霰石は化学式CaCO3で表される炭酸カルシウムからなる鉱物で、斜方晶系に属しています。この鉱物の最も特徴的な点は、柱状や針状の細長い結晶をつくり、多くは双晶になっていることです。双晶が重なり合うと偽六角形になることがあり、基本的に結晶のほとんどは三つの結晶の双晶で六角形を形成しています。
参考)https://mineral.imagestyle.biz/tansan/arareisi.html
結晶形態は非常に多様で、柱状や鍾乳状、繊維状や放射状のものも見られます。モロッコやスペインでは、360度に結晶が伸びる特殊な「ツリー」状の形態を示す標本も産出し、反復双晶によって美しい柱状の結晶を形成します。透明な針状のアラゴナイト放射状集合体が小さな空洞の中に密集している姿も観察されることがあります。
参考)http://www.jiban-fluorite.com/mineral/argn01.html
霰石のモース硬度は3.5~4と比較的柔らかく、金属などでひっかくと簡単に表面に傷が付く程度です。比重は2.93~2.95の範囲にあり、劈開は一方向に完全で、断口は亜貝殻状を示します。この硬度の低さは、逆に言えば加工しやすいという利点にもなり、古代メソポタミアでは紀元前からアラゴナイトを彫って印章などが作られていた記録があります。
参考)https://parts-kobo.com/md/md-aragonite.htm
透明から半透明の性質を持ち、ガラス光沢から樹脂光沢があります。霰石は冷たい希塩酸に浸すと泡を出して溶け、紫外線を当てると蛍光を発する性質も持っています。極めて強い複屈折を示し、屈折率は1.530~1.686、複屈折は0.156という特徴があります。
参考)自然の芸術——霰石Aragonite - HonWay Ma…
霰石の色は無色、白色、黄色、淡紫、淡青色、灰色、緑色、褐色など非常に多彩です。本質的には無色(白)の結晶ですが、微量成分や不純物によって様々な色に発色します。最も一般的に流通しているのはイエローカラーの霰石で、その他に水色やオレンジ色タイプも存在します。
参考)霰石の意味と効果
色のバリエーションには、白やベージュ、イエロー、ピンク、ブルーなど多彩で、繊細で柔らかな色合いが特徴となっています。透明度の高い宝石品質のものもありますが、多くは柔らかなミルキーカラーです。産地の鉱物組成が異なるため、形成される霰石も微妙に異なり、澄んだ目と特徴的な色を持つものが観賞用として選ばれます。
参考)アラゴナイト
霰石は方解石と同じ化学組成(炭酸カルシウムCaCO3)を持ちながら、結晶構造が異なる同質異像の関係にあります。方解石は六方晶系(三方晶系)に属するのに対し、霰石は斜方晶系に属します。この同質異像現象は、温度や圧力、周りの液体、石ができる速さなどによって結晶の形が変わってくることに起因します。
参考)アラゴナイトってどんな宝石?カルサイトの親戚って本当?
地表温度や圧力条件では方解石の方が安定しているため、霰石は長期間のうちに方解石に置き換わる傾向があります。霰石は地表近く、200度以下の低温環境で生成しやすく、比較的低温の環境下で形成されます。一方、方解石は比較的低い温度でゆっくりと育ち、常温・常圧状態では方解石の方が安定です。
参考)結晶の多様な姿:同質異像の謎 href="https://legal-plaza.net/gemcatalog/the-diverse-world-of-crystals-polymorphism/" target="_blank">https://legal-plaza.net/gemcatalog/the-diverse-world-of-crystals-polymorphism/amp;#8211; リーガルプラザ…
結晶や結晶質塊などでは、方解石のようにはっきりとした劈開が見られないので判別は容易ですが、塊状や繊維状などの場合は判別が難しくなります。方解石は複屈折という光学的性質を持ち、透明な方解石を通して文字を見ると二重に見えますが、霰石は針状の結晶を作るという特徴で区別できます。
霰石は温泉の周辺や石灰岩洞窟中、火山岩の晶洞、鉱床の酸化帯、地表近くの堆積物中に、さまざまな形態で産出されます。主に鉱床や鍾乳洞、温泉地などで産出し、火山岩の割れ目や空隙、熱水脈周辺の粘土化帯、広域変性岩中など、様々な産状を示します。
参考)アラゴナイト/Aragonite 天然石 パワーストーン …
形成過程としては、水に溶けたカルシウムイオンと炭酸イオンが結合し、温度や圧力、化学組成の変化によって結晶化することで生成されます。比較的低温の環境下で形成されやすく、炭酸カルシウムが沈殿する場で広く生成されます。温泉地や鍾乳洞などで小さなあられのような形で形成されたことが、日本名「霰石」の由来となっています。
参考)アラゴナイトの意味・効果や特徴とは href="https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/1778" target="_blank">https://fukuenkaku.com/apps/note/archives/1778amp;#8211; 福縁閣パ…
松代鉱山では、グリーンタフの地層に含まれる石膏鉱床の上層にあたる年度中に、塊状あるいは球状をなして多量に含まれていました。三連透入双晶をなす多数の双晶体が集合し、直径30cmを超える大きなものも産出した点で世界的に稀な産地です。
霰石は世界各地で産出される鉱物です。日本では、北海道、青森県、新潟県、愛知県、三重県、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、鹿児島県などで産出されており、日本産の霰石は特に透明度が高く、質が高いとされています。特に島根県大田市の松代鉱山は、世界でも他に例がない形と大きさの霰石を産出したことで知られ、国の天然記念物に指定されています。
参考)松代鉱山の霰石産地(まつしろこうざんのあられいしさんち)|日…
海外では、スペインのアラゴン地方が最初に報告された場所であり、英名Aragoniteの由来となりました。アメリカでは、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州、オレゴン州などで産出され、さまざまな色や模様があり、バリエーション豊富です。メキシコではユカタン半島などで、白色やクリーム色が一般的ですが、黄色や青色など、さまざまな色のものも産出されます。
中国では雲南省、四川省、広東省などで産出され、リーズナブルな価格で購入できるため人気があります。オーストラリアでは、西オーストラリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州などで産出され、さまざまな色や模様があり、バリエーション豊富です。モロッコは特殊なツリー状の標本を産出することで知られています。
参考)アラゴナイトツリー(モロッコ産)&過去掲載品再販!! : 石…
霰石の主成分である炭酸カルシウムは、セメントや漆喰原料、製鉄所、土壌改良剤などに広く使用されています。霰石を50%以上含んだ堆積岩は石灰岩(ライムストーン)と呼ばれ、これらの産業用途に利用されます。松代鉱山で産出した霰石は、炭酸カルシウムからなる鉱物で、成分的にはセメントの主原料になる石灰岩(方解石)と同じです。
参考)松代鉱山の霰石産地
水族館では、霰石がサンゴ礁の再生や水のpH維持のための水槽底砂として利用されています。また、海水用添加剤の生産にも利用されており、アクアリウム分野での需要があります。歯ブラシの毛や研磨剤、化粧品などの原料として用いられることもあり、その吸収性から食品添加物としても用いられます。
観賞用としては、形の珍しさから鉱物標本として珍重されています。松代鉱山の霰石は、石膏鉱床の近くから産出し、観賞用に珍重されました。現代において、霰石は工芸品やインテリアとしての利用も増加しており、建材の装飾や印鑑などにも使われます。
霰石は生体鉱物(バイオ・ミネラル)として、生物が作り出すこともある珍しい特徴を持っています。貝殻や真珠、サンゴなどの主要な構成鉱物が霰石であり、真珠、貝殻などの海生軟体動物の殻は霰石で出来ています。山の鉱物である霰石と、海の生物である貝殻が同成分であることは興味深い事実です。
参考)https://museum.bunmori.tokushima.jp/bb/chigaku/minerals/36.html
貝殻の中央部の作りは真珠層と名づけられており、霰石と有機物でできています。真珠層はアワビ類などの巻貝や絶滅したアンモナイトなどにもみられます。これらの貝の内部に小石などの異物が入った際、貝殻の内側と同じ層が異物の周りに形成され、球体の真珠が生まれます。
参考)夢ナビ講義
真珠は炭酸カルシウムの結晶である霰石が薄い層状に重なり、その間に有機質の層が挟まれた構造をしています。この構造により真珠特有の光沢が生まれます。生物が作る霰石は、無機的に生成される霰石とは形成過程が異なりますが、化学組成は同一です。
霰石に関連する特殊な産出例として、菊花石があります。菊花石は黒色の母岩に白い菊の花が咲いたような模様が広がる、日本を代表する鑑賞石です。母岩は玄武岩質で、そこに生じた割れ目を方解石や霰石が放射状に充填することで花模様が形成されます。
参考)菊花石とは?岐阜・根尾谷産の産地と値段・偽物の見分け方を徹底…
菊花石の形成理論には「霰石から方解石への転移説」があり、霰石が結晶した後に安定鉱物である方解石へ転移し、その過程で放射状の模様が強調されたとする説があります。この転移は、霰石が地表条件では不安定で、長期間のうちに方解石に変化する性質を反映しています。
参考)https://mineral.imagestyle.biz/tansan/aoiro-houkaiseki.html
松代鉱山の霰石は、三連透入双晶で大きさ平均径2~2.5センチ、概ね6角柱状の美晶をなし、これが群がり集合して塊を作り美観を呈しています。結晶の大きく美事なことは他に例がなく、断面は樹脂光沢をもち、菊の花のような模様に見える美しいもので鉱物学上の価値が高いとされています。
パワーストーンとしての霰石は、心身のバランスを整える効果があるといわれています。霰石の優しく穏やかなエネルギーは、心身のバランスを整え、リラックスさせる効果があり、ストレスによる心身の疲れを取り除き、精神的にハードな状態にあっても集中力を高めるとされています。
別名「なごみ石」とも呼ばれ、心身をリラックスさせ、持ち主の魅力や潜在能力、存在感を高める明るいエネルギーに満ちた石とされています。霰石は明るいエネルギーを持ち、潜在能力や魅力を引き出してくれるといわれており、感情をポジティブにし、「恐怖」「怒り」「不安」などの感情をリセットさせるパワーストーンとしても知られています。
参考)アラゴナイトの意味や相性 激安天然石通販コムローズ
問題を整理整頓し、解決へ導く意味と効果があり、「悩みが多い」と感じる時などに活用されます。また、弱点を克服するためのパワーストーンとして、苦手分野に挑まなければならない時に用いられることもあります。持ち主の魅力を輝かせ、潜在的な魅力を引き出してくれる効果があるとされ、裏方から表舞台へ進出したい時などにも使用されます。
松代鉱山の霰石産地 - 文化遺産オンライン
松代鉱山で産出される世界的に稀な霰石の形態と鉱物学的価値について、国の天然記念物としての詳細情報が記載されています。
霰石 - 鉱物図鑑
霰石の化学式、結晶系、硬度、比重、劈開などの基本的な物理化学的性質と、方解石との同質異像関係について詳しく解説されています。
生物・化石と鉱物:貝殻と真珠 - 徳島県立博物館
霰石が真珠層の構成成分であることや、生物が作り出す鉱物としての霰石の特性について科学的に説明されています。

[N2 stone Natural] 天然鉱物 アラゴナイト (霰石/aragonite) - モロッコ Tazouta産/結晶 | (原石: 3個 [約75g])