グスタフスベリなぜ高い?スウェーデン陶磁器価格理由

なぜグスタフスベリの食器は1万円近くもするのか?200年の歴史を持つスウェーデン陶磁器ブランドの高価格には深い理由があることをご存知でしょうか?

グスタフスベリが高い理由

グスタフスベリが高い5つの主要理由
🏭
スウェーデン自国製造

他社が海外移転する中、創業の地で200年間製造継続

👨‍🎨
熟練職人の手作り技術

機械では困難なボーンチャイナを職人が一つずつ手作り

💎
最高品質の原材料

美しい乳白色ボーンチャイナと透明な釉薬を使用

グスタフスベリの高品質ボーンチャイナ製造技術

グスタフスベリの最大の特徴は、美しい乳白色のボーンチャイナ(粘土に骨灰を含んだ磁器)を使用していることです。他のメーカーでは暗い色の粘土を使用することもありますが、グスタフスベリのボーンチャイナは特に美しい乳白色で、完全に透明な釉薬により粘土本来の美しさが際立ちます。

 

このボーンチャイナは取り扱いが非常に困難で、機械による大量生産ができません。そのため、一つ一つを熟練の職人が手作業で製造する必要があります。この製造工程により、白くて輝きがあり、なおかつ耐久性のある仕上がりとなります。

 

さらに、グスタフスベリの釉薬は「ステンレスのスチールくらい硬い」と工場スタッフが説明するほど頑丈で、器に傷がつきにくく耐久性が極めて高いのが特徴です。

 

製造工程では以下の手順を踏みます。

  • 型に泥漿を流し込み乾燥
  • 模様を施す作業
  • 釉薬をかける
  • 1100℃で24時間焼成

この丁寧な製造工程により、大量生産品とは一線を画す品質を実現していますが、それが高価格の大きな要因となっています。

 

グスタフスベリのスウェーデン工場維持コスト

グスタフスベリが高価な最も大きな理由は、スウェーデンの物価の高さです。多くの陶磁器ブランドがコスト削減のためアジアなどに工場を移転する中、グスタフスベリは1825年の創業以来約200年間、ストックホルム郊外の創業の地で製造を続けています。

 

スウェーデンの高コスト要因。

  • 物価が非常に高い国
  • 人件費や資材代が高額
  • 陶器を焼くための燃料費も高い
  • 消費税が25%と高税率

具体的には、グスタフスベリのマグカップ1個が約9,000円します。これがスウェーデンで購入すると消費税25%が加算され、さらに日本への輸送費も加わるため、最終的な価格は1万円を超えることも珍しくありません。

 

工場のオスカルさんは「他のブランドがアジアなどに工場を持ち、ローコストで利益を上げる一方、グスタフスベリは1825年以来、約200年間、ここで作り続けています。私たちはコストがかかっても自分たちの手で良質なものを作りたい」と語っています。

 

この姿勢が品質維持につながる一方で、製品価格を押し上げる大きな要因となっているのです。

 

グスタフスベリの伝統と歴史価値

グスタフスベリは1825年に創業し、200年近くの歴史を持つスウェーデンを代表する陶磁器ブランドです。この長い歴史の中で培われた技術や知識、ブランドの信頼性が製品の価値を高めています。

 

歴史の中で特に注目すべきは、20世紀中頃のミッドセンチュリー時代に築いた黄金期です。この時期には、ウィルヘルム・コーゲ、スティグ・リンドベリ、リサ・ラーソンなど素晴らしいデザイナーたちにより、個性豊かでミッドセンチュリーの象徴的なテーブルウェアが数多く生み出されました。

 

特にスティグ・リンドベリ(1916-1982)は、1937年にグスタフスベリに入社後、並外れたエネルギーと独創性で数々の名作を生み出し、美術工芸品の愛好家の間では1942年には既に名の知れた存在となっていました。21世紀の現在も多くのコレクターの注目の的となっています。

 

ブランド名の由来も興味深く、創業者「グスタフ」さんが工場を作った場所の名前から「グスタフスベリ」と呼ばれています。「ベリ」とはスウェーデン語で「丘」という意味で、つまり「グスタフさんの丘」という意味です。この丘では、ろくろを回して作る陶器の材料にぴったりな土が取れることに由来しています。

 

しかし、1980年代には経済不況の影響を受け、芸術性が売りのグスタフスベリの高価格な食器は、安くて実用的な「外国に工場のある」製品に圧倒されていきました。興味深いことに、これは価格競争力のある外国企業に敗れたのではなく、IKEAに代表される北欧のシンプルな美を低価格に提供する自国企業によって駆逐された側面があります。

 

グスタフスベリの職人技術と手作り製法

現代でも当時の設備を活用しながら、ひとつひとつ手作りに近い製法で作られているため、大量生産されるものとは異なり、ひとつひとつ表情の違う温かみのある製品に仕上がっています。

 

職人技術の具体的な特徴。

  • 熟練職人による一つ一つの手作業
  • 機械では製造困難なボーンチャイナの成形
  • 精密な模様付け作業
  • 厳格な品質チェック体制

工場では午前10時頃と15時のフィーカ(コーヒーブレイク)が欠かせないという、まさにスウェーデンらしい働き方も維持されています。この働き方は職人のモチベーション維持と品質向上に寄与していますが、同時に生産効率の観点からはコスト増加要因ともなっています。

 

また、グスタフスベリでは厳選した材料を使用し、熟練の職人たちの手によって作られているため、製品一つ一つに職人の技術と情熱が込められています。この手作り製法により、同じデザインでも微妙に異なる表情を持つ製品が生まれ、それがコレクターにとっての魅力となっています。

 

製造技術の高さは釉薬の硬度にも表れており、完成品はステンレススチール並みの硬度を持つため、日常使いでも傷がつきにくく、長期間美しさを保つことができます。

 

グスタフスベリの希少性とコレクター価値

グスタフスベリの高価格には、希少性とコレクター価値も大きく影響しています。特に、リサ・ラーソンやスティグ・リンドベリなどの著名デザイナーとのコラボレーション作品は、アート作品としての価値も持っています。

 

希少性を高める要因。

  • 限定生産による数量制限
  • 著名デザイナーとのコラボ作品
  • ヴィンテージ品の市場価値上昇
  • 手作り製法による生産数の限界

例えば、リサ・ラーソンが手がけた猫のフィギュア「シックステン」は、黒い線と白いスペースの比率が美しいとされる黄金比の6対10であることが制作理由の一つとされています。このような芸術的な背景を持つ作品は、単なる食器を超えた価値を持ちます。

 

また、グスタフスベリは1990年代にKFという会社に身売りした歴史もありますが、現在でも品質とブランド価値を維持し続けています。この企業の浮沈を経験しながらも品質を保ち続けた歴史が、コレクターの間での信頼と価値を高めています。

 

コレクターズアイテムとしての特徴。

  • 製造年代による価値の違い
  • デザイナー別の人気度
  • 製造中止品のプレミアム価格
  • 状態による価値の大幅な変動

現在、世界中の陶磁器愛好家やコレクターが「そういった良質なものにこそお金を払いたい」という価値観を持っており、グスタフスベリの高価格を支える市場が形成されています。この市場では、品質と歴史に裏打ちされた本物の価値が評価され、単純な価格競争とは異なる価値基準で取引されているのです。