バロック様式は17世紀から18世紀初頭にかけて、カトリック教会の反宗教改革の影響下で誕生しました。王権の威光を示すために豪壮で劇的な表現が特徴で、ルイ14世様式とも呼ばれています。一方、ロココ様式は18世紀中期にルイ15世のフランス宮廷から始まり、バロックの重厚さに飽きた貴族たちが求めた軽やかで優美な様式です。
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ロココという名前は、フランス語で岩を意味する「ロカイユ(rocaille)」に由来しています。バロック時代の庭園洞窟に特徴的な貝殻で装飾された岩組を指し、そこから転じて1730年代に流行した貝殻の曲線を多用したインテリア装飾をロカイユ装飾と呼ぶようになりました。
参考)ロココ - Wikipedia
両者の境界は必ずしも明確ではなく、ロココはバロックの一種と考える人もいます。実際、同じ建築物や美術作品が、バロック様式の例としてあげられたり、ロココ様式の例としてあげられたりすることもあります。
参考)アンティークでよく聞くバロック様式とロココ様式の違いは?
バロック様式の建築は、彫刻や絵画、家具などの諸芸術が一体となった総合芸術となっていることが最大の特徴です。彫刻や調度品が建築の一部を形成するため、装飾に対する強い嗜好性が見られます。
バロック建築の代表的な特徴は以下の通りです:
✨ 装飾の特徴
🎨 色彩とデザイン
マイセンなどの陶器においても、バロック様式の影響を見ることができます。18世紀に作られた大型の水差しや卓上装飾には、豪華で華麗な装飾が施されています。24カラットの金彩による精緻なレリーフと湾曲したアカンサスの枝は、バロック時代の紛れもない表現です。
参考)「マイセン」ドイツ最高級食器ブランドの歴史と魅力
ロココ様式の建築は、曲線を多用する繊細な装飾である「ロカイユ装飾」が天井周りに多く使われ、壁と天井の境界が明確でなくなるのが最大の特徴です。ロカイユ装飾は貝殻、植物の葉のような自由な曲線を抽象彫刻で複雑・優美に配したものです。
参考)ロココ建築 - Wikipedia
ロココ建築の代表的な特徴は以下の通りです:
💫 装飾の特徴
🌸 色彩とデザイン
大規模・重厚なバロック様式よりは、小規模なサロンを好む繊細な趣味が基調にあります。バロック時代の儀礼的な趣味から離れて、より実用性が求められるようになり、邸宅の部屋も大部屋から小部屋に分割され、より個人的で私的な快適性や、より自由な芸術性を楽しむようになりました。
参考リンク:アンティークでよく聞くバロック様式とロココ様式の違い - ロイヤルソファズ
マイセンは1710年に設立されたドイツの名窯で、バロック様式が全盛期だった時代に誕生しました。マイセンの初期の作品にはバロック様式の特徴である豪華で華麗な装飾が多く見られます。
参考)楽天市場
18世紀前半からルイ15世時代(1715-1774年)にかけてフランスで栄えたロココ様式は、マイセンにおいても18世紀半ばから後半にかけて大変な流行を見せました。ドイツ人が憧れたフランス宮廷の雅がマイセンにも持ちこまれ、ミシェル・ヴィクトール・アシエなど、フランスから招かれた芸術家も活躍しました。
参考)ドイツの名窯マイセン 日本公式サイト
陶器におけるバロック様式とロココ様式の違いは、以下のような特徴で見分けることができます:
参考)楽天市場
要素 | バロック様式 | ロココ様式 |
---|---|---|
装飾モチーフ | 天使、豪華な金彩、力強い彫刻 | 貝殻、植物の葉、花、リボン、ドルフィン |
色彩 | 金色中心、重厚な色調 | パステルカラー、淡い色合い |
デザイン | 大規模で華麗、対称的 | 繊細で優美、非対称的 |
表現方法 | 劇的で誇張された陰影 | 柔らかで均一な光と影 |
ロココ様式の食器は、貝殻や植物などのモチーフを用いたロカイユ装飾、アカンサスの葉、ドルフィン、リボンなどのデザイン、花や植物のモチーフ、パステルカラーのような淡い色合いが特徴です。
参考リンク:マイセン公式サイト - ロココ様式の歴史と特徴
バロック様式の家具は豪壮で重厚、男性的な印象が特徴です。一方、ロココ様式の家具や椅子は、それまで人気だった豪華なバロック様式に比べて華奢で小ぶりで、それでいて装飾性が高く、華やかで女性らしい雰囲気が特徴的です。
参考)ロココ様式とは?フランス生まれの曲線美の魅力とコーディネート…
ロココ様式の代表的な家具には以下のようなものがあります:
🪑 プチポワンチェア
🛋️ セティ(長椅子)
🗄️ コモード(チェスト)
家具においても、バロック様式とロココ様式の違いは明確です。バロック様式が左右完全対称の設計を好むのに対し、ロココ様式は特に左右対称にはこだわらず、格式よりも実用性や親密性をより重視しました。
バロック様式とロココ様式を見分けるためには、装飾に注目することが重要です。両者の対照的な違いを理解することで、陶器や建築、家具を見る際に様式を判別できるようになります。
装飾モチーフによる見分け方
バロック様式では天使や豊穣を象徴する装飾、伝統的な装飾の編集が多く見られます。一方、ロココ様式では貝殻(シェル)が重要なモチーフとなっています。貝は一般的に富や繁栄、幸運、調和などの象徴的な意味を持ち、これらはロココ様式の美学と調和し、豊かな生活や幸せを表現するために使用されました。
参考)ロココ調とは?時代の流れを追って解説
技法による見分け方
ロココ様式の家具には寄木細工(パーケット、marquetry)が広く使用されました。木材の薄い板を異なる色や木目の材料で組み合わせて模様やデザインを作り出す技法で、通常は対称的で幾何学的な模様を特徴とし、曲線的なデザインに合わせて配置されています。
色彩感覚による見分け方
黄金の輝きに負けじと華美な色が好まれたルイ14世(バロック)の時代に比べ、ロココ時代の色づかいはやわらかなパステルカラーが中心となりました。白や淡い水色、ピンクなどの明るく明快な色彩が多くなるのもロココ様式の特徴です。
参考)ロココ調の特徴と時代背景 ー 5分でわかるデザイン様式
神秘的で重圧感を持つバロックスタイルに対して、ロココはパステル色や白、金色の装飾で埋め尽くされています。この違いは陶器や建築、インテリアすべてに共通する重要な見分けポイントです。
参考)ロココ