双極子モーメント)をPPPとするとき、D=ε0E+PD=\varepsilon_0 E+PD=ε0E+Pという関係式で定義されます。この式において、分極PPPは誘電体内部で生じる電気分極を表しています。

参考)電束密度(デンソクミツド)とは? 意味や使い方 - コトバン…

誘電体の外部、すなわち真空中では分極P=0P=0P=0となるため、関係式はD=ε0ED=\varepsilon_0 ED=ε0Eとなり、電束密度と電場には本質的な差はなくなります。一方、通常の誘電体中では分極PPPがその場所の電場EEEに比例し、したがって電束密度DDDもEEEに比例します。この比例関係をD=ε0κED=\varepsilon_0\kappa ED=ε0κEと表し、κ\kappaκをその誘電体の相対誘電率と呼びます。

電界強度EEEは電気力線の密度として理解できますが、電束密度DDDは電束の密度として理解されます。電界の大きさは電束密度を誘電率で割ることで求められるため、異なる誘電率が並ぶ場合でも電束密度の考え方を用いれば簡単に計算できます。

参考)電界とは|電気力線と電束の違い

電束密度の計算方法と導出過程

電束密度の計算には、対象となる系の対称性に応じた方法が用いられます。点電荷の場合、電束密度DDDはD=Q4πr2\displaystyle D=\frac{Q}{4\pi r^2}D=4πr2Qで表されます。これは電荷QQQから放出される電束が、半径rrrの球面上に一様に分布することから導かれます。

参考)電束と電束密度

線電荷の場合、電束密度はD=Q2πr\displaystyle D=\frac{Q}{2\pi r}D=2πrQとなります。これは線状の電荷分布から放射状に広がる電束が、円筒面上に分布することを反映しています。平行平板コンデンサの場合、電束密度は極板の表面電荷密度σ\sigmaσに等しく、D=σD=\sigmaD=σという簡潔な関係が成り立ちます。

参考)分極電荷の性質と様々な系における計算問題

電束密度の導出過程では、ガウスの法則の積分形SDdS=Q\displaystyle \oint_S D\mathrm{d}S=Q∮SDdS=Qから出発します。対称性が高い系では、この積分を展開してDS=QD\cdot S=QD⋅S=Qとし、電束密度D=Q/SD=Q/SD=Q/Sを得ることができます。微分形ではdivD=ρ\mathrm{div}\,\mathbf{D}=\rhodivD=ρ(ρ\rhoρは電荷密度)となり、電束密度のわき出しが真電荷密度に等しいことを示します。

電束密度の計算例とガウスの法則の詳細解説(電験3種)

電束密度と誘電率・分極の関係

電束密度と誘電率の関係は、誘電体の電気的性質を理解する鍵となります。誘電率ε\varepsilonεは電荷の溜めやすさを表す物質定数であり、比誘電率εr\varepsilon_rεrはその材料の誘電率の真空の誘電率ε0\varepsilon_0ε0に対する割合として定義されます。この関係からε=ε0εr\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_rε=ε0εrという式が得られ、電束密度はD=ε0εrED=\varepsilon_0\varepsilon_r ED=ε0εrEと表現できます。

参考)https://ocw.nagoya-u.jp/files/261/Amano_LN5.pdf

分極ベクトルPPPと電束密度の関係式D=ε0E+PD=\varepsilon_0 E+PD=ε0E+Pにおいて、実験的に外部電場が十分小さい場合、分極ベクトルと外部電場は比例します。比例定数を電気感受率χe\chi_eχeとすると、P=ε0χeEP=\varepsilon_0\chi_e EP=ε0χeEとなり、これを代入するとD=ε0(1+χe)E=ε0εrED=\varepsilon_0(1+\chi_e)E=\varepsilon_0\varepsilon_r ED=ε0(1+χe)E=ε0εrEという関係が導かれます。ここから比誘電率がεr=1+χe\varepsilon_r=1+\chi_eεr=1+χeで表されることがわかります。

参考)誘電体と分極

分極電荷と電束密度の関係も重要です。誘電体表面に分布する分極電荷は、誘電体内外の真電荷とともに電場EEEのわき出しになりますが、電束密度のわき出しになるのは真電荷だけです。この性質により、電束密度を用いることで分極電荷を考慮せずに計算できるため、誘電体問題の解析が大幅に簡略化されます。

参考)https://www.phys.kindai.ac.jp/laboratory/kondo/lectures/em_tb/node237.html

分極と電束密度の詳細な関係式と導出(近畿大学)

電束密度の鉱物・誘電体材料への応用

電束密度の概念は、鉱物や誘電体材料の電気的特性を理解し評価する上で実用的な役割を果たします。鉱物に含まれる誘電体結晶は、それぞれ固有の誘電率を持ち、電束密度DDDと電界EEEの関係が材料ごとに異なります。例えば水晶(石英)は圧電性を示す鉱物であり、機械的な力を加えると分極が生じ、それに伴う電束密度の変化が電気信号として検出されます。

参考)マクスウェル方程式に現れる諸量の解説 - 相対論の理解とその…

平行平板コンデンサに異なる誘電率の材料を挿入した場合の電束密度の振る舞いは、材料評価の基本となります。複数の誘電体が直列に配置された系では、電束密度DDDは誘電体の種類や位置に依らず一定であるという性質があります。この性質を利用して、各誘電体部分における電界の強さをE=D/εE=D/\varepsilonE=D/εから計算し、材料の誘電特性を評価できます。

参考)《理論》〈電磁気〉[R05上:問1]平行平板コンデンサの電界…

誘電体の境界面では、電界と電束密度に関する境界条件が成り立ちます。境界面に垂直な成分については、電束密度の垂直成分が連続D1n=D2nD_{1n}=D_{2n}D1n=D2nとなり、境界面に平行な成分については電界の接線成分が連続E1t=E2tE_{1t}=E_{2t}E1t=E2tとなります。この境界条件を用いることで、複雑な誘電体配置における電束密度分布を解析でき、鉱物資源の電気探査や絶縁材料の設計に応用されています。

参考)電気影像法とその活用│電気の神髄
youtube​
雲母や長石などの層状珪酸塩鉱物は、層間の誘電率が結晶軸方向によって異なる異方性を示すため、電束密度の方向依存性を考慮した解析が必要です。このような異方性誘電体では、電束密度ベクトルD\mathbf{D}Dと電界ベクトルE\mathbf{E}Eの方向が一致しない場合があり、誘電率をテンソル量として扱う必要があります。

参考)http://www.g-munu.t.u-tokyo.ac.jp/mio/note/elemag/kk.pdf

平行平板コンデンサの電束密度計算例題(電気ンデンサの電束密度計算例題(電気技術者試験)