マイセン食器の歴史と魅力・高価な理由から人気デザインまで

300年の伝統を誇るドイツのマイセン食器について、その歴史的背景から高価な理由、人気デザインまで詳しく解説。アンティーク食器の王者とも呼ばれるマイセンの魅力を知りたくありませんか?

マイセン食器の基本知識

マイセン食器の特徴
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ヨーロッパ初の硬質磁器

1710年創業、300年以上の歴史を持つドイツの名窯

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青い双剣マーク

品質保証の証として手描きで一つずつ刻印

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23万種類を超える作品

テーブルウェアからフィギュアまで幅広い製品群

マイセン食器の歴史と創業の背景

マイセン食器の歴史は、18世紀初頭のヨーロッパにおける「白い金」への憧憬から始まります。当時のヨーロッパでは、東洋から海を渡ってくる中国や日本の白磁が「白い金」と称されるほど珍重されていました。

 

ドイツのザクセン公国を統治していたアウグスト強王もまた、この白磁の魅力に取り憑かれた人物の一人でした。国の財政立て直しを図る強王は、自国での白磁製造を強く望み、そこに現れたのが錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーでした。

 

興味深いことに、ベトガーは当初金を作り出せると豪語していましたが、実際には白磁の製造研究のために城に幽閉されることになります。この強制的な研究環境が、結果的にヨーロッパ初の硬質磁器誕生につながったのです。

 

1709年、ベトガーはカオリンという鉱物の重要性を発見し、ついにヨーロッパ初の白磁器を完成させました。さらに1717年には染付磁器の焼成にも成功し、ここからマイセンの染付技術の歴史が始まりました。

 

しかし、ベトガーは製法の秘密を守るため再び城に幽閉され、自由のないストレスから酒に溺れ、1719年に37歳の若さでこの世を去ってしまいます。一人の錬金術師の犠牲の上に築かれたマイセンの基礎は、現在まで300年以上続く名窯の礎となったのです。

 

マイセン食器が高価な理由と品質の秘密

マイセン食器が他の陶磁器と比べて高価である理由は、その製造工程と品質へのこだわりにあります。

 

まず、マイセンの製品はすべて熟練した職人による手作業で製作されています。機械による大量生産ではなく、長年の経験を積んだ職人たちが一つ一つ丁寧に作り上げているため、時間と労力がかかります。この手作業により、同じデザインでも一つとして同じものがない個性が生まれ、大量生産品にはない魅力が生まれます。

 

次に、マイセンでは最高級の原材料のみを使用しています。質の高い粘土やガラス質の釉薬など、厳選された材料は一般的な陶磁器に使われるものよりもはるかに高価です。しかし、原材料の質は完成品の品質に直結するため、妥協することなく最上の材料を選び続けています。

 

さらに、マイセンの絵付け技術は非常に高度で、特に「下絵付」という修正の効かない技法を用いています。この技法では一度筆を入れたら修正ができないため、絵付け師には完璧な技術が求められます。

 

双剣マークも品質保証の重要な要素です。このマークは「シュベルトラー」と呼ばれる専門の絵付け師によって一つ一つ手描きで施されており、マイセンの証として機能しています。1875年以降は商標登録され、法的にも保護されているこのマークは、真のマイセン製品であることを保証します。

 

マイセン食器の人気デザインシリーズ

マイセン食器には数多くのデザインシリーズがありますが、中でも特に人気が高いのは以下のシリーズです。

 

ブルーオニオン
マイセンといえばこのシリーズと言われるほど有名な「ブルーオニオン」は、1739年に絵付け師クレッチマーによって完成されました。興味深いことに、この名前には面白い由来があります。当初は中国の染付技法を忠実に再現していましたが、ヨーロッパには馴染みのない石榴(ざくろ)の実を玉ねぎと勘違いしたことから「ブルーオニオン」と呼ばれるようになったのです。

 

実際には石榴や桃などの果物が描かれており、これらは中国では「豊穣」や「長寿」といった縁起の良い意味を持っています。そのため、お祝いの贈り物としてよく選ばれています。

 

波の戯れ
真っ白で滑らかな表面に波打つようなレリーフがデザインされた「波の戯れ」シリーズは、シンプルながら上品な美しさを持っています。色を使わずに形の美しさで勝負する「用の美」に徹したデザインで、どんな料理も引き立てます。普段使いから来客用まで幅広く使える実用性も人気の理由です。

 

剣マーク
マイセンの証である双剣マークを底ではなく表面に堂々とデザインしたシリーズです。実用的なシンプルデザインながら、コバルトブルーで描かれた双剣マークが一目でマイセンとわかる気品を放っています。贈り物や来客用として特に人気があります。

 

マイセン食器の双剣マークの意味と歴史

マイセン食器の裏底に刻印されている「双剣」マークには、深い歴史と意味が込められています。

 

このマークは1722年に採用され、以来約300年間にわたって受け継がれてきました。採用前はアウグスト強王の名前のイニシャル「A・R」が描かれたり、何も印がなかったりと品質保証の面で問題がありました。

 

双剣マークの導入は、ベトガーの後継者であるシュタインブリュックの提言によるものです。アウグスト1世、2世の紋章をモチーフとしたこのマークは、製法の秘密が外部に漏れないようにするという意味も込められています。

 

興味深いのは、このマークが時代とともに形を変えてきたことです。時代によって工場監督によって変化していた双剣マークは、現在では美しい形に統一され、マイセンの顔として世界中に知られています。

 

マークは「シュベルトラー」と呼ばれる専門の絵付け師によって手書きで施されます。男性なら「シュヴェルトラー」、女性なら「シュヴェルトリン」と呼ばれるこの職人たちが、一つ一つ丁寧にコバルトブルーでマークを描いています。

 

1875年以降は双剣マークが国内外で商標登録され、法的にも保護されているため、偽造品との判別にも重要な役割を果たしています。手書きで製品一つ一つに施されているため、まったく同じマークは存在せず、それぞれが唯一無二の貴重な印となっています。

 

マイセン食器の正しいお手入れと長期保管のコツ

高価なマイセン食器を長く美しく保つためには、適切なお手入れと保管方法が重要です。

 

日常のお手入れ
マイセン食器は基本的に食洗機の使用は避けた方が安全です。特に金彩が施されている製品は、食洗機の高温と強い洗剤によって装飾が劣化する可能性があります。手洗いの際は、中性洗剤を薄めた温水で優しく洗い、柔らかいスポンジを使用してください。

 

洗った後は、柔らかいタオルで水分をしっかりと拭き取ることが大切です。自然乾燥では水滴の跡が残る可能性があるため、すぐに乾いた布で拭き上げましょう。

 

保管時の注意点

  • 食器同士が直接触れないよう、間に布やティッシュペーパーを挟む
  • 直射日光の当たらない場所で保管する
  • 湿度の変化が少ない場所を選ぶ
  • 重ね置きする場合は、最大3枚程度に留める
  • カップは逆さまに置かず、正立させて保管する

長期保管のポイント
長期間使用しない場合は、専用の保管箱や布に包んで保管することをお勧めします。また、年に1度は取り出して状態を確認し、必要に応じて軽く拭き取りを行うことで、美しい状態を維持できます。

 

金彩部分は特に注意が必要で、研磨剤入りの洗剤や硬いスポンジは絶対に使用しないでください。また、電子レンジでの使用も金彩部分が変色する原因となるため避けましょう。

 

適切なお手入れを続けることで、マイセン食器は何世代にもわたって受け継がれる家宝となります。その美しさと品質を保つために、日々の丁寧なケアを心がけることが大切です。