電子親和力グラフ特徴と周期表での変化傾向

電子親和力のグラフにはどのような特徴があるのでしょうか?周期表上での変化傾向やハロゲン・希ガスでの特異な値、そして族や周期による規則性を詳しく解説します。鉱石や元素の性質を理解するための基礎知識として、グラフの読み解き方を学んでみませんか?

電子親和力グラフの特徴

電子親和力グラフの主要な特徴
📊
ハロゲンで極大値

同一周期内でハロゲン元素が最も大きな電子親和力を示す

🔻
希ガスで最小値

希ガス元素は電子親和力がほぼゼロになり極端に小さい

📈
周期的な増減パターン

原子番号の増加に伴って規則的な山と谷を形成する

電子親和力は、気体状態の中性原子が電子1個を受け取って陰イオンになる際に放出されるエネルギーを表します。このエネルギーを横軸に原子番号、縦軸に電子親和力をとってグラフ化すると、特徴的な周期的変化が観察されます。グラフの最も顕著な特徴は、ハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)で極大値を示し、希ガス元素(ヘリウム、ネオン、アルゴンなど)で極小値(ほぼゼロ)になる点です。

 

参考)電子親和力(周期表上での最大最小・グラフ・希ガスやハロゲンの…

電子親和力のグラフは、元素の「電子を受け取る能力」を視覚的に示す重要なツールとなります。ハロゲン元素の位置では鋭いピークが形成され、これは他の原子から電子を奪い取る「攻撃力」が最も高いことを意味します。一方、希ガス元素の位置ではグラフが谷底に達し、すでに安定な電子配置を持つため追加の電子を受け入れる必要がないことを示しています。

 

参考)イオン化エネルギー、電子親和力、電気陰性度のグラフの違いを区…

電子親和力グラフでのハロゲン元素の極大

 

ハロゲン元素(第17族)は、電子親和力グラフにおいて同一周期内で最も高い値を示します。これは、ハロゲン原子が電子を1個受け取ることで、最外殻が完全に満たされた安定な希ガス型電子配置になるためです。フッ素、塩素、臭素、ヨウ素といったハロゲン元素は、あと1個の電子で電子殻が閉殻構造となるため、電子を強く引きつける傾向があります。

 

参考)イオン化エネルギーと電子親和力まとめ

実際の測定値を見ると、塩素の電子親和力は約349 kJ/molと非常に大きな値を示します。この高い電子親和力により、ハロゲン元素は陰イオン(ハロゲン化物イオン)になりやすく、反応性の高い元素として知られています。グラフ上では、各周期においてハロゲン元素の位置で明確なピークが形成され、この規則性は周期表の構造を理解する上で重要な手がかりとなります。

 

参考)【化学基礎】電子親和力とは?最大・最小とグラフについて徹底解…

電子親和力の詳細な解説(化学のグルメ)
電子親和力の定義とハロゲン元素での極大値について、図解を用いた丁寧な説明が掲載されています。

 

電子親和力グラフでの希ガス元素の最小値

希ガス元素(第18族)は、電子親和力グラフにおいて極端に小さな値(ほぼゼロまたは負の値)を示します。これは、希ガスがすでに最外殻電子が完全に満たされた安定な電子配置(閉殻構造)を持っているためです。ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス元素は、電子を追加で受け取ると、次の高いエネルギー準位の軌道に電子を収容しなければならず、これはエネルギー的に不利になります。

 

参考)化学講座 第5回:電子親和力・電気陰性度

希ガス元素の電子親和力がほぼゼロであることは、これらの元素が化学的に極めて安定で、他の元素と反応しにくい性質を説明します。グラフ上では、各周期の終わりに希ガス元素の位置で急激な谷が形成され、次の周期の開始とともに再び値が上昇し始めます。この周期的なパターンは、元素の周期性を理解する上で極めて重要な視覚的証拠となっています。

電子親和力グラフにおける周期表上の変化傾向

電子親和力は周期表上で規則的な変化を示し、同一周期では原子番号が増加するにつれて一般的に増大する傾向があります。これは、周期表の右側に進むほど原子核の正電荷(有効核電荷)が大きくなり、電子を引きつける力が強くなるためです。一方、同一族では原子番号が増加する(周期が下がる)と、一般的に電子親和力は減少します。これは原子半径が大きくなることで、原子核と最外殻電子の距離が遠くなり、電子を引きつける力が弱まるためです。

 

参考)ビデオ: 電子親和力

ただし、第2周期と第3周期を比較すると、第2周期の元素よりも第3周期の元素の方が電子親和力が大きくなるという興味深い例外が存在します。これは第2周期の原子が非常に小さいため、電子間反発が強く働き、新たな電子を受け入れにくくなるためです。このような例外的な振る舞いは、単純な規則だけでは説明できない電子親和力の奥深さを示しています。

 

参考)電子親和力・周期表との関連についての解説 - 化学徒の備忘録…

電子親和力グラフでの族ごとの特徴的パターン

電子親和力のグラフを族(縦の列)ごとに観察すると、それぞれ特徴的なパターンが現れます。第1族(アルカリ金属)では、電子を1個受け取ると安定な準閉殻構造になるため、電子親和力は小さい負の値を示します。第2族(アルカリ土類金属)では、エネルギーの高いp軌道に電子を収容する必要があるため、電子親和力は正の値(エネルギーを吸収する)となります。

 

参考)イオン化エネルギーと電子親和力:そもそもどうやって測定するの…

第14族と第15族を比較すると、同じ周期では第14族の方が第15族よりも電子親和力が大きくなります。これは第15族がすでに半閉殻構造(p軌道に3個の電子が対を作らずに配置)を持ち、相対的に安定であるためです。第16族(カルコゲン:酸素、硫黄など)では比較的大きな電子親和力を示し、陰イオンになりやすい性質を持ちます。これらの族ごとの違いは、元素の化学的性質や反応性を予測する上で重要な指標となります。

 

参考)https://www.molecularscience.jp/lecture/BasicChemistry1_15.pdf

イオン化エネルギーと電子親和力の詳細比較(理系ラボ)
族ごとの電子親和力の変化パターンと、その背後にある電子配置の関係について詳しく解説されています。

 

電子親和力グラフを活用した鉱物の電子的性質の理解

電子親和力のグラフは、鉱物や鉱石を構成する元素の電子的性質を理解する上で実用的なツールとなります。鉱物中に含まれる金属イオンやアニオンの安定性は、構成元素の電子親和力によって大きく影響を受けます。例えば、硫化鉱物(黄鉄鉱、閃亜鉛鉱など)に含まれる硫黄は第16族元素であり、比較的大きな電子親和力を持つため、金属から電子を受け取って硫化物イオン(S²⁻)として安定に存在します。

ハロゲン化鉱物(岩塩、蛍石など)では、塩素やフッ素といった電子親和力の極めて大きい元素が陰イオンとして結晶構造に組み込まれています。電子親和力グラフから、これらのハロゲン元素が他の元素から電子を奪い取る強い傾向を持つことが読み取れ、鉱物の形成過程や化学的安定性を説明できます。また、酸化鉱物(赤鉄鉱、磁鉄鉱など)に含まれる酸素も、電子親和力が大きい第16族元素であり、金属と強固なイオン結合を形成します。

さらに、鉱石の製錬プロセスにおいても、電子親和力の知識は重要です。例えば、金属を鉱石から取り出す際には、酸素や硫黄などの電子親和力の大きい元素から電子を奪い返す必要があり、この反応には大きなエネルギーが必要となります。電子親和力グラフを参照することで、どの元素がより強固に電子を保持しているかを視覚的に把握でき、製錬の難易度や必要なエネルギーを推定することができます。このように、電子親和力のグラフは鉱物学や資源工学において、単なる理論的な知識を超えた実用的な価値を持っています。

 

参考)https://ocw.nagoya-u.jp/files/109/lecnote_03.pdf

イオン化ポテンシャルと電子親和力(日本化学会)
電子親和力の測定方法と実験的アプローチについて、分光法を中心とした詳細な解説が掲載されています。

 

 


読み方だけは確実に身につく心電図