亜リン酸液肥効果と吸収性や病害抵抗性の特徴

亜リン酸液肥は通常のリン酸より吸収されやすく、根張り促進や病害抵抗性向上など様々な効果を発揮します。葉面散布や灌注処理で即効性を示し、野菜や果樹の品質向上に役立つこの肥料の特徴や使い方について知りたくありませんか?

亜リン酸液肥効果

亜リン酸液肥がもたらす主な効果
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吸収性と即効性

通常のリン酸より分子が小さく、葉面・根からの吸収が速い。土壌に吸着されにくく、作物への利用効率が高い

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病害抵抗性の向上

ファイトアレキシンの生成を誘導し、疫病・べと病・根腐病などの病害に対する予防効果を発揮する

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品質と収量の改善

根張り促進、花芽充実、着果向上により、野菜・果樹類の収量増加と品質向上に貢献する

亜リン酸液肥の吸収性と即効性

 

亜リン酸は化学式H3PO3で表され、通常のリン酸(H3PO4)よりも酸素原子が一つ少ない構造を持っています。この分子構造の違いにより、亜リン酸は水への溶解性が非常に高く、作物体内での移行性に優れているという特徴があります。通常のリン酸肥料は分子が大きく葉面散布してもなかなか吸収されませんが、亜リン酸は小さな分子のためスムーズに吸収されます。

 

参考)https://www.zennoh.or.jp/eigi/lib/pdf/research/gr504.pdf

土壌への施用においても、亜リン酸は通常のリン酸と大きく異なる挙動を示します。通常のリン酸の培土への吸着率が22%であるのに対し、亜リン酸はわずか6%と非常に低く、それだけより多くの成分が作物に吸収されやすい性質を持っています。また、アルミニウムや鉄などの金属イオンと結合しにくい性質があるため、土壌中で固定されにくく、作物が利用できる形で存在し続けます。

 

参考)ホストップ【亜リン酸カリ液肥】着果・着色・発根促進|IPM資…

吸収された亜リン酸は体内でそのまま利用されるだけでなく、一部は植物体内の活性酸素と結合して通常のリン酸に転化します。この転化プロセスにより植物体内の活性酸素濃度が低下し、リン酸の肥効が即効的かつ確実なものになります。散布後2〜3日で効果が表れるという報告もあり、緊急的な栄養補給が必要な場面でも活用できます。

亜リン酸液肥の病害抵抗性向上効果

亜リン酸液肥の注目すべき特徴の一つが、病害に対する予防効果です。亜リン酸には殺菌効果そのものはありませんが、植物体内で合成されるファイトアレキシンという病害抵抗性物質の生成を誘導する働きがあります。これはワクチンに相当する機能であり、植物自身の免疫力を高めることで病気にかかりにくくする仕組みです。

 

参考)病気を防ぐ亜リン酸肥料の基本と特長、効果について

特に効果が顕著なのは、卵菌目病原菌による疫病、べと病、根腐病などの病害です。これらの病害に対して発病抑制効果が確認されており、全国の試験場や研究機関で多数の報告があります。さらに、炭疽病、萎凋病、青枯病など多種の病原菌に対する抑制効果も報告されています。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/3035cc28929da11992a99ab370b215b322f73045

コマツナやチンゲンサイの白さび病、ミョウガの根茎腐敗病、キウイフルーツの根腐病、ダイズの茎疫病など、幅広い作物と病害の組み合わせで効果が実証されています。このような病害予防効果により、化学農薬の使用量を減らせる可能性もあり、環境に配慮した栽培にも貢献します。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/add80f91125513e41055eb879b7788836bfbbc98

亜リン酸液肥の野菜・果樹への収量品質効果

全国の試験場や普及センターでの栽培試験により、亜リン酸液肥は野菜や果樹類の収量増加と品質向上に効果があることが実証されています。葉面散布では、佐賀県のウンシュウミカンで着花・着果が促進され収量が向上し、長崎県のジャガイモでは春・秋穫りともに1個重が増加しました。北海道の小麦では収量増加と穂発芽抑制の効果が確認されています。

 

参考)https://www.jacom.or.jp/archive03/agribiz/2012/12/agribiz121205-18901.html

培土施用では特にネギ、ニンニク、ラッキョウなどユリ科の作物で高い効果が報告されており、鳥取県のネギでは地上部・地下部ともに生育が向上し、兵庫県の黒大豆では大粒割合が増加しました。トマトやイチゴでは花芽増加による増収効果、花き類では花数増加や品質向上が認められています。

 

参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/20110137.pdf

リン酸とカリウムを同時に補給できるため、果実肥大期や生殖生長期に特に有効です。花芽の充実、着果促進、果実の肥大、糖度向上などの効果が期待でき、低日照時の作物の品質維持にも役立ちます。水稲では育苗箱への施用により、通常のリン酸のみを施用した場合に比べて明らかに根張りが良くなり、一部のJAでは栽培暦に組み込まれています。

 

参考)https://inochio.co.jp/products/fertilizers/30

亜リン酸液肥の育苗期と根張り促進効果

育苗期や定植直後における亜リン酸液肥の効果は特に顕著です。育苗時や植え付け時に使用すると、根張りの向上と健苗育成に役立ちます。果菜類の育苗期には500〜1,000倍の灌注処理や浸漬処理を行うことで、健苗育成と根群充実が図れます。

 

参考)亜リンさんラプソディ|P44-K29-Mn6-B2【5kg】…

リン酸分の多くが亜リン酸の形態になっているため、作物の吸収率が極めて高く、発根、新芽、育成を促し花芽を強化する効果があります。定植直後の活着促進にも効果的で、1000倍の灌水施用により初期生育を増進できます。根の活性とマット強度の向上、根量の増加も確認されており、苗の段階から健全な生育基盤を作ることができます。

 

参考)https://www.shk-net.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/04/phosphorous_Leaflet01.pdf

分けつの増加や株張りの向上効果もあり、特に穀物類や葉菜類では初期生育段階での施用が重要です。育苗箱への施用を栽培暦に取り入れているJAもあることから、実用性の高い技術として定着しつつあります。窒素に対するリン酸と加里の吸収比率を高めるため、窒素過多の軽減効果も発揮します。

 

参考)亜リンサンパワー

亜リン酸液肥の鉱物資源としての価値

亜リン酸液肥を理解する上で、リン鉱石という鉱物資源との関連性は興味深い視点です。通常のリン酸肥料は主にリン鉱石を原料として製造されますが、亜リン酸はその化学的性質が異なるため、土壌中での挙動も大きく変わります。リン鉱石由来の通常リン酸は土壌中のカルシウムやアルミニウム、鉄などの金属イオンと結合して不溶性の化合物を形成しやすく、作物が利用できない形態に変化してしまう問題があります。

 

一方、亜リン酸はこれらの金属イオンとの結合性が低いため、土壌に固定されにくい特性を持っています。この性質により、従来のリン酸肥料では利用効率が低かった土壌条件でも、効果的にリン酸成分を作物に供給できる可能性があります。リン鉱石は有限な鉱物資源であり、将来的な枯渇が懸念されていますが、亜リン酸液肥のような高効率な肥料を使用することで、限られた資源をより有効に活用できます。

 

参考)亜リン酸メルシー5738(P57-K38)【2kg】吸収され…

さらに、亜リン酸は土壌への吸着率が6%と極めて低いため、施用した肥料成分の大部分が作物に吸収されます。これは環境への負荷軽減にもつながり、リン酸の流出による水質汚染のリスクも低減できます。鉱物資源の持続可能な利用という観点からも、亜リン酸液肥は注目に値する技術といえるでしょう。

亜リン酸液肥の使用方法と注意点

亜リン酸液肥は葉面散布と灌注処理の両方で使用できますが、それぞれの方法で適切な希釈倍率と施用タイミングがあります。葉面散布では一般的に1,000〜2,000倍に希釈して使用し、灌注処理では500〜1,000倍の濃度で施用します。製品によって推奨倍率が異なるため、1,000〜3,000倍の範囲で調整することもあります。

 

参考)栗原資材株式会社 有機肥料 農業資材 農業用ハウス建設

作物の生育ステージに応じた施用が効果的です。果菜類では育苗期の根群充実、開花期の着果促進、果実肥大期の成長促進といった各段階で活用できます。穀物類では開花期、乳熟期、糊熟期に葉面散布を行うことで収量と品質の向上が期待できます。豆類では定植から着蕾期にかけて施用すると莢数の増加につながります。

ただし、使用には注意点もあります。正リン酸が少ない条件下で多量の亜リン酸を施用すると、効果が見られなかったり植物に障害が出たりする事例が報告されています。亜リン酸は通常のリン酸を完全に代替できるものではなく、リン酸肥料の一部を置き換える形での使用が推奨されます。水に溶けやすいため、多量に施用した場合には濃度障害を起こすリスクがあることにも注意が必要です。メーカーが推奨する施用量を守ることが重要です。

 

参考)どこが違う? リン酸と亜リン酸のお話

全農の亜リン酸肥料の特徴とその効果に関する詳細情報
農家WEBによる病気を防ぐ亜リン酸肥料の基本と特長の解説
ホーネンアグリによるリン酸と亜リン酸の違いと使用上の注意点

 

 


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