ロイヤルウースター ペインテッドフルーツは、1770年頃に誕生して以来、200年以上もの長い歴史を持つロイヤルウースター最高峰の美術工芸作品です。このシリーズの最大の特徴は、熟練職人による緻密な手作業にあります。絵付師は透明感のある色彩を使い、最初の層を塗った後に焼成を行い、その工程を6回繰り返すことで果物に驚くべき立体感と深みを与えています。透明な色彩を重ねることで、下層の明るい色が透けて見え、まるで絵画のような奥行きのある表現が可能になるのです。
参考)ロイヤルウースター royal worcester食器(サイ…
制作を許されるのは、少なくとも7年以上の厳しい修業を積んだ熟練の絵付師のみという事実からも、その技術の高さがうかがえます。当時中国風のデザインが主流だった18世紀後半、造形師や絵付師たちがヨーロッパらしさを模索しながら生み出したこのシリーズは、ロイヤルウースターの英知の結晶とも呼ばれています。現在でも手作業で制作が続けられており、一つひとつが芸術品としての価値を持つ特別な存在です。
参考)https://wabbey.net/blogs/blog/royalworcester
ペインテッドフルーツの美しさを完成させる重要な要素が、22カラットゴールドによる贅沢な装飾です。絵付けと焼成を6回繰り返した後、特殊技法により22金を惜しみなく施し、さらに11時間もの時間をかけて丁寧に研磨と磨き上げを行います。この工程により、金彩は単なる装飾ではなく、深みのある輝きと高級感を作品全体に与える重要な役割を果たしています。
参考)ロイヤルウースター - Wikipedia
22金で彩られた手描きのフルーツは、カップの外側だけでなく内側にも描かれており、どの角度から見ても浮き上がるように見える立体的な美しさが特徴です。金彩師による洗練された技法と、絵付師による繊細な筆使いが組み合わさることで、テーブルウェアの域を超えた美の真髄ともいえる逸品が誕生するのです。見える部分には絵付師のサインが入っており、まさに芸術作品としての価値を持つティーセットとなっています。
参考)ロイヤルウースター ROYAL WORCESTER ペインテ…
ペインテッドフルーツの歴史は、1880年にウースター芸術家のオクター・H・コプソン(Octar H. Copson)が、地元農家からの依頼でパーショアプラムの導入を祝う大皿を制作したことに始まるとされています。この作品が、後にウースターが世界的に有名となる「ペインテッド・フルーツスタイル」の最初の例と言われており、200年以上の歴史を持つシリーズの起源となりました。
参考)Royal Worcester Fruit Painted …
ロイヤルウースターには、代々ウースターに貢献したスティントン家という有名な絵付師一族が存在します。特にジョン・スティントンJr.(1854年~1956年)は、ウースター歴代の絵付師の中でもトップ10に入る名ペインターとして知られ、その息子ハリー・スティントンは20世紀磁器最大の風景絵付け師として名高い存在です。スティントン一族はグレンジャー社から始まり、1905年にロイヤルウースターの一部となった後も、約160年近くもの間、様々な工房で絵付けを行い続けました。彼らの作品は高い価値があり、今後も長くウースター陶磁器の収集家によって愛され続けることでしょう。
参考)https://www.g-kotetsu.com/html/tea-stroll017.html
ペインテッドフルーツは、ロイヤルウースターの中でも特に高級なシリーズとして位置づけられており、その買取価格も他のシリーズと比較して非常に高額です。カップ&ソーサー1客でも2万円前後の買取価格が期待でき、まるで絵画のように生き生きと描かれたフルーツの絵付けは、6回もの焼成と22金メッキの工程を経て仕上げられるため、熟練の職人だけが手がけられる特別なシリーズとなっています。
参考)301 Moved Permanently
販売価格の目安は15万円から70万円程度で、状態や種類によって価格は大きく変動します。特に注目すべきは、2021年にロイヤルウースター開窯250周年記念として制作された50点限定の飾り皿で、直径40.5cmの大皿が輸入元希望小売価格132万円(税込)のところ、79万2000円(税込)で販売されていた記録があります。この作品は裏面にシリアルナンバー、表面には作者のサインが書き込まれており、限定制作品としての希少価値も相まって非常に高額な価格設定となっています。Yahoo!オークションの落札相場では、過去180日間で最安9,551円、平均90,087円、最高1,431,100円という記録があり、状態や種類によって価格に大きな開きがあることがわかります。2009年にロイヤルウースターが倒産してからは製造されなくなったため、今後さらに希少価値が高まることが予想されます。
参考)Yahoo!オークション -「ロイヤルウースター ペインテッ…
ペインテッドフルーツは、日常使いというよりも芸術作品として鑑賞する楽しみ方がおすすめです。キャビネットカップ&ソーサーとして飾り棚に展示したり、飾り皿として壁面に飾ることで、その美しさを存分に堪能できます。カップの内側にも外側と同様に美しい果物が描かれているため、どの角度から見ても楽しめるのが魅力です。特別な日のティータイムに使用すれば、まるで美術館で芸術作品を鑑賞しているような贅沢な時間を過ごすことができるでしょう。
参考)https://www.g-kotetsu.com/catalog/ceramic/c-0897.html
お手入れの際は、細心の注意が必要です。食器洗浄機の使用は避け、必ず柔らかいスポンジか布で優しく手洗いしてください。強い力で洗うと金彩や絵付けに傷が付いてしまうため、力加減には十分注意が必要です。洗浄後は柔らかい布で水分を完全に拭き取り、直射日光の当たらない場所で保管することをおすすめします。また、22金の輝きを保つためには、研磨剤入りの洗剤の使用は避け、中性洗剤を使用することが重要です。アンティーク品として購入した場合でも、適切なお手入れを行うことで美しい状態を長く保つことができ、資産価値も維持されます。カップとソーサーそれぞれに異なる絵付師のサインが入っている場合もあり、そうした発見もコレクターにとっての楽しみの一つとなっています。
参考)ロイヤルウースター買取なら【日晃堂】
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