不完全燃焼と一酸化炭素の危険性と対策

不完全燃焼により発生する一酸化炭素は、無色無臭で気づきにくい危険な気体です。暖房器具の使用時には、酸素不足による中毒事故を防ぐための換気や警報器設置が不可欠ですが、具体的にどのような対策が有効なのでしょうか?

不完全燃焼と一酸化炭素の関係

不完全燃焼による一酸化炭素発生の仕組み
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完全燃焼との違い

酸素が十分な環境では二酸化炭素が発生するが、酸素不足では一酸化炭素が発生する

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無色無臭の危険性

一酸化炭素は人間の五感では感知できず、気づかないうちに中毒症状に陥る

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発生メカニズム

炭素を含む物質の燃焼時に酸素が不十分だと不完全燃焼が起き、一酸化炭素を生成する

不完全燃焼により発生する一酸化炭素の特徴

一酸化炭素は、炭素を含む物質が不完全燃焼したときに生じる物質です。完全燃焼すると二酸化炭素が生じますが、燃焼時の酸素量が不十分であれば不完全燃焼を起こし、一酸化炭素が発生します。一酸化炭素は無色・無臭で、「サイレントキラー」とも呼ばれる気体であり、その存在を感知しにくい点が最大の危険性です。
参考)法医学と化学の融合、 一酸化炭素(CO)中毒死における脳内C…

 

吸入されると、血液中のヘモグロビンと酸素の200倍以上の結合力で結合し、酸素の運搬を阻害して全身を酸欠状態に陥らせます。少量でも頭痛や吐き気を引き起こし、高濃度では短時間で意識障害や死亡に至ることが報告されています。主な発生源は、火災現場、練炭燃焼などの不完全燃焼で、燃焼器具の経年劣化、酸素不足、換気不足によって発生します。
参考)お知らせ | 明治産業

 

不完全燃焼が起こる原因と条件

不完全燃焼が発生する主な原因には、酸素不足、燃料の供給不足、温度不足、燃料の種類などがあります。酸素不足の状態では、燃料が完全に燃焼せず、未燃の成分が残ることで一酸化炭素が発生します。十分な量の酸素があれば完全燃焼をし、不十分であれば不完全燃焼を起こすため、燃焼時に酸素を十分に補うことが重要です。
参考)一酸化炭素中毒(CO中毒)と不完全燃焼について(トピックス1…

 

ガス消費機器や石油消費機器の給排気口がふさがっていると、本体の熱が内にこもるだけでなく、酸素不足による不完全燃焼につながります。給排気口がふさがる原因として、本体の故障やほこりによる目詰まり、機器の近くに物を置いた結果、給排気口がふさがっているケースもあるため注意が必要です。石油ストーブやガスストーブは室内の空気中の酸素を利用して燃焼するため、十分な換気が行われない場合、一酸化炭素が発生しやすくなります。
参考)一酸化炭素中毒を防止する方法とは?CO濃度の数値や防止対策を…

 

不完全燃焼による一酸化炭素中毒の症状

一酸化炭素中毒の症状は濃度によって異なり、段階的に深刻化します。空気中の一酸化炭素濃度が35ppm以下では無症状または軽い頭痛程度ですが、50ppmでは軽い頭痛、激しく動いたときの呼吸困難が生じます。厚生労働省のガイドラインでは、一酸化炭素濃度を50ppm以下に保つことが推奨されています。
参考)https://www2.nikkakyo.org/system/files/column322.pdf

 

200ppmでは2~3時間で激しい頭痛、興奮、判断力低下、めまい、視覚減退が起こり、400ppmでは1~2時間で前頭痛、吐き気が発症します。さらに高濃度の800ppmでは2時間で失神し、1,600ppmでは2時間で死亡に至ると言われています。中毒症状は、頭痛、めまい、意識障害などで、最初はめまいや手足のしびれ、その後体を動かすことが困難になり、最悪の場合は失神や死亡に至ります。
参考)https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000540928.pdf

 

不完全燃焼を検知する警報器の重要性

一酸化炭素は無色・無臭・無味で気が付きにくい気体であり、その存在を感知できないまま中毒状態に陥って死亡するケースもあるため、一酸化炭素を感知する警報器の設置が早期発見に有効です。一酸化炭素チェッカーを選ぶ際には、センサーの製造国、検知できる数値、使いやすさをチェックすることが重要です。
参考)一酸化炭素チェッカーのおすすめ10選!キャンプには高性能な日…

 

日本製のセンサーを搭載したアイテムは感度が高く、日本の気候に適したものが多くなっています。中毒症状は一酸化炭素濃度が200ppmを超えると出始めると言われていますが、小さい子どもや高齢の方、持病のある方などは100ppmでも症状が出る場合もあるため、最低でも50ppm~100ppmから作動するものか、自分で警告数値を設定できるアイテムを選ぶことがおすすめです。遠目でも確認したい場合は、本体やディスプレイが大きなものを選び、危険度の視認性を上げたい方には、数値によってカラーが点灯するタイプの製品が良いでしょう。
参考)【2025年最新】一酸化炭素チェッカーおすすめ10選!選び方…

 

一酸化炭素発生源となる暖房器具と燃焼機器

一酸化炭素は炭化水素の不完全燃焼の結果発生する無色無臭の気体で、ガス暖房器具、炉、湯沸かし機、木または炭を燃やすストーブ、石油ストーブなど、キャンプだけでなく日常生活において非常に身近なものから発生します。石油ストーブやガスストーブ、ファンヒーターなどいわゆる開放型暖房器具は、室内の空気(酸素)を使って燃焼し、排気ガスを室内に出す仕組みになっています。
参考)【要注意】死にたくなかったら一酸化炭素警報機を買いましょう

 

換気をしないでこれらの暖房器具を使用し続けると、室内空気が汚染されるだけでなく、室内の酸素濃度が低下してくると不完全燃焼が進み、一酸化炭素が急激に増加し、中毒を引き起こします。ガスストーブは室内の空気を使って燃焼し、排気ガスを室内に出す仕組みになっているため、換気をしないで使い続けると、室内の酸素濃度が低下して不完全燃焼が進み、一酸化炭素が発生し、中毒を引き起こします。その他、車や発電機等の排ガス、練炭・木炭の不完全燃焼も主な発生源となります。
参考)【検証】テント内のガスストーブの使い方!一酸化炭素は?換気は…

 

不完全燃焼防止装置の仕組みと機能

現在の燃焼器具には不完全燃焼防止装置が搭載されており、機器の異常を検知して一酸化炭素が発生する前に機器の運転を停止する機能を持っています。「ガス用品の技術上の基準等に関する省令」および「液化石油ガス器具等の技術上の基準等に関する省令」により、現在の燃焼器具には不完全燃焼防止装置が搭載されています。
不完全燃焼防止装置には複数の方式があり、暖房機ではフレームロッド式と熱電対式が用いられています。フレームロッド式は、炎が高温によってイオン化されると電流が流れる性質を利用し、酸素濃度が低下すると炎は浮き気味になり、炎電流が正常燃焼時より低下する現象を利用して不完全燃焼を防止します。給湯器では、機器内にある2カ所のセンサーで温度を測定し、温度差から不完全燃焼を判定してガスをストップし、給湯器を停止させる仕組みになっています。
参考)不完全燃焼防止装置

 

この装置は平成1年に国が義務化し、平成20年4月以降に製造された瞬間湯沸かし器は、3回連続で作動すると点火できなくなる再使用禁止機能(インターロック)が搭載されています。ただし、古い燃焼器具の場合、不完全燃焼防止装置が付属していない可能性があるため、使っている燃焼器具の取扱説明書などを参考に確認する必要があります。
参考)不完全燃焼防止装置とは?安全装置作動時の対処

 

一酸化炭素中毒を防ぐ換気の重要性

一酸化炭素中毒を防ぐためには、こまめな換気が最も重要です。もしも一酸化炭素が発生しても、換気をすれば部屋にたまるのを防ぐことができ、特に最近の住宅は気密性が高くなっているため、必ずこまめに換気をする必要があります。十分な換気により室内の一酸化炭素濃度が下がることから、火気設備・器具を使用の際は換気扇の使用や、定期的に窓を開けるなどして換気を十分に行うことが推奨されています。
参考)住宅で起きる一酸化炭素中毒事故に注意!

 

石油ストーブを使用する際には、1時間に1~2回程度、必ず換気を行うことが重要です。予防方法として、30分~1時間間隔で換気することが推奨されており、暖房器具の使用中に気分が悪くなったりしたら、風邪かなと思うよりも、真っ先に一酸化炭素中毒を疑って、すぐに換気をすることが大切です。「窓を開ける」「換気扇を回す」といった方法で換気すると、外気が流入するため、不完全燃焼が起こりにくくなり一酸化炭素の発生を防げます。
参考)石油ストーブは換気が必須!一酸化炭素中毒を防ぐ正しい使い方 …

 

また、火気設備・器具を使用中に少しでも異常を感じたら使用を中止するとともに、十分な換気を行うことが重要です。室内で使用する際は、定期的に空気を入れかえることが必要であり、換気を徹底することが一酸化炭素中毒の予防対策として最も効果的です。

一酸化炭素中毒が発生した場合の応急処置

一酸化炭素中毒が発生した場合は、すぐに新鮮な空気を吸えるように対処することが最優先です。具体的な処置として、落ち着いて室内を換気し、暖房器具などを止めることが重要です。その後、新鮮な空気のある場所に移動し、身体を保温した上で医療機関を受診する必要があります。
参考)一酸化炭素中毒になったときの応急手当 - 新潟県佐渡市公式ホ…

 

一酸化炭素中毒の症状が現れたときは、タオルやハンカチなどで口と鼻をおおい、すぐに室内の換気を行うことが推奨されています。意識がないなど緊急性がみられる場合は、迷わず119番通報して救急車を呼ぶことが必要です。火事に気付いた人が現場から逃げ出せない原因の一つがCO中毒であり、一酸化炭素を多く吸ってしまい、気づいた時には身体が動かなかった、あるいは建物の外へと逃げる途中で一酸化炭素を吸いすぎて失神してしまったということが起こっていると考えられます。

不完全燃焼の早期発見とメンテナンスの必要性

不完全燃焼が起こると一酸化炭素が発生することから、火気設備・器具の定期的な点検と清掃を行うことが重要です。不完全燃焼の見分け方として、使用中に火が消える(過去に火が消えたことがある)、ススが付着している、前面の塗装部が変色している、不快な臭いがする、炎の色が青くない(黄色い・赤い)、炎があふれる、機器が異常に過熱する、排気ファンが回っていない(強制排気式の場合)などのトラブルがみられる際は、使用を直ちに中止する必要があります。
発動発電機やバーベキュー用こんろなど、屋外での使用が想定されている火気器具等は、屋内では使用しないなど、火気設備・器具の使用方法を守ることも重要です。古い給湯器や瞬間湯沸かし器は、不完全燃焼防止装置が付いていない場合や、再点火出来てしまう場合があるため、安全装置がついた現行の給湯器への交換を検討することが推奨されています。
不完全燃焼防止装置など、安全装置が作動したということは給湯器に何らかの異常がみられるため、使用はただちに中止して、給湯器メーカーへすぐに連絡し、点検を依頼することが必要です。10年以上使用している古い給湯器で、安全装置が作動するような故障が起きている場合は寿命が原因と考えられ、新しい安全な機器への交換が必要です。

密閉空間での一酸化炭素発生リスクと対策

密閉された室内での石油ストーブやガス給湯器、木炭・練炭などの不完全燃焼や車内への排気ガスの逆流などで一酸化炭素中毒が発生します。キャンプでテント内においてストーブを使用する場合、換気をしないで使い続けると、室内の酸素濃度が低下して不完全燃焼が進み、一酸化炭素が発生し、中毒を引き起こすため特に注意が必要です。
参考)テントで石油ストーブを使う際「一酸化炭素チェッカー」はマスト…

 

気密性の高い現代の住宅では、換気を怠ると室内の酸素濃度が低下しやすく、不完全燃焼が起こりやすい環境となります。そのため、密閉空間で燃焼器具を使用する場合は、必ず定期的な換気を行い、一酸化炭素チェッカーを設置することが推奨されます。小型湯沸かし器を屋外へ移設することや、CO警報器を設置することも予防対策として有効です。
また、排気筒(煙突)式風呂釜を使用中の場合は、入浴時に台所の換気扇を使用すると排気が逆流するため、換気扇を回してはいけないという注意点もあります。密閉空間での燃焼器具の使用は、一酸化炭素中毒のリスクが非常に高いため、換気の徹底と警報器の設置を組み合わせた総合的な対策が不可欠です。
<参考リンク>
一酸化炭素中毒(CO中毒)と不完全燃焼について - 不完全燃焼のメカニズムと予防方法についての詳細解説
住宅で起きる一酸化炭素中毒事故に注意!- 東京消防庁による事故防止のポイント
一酸化炭素中毒を防止する方法とは?- CO濃度の数値と防止対策の具体的な方法